39

「本当に? 一度部屋の中に入ってもいい?」樹が言う。(ドアにはちゃんと鍵がかかっている。霰は部屋のドアには必ず鍵をかけていた)

「本当に大丈夫だから。もういっていって」と霰は言う。

「うーん。わかったよ。じゃあ、いくからね」と言って樹は(少し部屋の前で奈緒と二人でなにかの会話をしてから)部屋の前から奈緒と一緒にいなくなったようだった。

 霰はもう一度鏡を見る。それから自分の動物の猫の耳をぺたぺたと触ってから、(ひっぱたりしてそれがアクセサリーではなくて、自分の頭の上から生えていることを確認して)ずっとそんな霰を見ていた飾を見る。

「飾。これって、どういうこと?」と目を丸くして霰は言った。

 そんな霰に「霰。自分のおしりもみてみて」と飾は言う。

 言われた通りに霰は自分のおしりをみてそこにある猫のしっぽを見つけた。霰は思わずまた大声を出してしまうそうになったが、(口を手でおさえて)ちゃんと我慢する。

 それから霰は鏡で自分のおしりから生えている猫のしっぽを見る。(ひっぱたりして、それがやっぱり自分のおしりから生えていることを確認する)

 それから霰は飾を見た。

「霰。とりあえず落ち着いて。ベットの上に座って」と飾は言った。

「わかった」とうんうんとうなずきながら霰はベットの上にちょっこんと座った。飾はその隣に座ると、霰をみる。

「霰。落ち着いて聞いてね」霰はうんうんとうなずく。

「今の、この不思議な現象についてなんだけど、……実はぼくにもなにがどうなっているのか、さっぱりわからない」と飾は言った。

「わからないってどういうことよ」と霰は言う。「言葉通りだよ。なんで霰の頭とおしりに猫の耳としっぽがはえたのか、その理由がまったくわからない。だから、どうしようもない」と霰のしっぽをさわさわとなでながら飾は言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る