29
目を覚ますと霰は樹お兄ちゃんの背中の上にいた。
どうやらお兄ちゃんは眠ってしまった霰をみつけて、霰をおんぶしてくれて自転車を押しながら、家まで歩いて帰っている途中のようだった。
「お兄ちゃん」と霰が言った。
「あ、霰。起きたんだ。眠いならまだ眠っていてもいいよ。家まではもうすぐだから」優しい樹お兄ちゃんの声が聞こえた。
「ありがとう。そうする」とぎゅっと大好きなお兄ちゃんにしがみつきながら霰はいう。
樹はなにも霰に聞いたりはしない。本当はいろいろ聞きたいと思うけど聞かない。霰から話をするまでちゃんと待ってくれる。優しいお兄ちゃん。
「お兄ちゃん大好き」甘えるような声で霰は言う。
「僕も霰のことが大好きだよ」とにっこりと笑って(よくみるとほっぺたに赤い手のひらのあとがある)樹お兄ちゃんは言った。
霰は次の日からいつものように朝いってきますを言って、小学校に通って、夕方にただいま、と言って家に帰ってくる普通の毎日を過ごした。
飾と出会ってから通い詰めていた東雲神社にはいかなかった。飾が霰にあいにきてくれると約束をしてくれたから、本当はすごくいきたかったのだけど、いかなかった。(ちゃんと我慢した)
でも、だんだんと不安になった。大丈夫、大丈夫、と自分に言い聞かせた。
それから数日後、のことだった。
霰が小学校から帰ってくると、自分の家の前できょろきょろと周囲の風景を見渡しながら、木立家の玄関から家の中をちらちらとのぞいている不審者のような動きをしている(翡翠色のワンピースを着ている)変な女の子のことをみつけた。
その後ろ姿を見つけてうれしくなった霰はいたずらを思いついてその女の子に見つからないように隠れながら、きゅうにうろしから「わ!!」と声をかけて、その女の子のことをびっくりさせてやろうと思った。(わくわくしすぎてしかたがなかった)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます