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 この子を救う。私が?

 霰は神社の古い木の床の上で小さな(かわいらしい)子猫と向き合っている。

「飾。私はなにをすればいいの?」

「まずはその子にふれてあげて」

「わかった」霰は言われた通りに子猫にふれようとする。子猫は逃げたりしない。ただその場所にいてじっとしている。

 霰の手が、そっとその子猫にふれた。

「ふれたよ。飾」子猫をみながら霰はいう。

「じゃあ次はこの子のことを思ってあげて」

「思う?」

「愛してあげるの」と飾は言う。

「愛してあげる」霰はいう。

 愛してあげてと言われても、どうしていいのか、霰にはまったくわからなかった。……愛する。この子に幸せになってほしいと思う。幸せに。元気に。笑顔に。……ううん。違う。間違ってはいないと思うけど、そうじゃない。えっと。なんだっけ。相手のことを想像するんだっけ。この子のことを思う。ちゃんと考える。私の中に受け入れる。あなたはなんで悪い幽霊になってしまったの? なにか心残りがあるの? それはなに? あなたが生きていたときにできなかったこと? それともあなたがこの世界から今いる向こう側の世界に旅立っていったときになにかひどいめにあったの? あなたは誰かを恨んでいるの? それで悪い幽霊になっちゃったの? ……違う? それなら、あなたは誰かを探しているの? もしかして、お母さん? あなたはお母さん猫を探しているのかな?

 霰は思う。

 子猫のことを。

 すると、少ししてとても不思議なことが起こった。「うわ。すごい」そんな飾の声が聞こえた。どうやら今起こっている現象は飾にも、想像できていなかったことらしい。もちろん、幽霊である飾でそうなのだから、霰はもっとびっくりした。でも、その感情はあんまり霰の外には出ていかなかった。なぜなら、霰の心の中はいま、目の前にいる子猫のことでいっぱいになっていたからだった。

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