15 東雲飾 やあ、ぼくは飾だよ。

 東雲飾 やあ、ぼくは飾だよ。


 いつだろう?

 私が本当に自由に生きていた時間は。

 あのころのように私は自由には生きられない。

 私は不自由の中にいる。

 あなたと出会ったから。

 私はもうひとりぼっちじゃないから。

 あなたとずっとこれからも一緒にいたいと思うから。


 夢を見た。こんな夢だ。

 霰は緑の丘の上にいる。

 周囲はずっと緑色で、空は永遠の青色だった。

 優しい風の吹く場所。

 そんな場所に霰はいる。

 そこで霰は自由を感じる。私は自由なのだと思う。

 霰は思わず駆け出してみる。

 全速力で走る。

 どこまでも、どこまでも。

 あてもなく広い大地の上を走り続ける。

 すると、ふと遠くに誰かの人影が見えた。

 その人影をみて、霰はすぐにそれが飾だとわかった。

「飾!!」霰は言う。

 するとその声が聞こえたのか、飾は大きく霰に向かって手を振ってくれた。(霰はすっごくうれしくなった)

 霰は飾のところまで走っていく。飾は霰のことをちゃんと待っていてくれている。(消えちゃったり、追いつけなかったり、逃げだしたり、勝手にいなくなったりしなかった)

 霰は飾のすぐ目の前までくると、そこではぁはぁと息をととのえてから額の汗をぐっとてのひらでぬぐった。

「飾。久しぶりだね」練習した笑顔で、にっこりと笑って(絶対に笑顔で会おうと決めていた)霰は言った。

「うん。久しぶり。霰。元気だった?」いつもの笑顔で飾は言った。

 飾の笑顔を見て、声を聞いて、霰は思わず泣いてしまった。

 泣かないでいるなんて、絶対に無理だと思った。


「あ、お兄ちゃん。こっちだよ。こっちこっち」

 そう言って自分の住んでいる街の駅前で、木立霰はやってきた木立樹に向かって(嬉しそうな声で言うと)大きく手を振った。

 樹は早足で(自転車を転がしながら)霰のところにまで駆け寄って行く。

「ごめん、待った?」

「遅い。待った」樹の手を引きながら霰は言う。

「そんなに焦らなくてもいいじゃないか。図書館はこんなに早い時間にしまったりはしないよ」

 樹は中学校の制服をきている。霰のわがままで学校帰りに図書館での調べ物を手伝うために、一生懸命自転車をこいできたのに、ひどいとおもった。

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