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「僕もさ妹の霰と一緒にいるときが一番幸せなんだ。だから奈緒の言っていることはよくわかるよ」と奈緒を見ながら樹は言った。
その樹の言葉を聞いて奈緒は、……ああ、そういうこと。と思って、がっかりした。(半面、ドアの向こう側で霰はうれしくなってこぶしをにぎった)
奈緒はつまんなくなって元の場所に(つまんない顔をして自然と)戻った。そのときドアのところでがたっという音がした。(それは霰が思わずこぶしをにぎったときに体がドアにあたってしまった音だった)
「? 誰かいるの? 霰?」とドアを見ながら樹は言った。
その樹の言葉をきいて、奈緒もドアのほうをみる。
するとぎーという小さな音がしてドアが開くとそこから霰がちょこんと顔をだして「こんにちは。はじめまして。……木立霰です」と恥ずかしそうにしながら奈緒にそう初対面の自己紹介をした。
奈緒は初めて噂の樹の妹、木立霰をみて、おどろいた。樹がかわいい、かわいいといっていたけど、霰は本当にかわいかった。(すくなくとも奈緒が今まで出会った小学生の女の子の中では一番、かわいかった。なんだか小さいころに読んだおとぎ話にでてくる日本の中世のお姫様のようだと思った)
霰は自己紹介のあとずっと恥ずかしそうにしていて、顔だけをだしたままで、ずっとそこにいて部屋の中にはいってはこなかった。(目線も奈緒をちらっと見たあとはずっと下を向いていた)
「えっと、初めまして。私は八坂奈緒っていいます。樹くんとは中学校の同級生です。妹さんのことは聞いていたのでしってました。これからよろしくね、霰ちゃん」と(樹のお母さんにご挨拶をしたときのように、できる限りの作り笑いで)にっこりと笑って奈緒は言った。(初対面の印象は大切なのだ)
奈緒がそういうと霰はまたちらっとだけ奈緒を見て、目と目があうと視線を下に向けてしまった。そんな霰を見てなんだか猫みたいでかわいいな、と奈緒は思った。
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