20

 道を曲がったところで木立樹はくびをひねった。

「あれ? おかしいな。さっきこの曲道を曲がったばっかりだったのに、いない」

 道路わきに自転車をとめて汗をかきながら樹は妹の姿を探した。

「あれ? 樹じゃん。なにやってるの? こんなところで」

 そんな声をかけられて、声のしたほうをみるとそこには同じ洛南中学校に通っている同じ教室の同じ陸上部に所属している女の子。八坂奈緒がいた。

 奈緒は樹のすがたをみて、ぱたぱたとうれしそうに軽い足取りで樹のところまでやってくる。

 奈緒はいつものようにその綺麗な黒髪をポニーテールの髪形にしている。(あいかわらず猫のしっぽみたいだった)緑色の模様のある(奈緒は緑色が大好きだった)スポーツバックをもって、洛南中学校の白のワイシャツと紺のブレザーの制服をきている。

 八坂奈緒は同じ教室同じ陸上部、それに席も隣ということもあって、樹と一番仲のいい女の子の友達だった。あるいは男の子の友達をいれても、奈緒は樹と一番の親友とってもいいような間柄だった。

「珍しいね。制服姿で汗なんかかいてさ。自主練?」(うれしそうな顔で)奈緒は言う。

「ごめん、八坂。とりあえずあとで」と言って樹は自転車をこぎ始める。

「え!? ちょっとまってよ! せっかくあったんだからどこかでなにか食べていこうよ!?」と奈緒はいったのだけど、樹は返事もせずに自転車を走らせて言ってしまった。

 その背中をみて怒った奈緒はとりあえず、(思いっきり)ぱんちするために樹を追いかけることにした。

「陸上部さぼって、私の真剣な相談も用事があるって断ってさ、今度はなに!? 樹そんなことばっかりやっていると不良になっちゃうよ!」走りながら奈緒はいう。(大きな声だから恥ずかしいと樹は思った。実際に奈緒の言葉を聞いて、くすくすと笑っている人もいた)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る