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 飾には絶対になにかいなくなった特別な理由があるのだと思った。

 幽霊である飾にはきっと生きている人間の霰にいえないなにかの理由がある。(幽霊にはいろいろと幽霊なりの大変なこまかいルールや決まりごとがあるんだよ。とめんどくさそうな顔をして飾は言っていた)だから飾は霰になにもいえないまま、いなくなってしまったのだと思った。

 霰が知っている飾のことはほとんどなにもなかった。だからまずは飾のいた神社について調べることにした。

 郷土史というコーナーにその資料はあった。(お兄ちゃんに見つけてもらった)

 霰は樹と一緒にその資料を読み、神社についての歴史を学んだ。

 霰は必死に資料をめくって読んだ。

 そんないつもとは違う妹の姿を見て、樹は霰も少し見ないうちに真面目になったな、と笑顔で思った。(宿題を手伝ってほしいと言われていた)

 霰は図書館が閉まる時間のぎりぎりまで調べ物をした。そのおかげで神社についての歴史は全部読むことができたのだけど、そこに飾の名前はどこにもなかったし、飾と同い年くらいの女の子のお話もどこにものっていなかった。

 でも、あの神社の名前が東雲神社であることはわかった。やっぱりあの東雲神社と東雲飾の間にはなにかのつながりがあるのだと思った。

「霰。そろそろ帰るよ」と帰り支度をしながら樹が言った。

「……うん。わかった」と霰は言った。

 はぁー、と大きなため息をつきながら霰は夕暮れの色に染まっている図書館の机の上に力なく上半身をうつぶせにして、顔をうずめた。

 ……飾。ねえ、飾。あなたは今どこにいるの?

 「にゃー」と猫の鳴き声が聞こえた。

 はっとして体を起こした霰が鳴き声の聞こえたほうをみると、そこには一匹の黒猫の子猫がいた。

 図書館の中にぽつんと猫がいる。それは普通のことではないと思った。

「お兄ちゃん。あそこにいる黒猫。みえる?」とくいくいとお兄ちゃんの服を引っ張って霰は言った。

「黒猫? 猫なんてどこにいるの?」と(黒猫のいる床を見ながら)お兄ちゃんは言った。

 その言葉を聞いた瞬間に霰は走り出していた。

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