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「飾!! 私がわかるの!!」

 思わず大きな声で霰は言った。(さっきまで声にならなかったのに、今度はちゃんと声になった)

 目の前で言ったはずなのに、飾に変化はなかった。どうやら霰の声はやっぱり飾には聞こえていないようだった。

 霰は飾の体に触れようとする。でも、やっぱり霰の手は飾の体にふれることはできずにすり抜けてしまった。

「ちくしょう!!」霰は思わず力いっぱいそう叫んだ。

「霰。そこにいるの?」

 きょろきょろと周囲の真っ暗闇を見渡しながら飾は言った。

「いるよ!! 飾!!! 私はずっとここにいる!!」と泣きながら霰は言った。その大粒の涙は真っ暗な大地の上で弾けてまた光輝いた。

 その光を飾はもう一度、見つめる。

「霰。そこにいるんだね」

 飾は言った。

「いる。いるよ。ずっといる!!」と霰は言った。

 いつの間にかそこには幽霊の飾がいた。髪の毛をポニーテールにしている翡翠色のワンピースを着た(慌てていて忘れていたけど、思い出してみると、さっきまでの髪の毛をまっすぐにおろしている飾は真っ黒なワンピースを着ていた)霰と同じ十二歳の女の子。霰のよく知っている東雲飾がそこにはいた。

「飾!! 霰! 霰だよ!! 飾に会いにきたんだよ!!」と涙を流しながら笑顔になって霰は言った。

 その霰の声はやっぱり飾には聞こえていないようだった。でも飾はいろんな今の不思議な世界のことをすべてわかっているような顔をして「はぁー。霰。ここまできっちゃったんだ。ばかだな。せっかくぼくがきみのために、だまってきみのそばを離れてあげたっていうのにさ。自分からきちゃうなんてさ。霰は本当にばかだね。おおばかさんだよ」とふふっと笑いながら(いつもの生意気な声で)飾は言った。(飾はおてあげのポーズをしていた。顔は笑っていたけど、そのほほにはたくさんのなみだのあとがしっかりと、霰と同じようにまだちゃんと残っていた)

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