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 黒猫が走っていった先はやっぱり東雲神社だった。

 いつものように東雲神社の赤い鳥居を通って、霰は神社の境内までやってきたところでその足を止めた。

 赤い通りを通り抜けるとき、霰は少し変な違和感のようなものを感じる。黒猫は東雲神社のお賽銭箱の向こう側にいる。霰はそこまでいこうとする。そのとき、霰はふいに不思議な映像を見る。

 そのイメージはいなくなった東雲飾の映像だった。

 飾が、世界のふちに(真っ暗な深い穴の中に)落ちていくような映像だった。飾はその手を穴の中に落ちないように、助けを求めるように、霰にむかって伸ばしている。

「……飾!!」

 霰はその手をつかもうとする。でも、つかめない。手は届いたのに、その手は飾の手をすり抜けてしまった。いつのもように、きちんとつかむことができなかった。

 その映像はそこで消えてしまった。

 気が付くと霰は東雲神社の石畳でつくられている道の上に立っていた。

 世界を照らしているオレンジ色の光がだんだんと消えていく。日が沈んで夜の時間が迫っているのだ。

 夜の時間とは、つまり幽霊の時間だ、と霰は思う。

 霰は背中に寒気のようなものを感じる。ごくりと唾をのみこんでから、霰は一歩一歩歩いて黒猫のいるところまで行こうとする。黒猫はもう逃げだしたりはしない。神社の鈴の下あたりで、そこでじっと霰を見ている。

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