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樹は妹が最近ずいぶんと変わったと思った。いや、正確にいうと今はまだそんなに変わったわけではないのだけど、なんていうか、変わり始めたいるのがわかった。(しかもその変化は一度訪れるときっともの凄い速さで妹を変えてしまうはずだと思った。今の妹がいなくなって、新しい妹になってしまうくらいに。変化してしまうと思った。そのことが樹は嬉しくもあり、悲しくもあった)
そのきっかけはなんだろうと思う。自分のときはそんな急激な変化は訪れなかったと思う。肉体は成長したけどもの凄く変化をしたわけではなかった。樹はやっぱり今も昔もずっと樹のままだった。
いったいなにが妹を変えたのだろう? そのきっかけになったこと(あるいは人だろうか?)はなんなんだろうと思った。
樹には心当たりが一つだけあった。数日前に妹が図書館で宿題をするというので手伝ったことがあった。その日、妹は突然図書館から駆け出してどこかに行ったかと思うと、近くにある古い神社の社の床のところで一人ですやすやと気持ちよさそうに眠っていたのだ。樹はまったく心配かけてしょうがないな。と思った。妹がこんなふうに変な行動をとることは昔からちょくちょくあったから、あんまり気にしなかったのだけど、今思うとあの日の妹はいつもの妹とちょっとだけなにかが違っていたような気がした。うまく言葉にはできないけれどそう思った。(それに妹はあの日眠りながら泣いていたのだ)あの神社になにか秘密があるのだろうか? それとも妹は誰かとあの神社で待ち合わせをしていて、あの日誰かと会っていたのだろうか? それが誰なのかはわからないけれど、その人はきっと妹にとってとても大切な人なのだろうと思った。
「あのさ、樹。そんなの絶対に恋してるにきまってるじゃん。妹さんは小学校の教室の誰かに恋しているんだよ。それで変わったの。そうに決まってるじゃん」と不満そうな顔をしている八坂奈緒が樹に言った。
「そうなのかな? でもそんな雰囲気は全然なかったよ」と(お母さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら)樹は言う。
「そんなのお兄ちゃんに言うわけないじゃん。秘密にするに決まってるでしょ?」と樹のお母さんが持ってきてくれた動物の形をしたクッキー(思わず奈緒はすみません。いただきます。と慌ててしまった)を食べながら奈緒は言った。
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