9
「ねえ、飾。悪い幽霊はどこにいるの?」
「そこにもういるよ」飾は言う。
「え? どこどこ?」きょろきょろとしながら霰は言う
そんな二人のところに一匹の子猫がやってきた。真っ黒な毛並みをしている迷子の黒猫。(とても綺麗な猫だったけど、首輪をしていなかった)
その子猫は飾のところまでくると、飾の手に甘えるようにしてその頬を寄せた。
「よしよし」
飾が言った。
どうやらその黒猫には、霰と同様に幽霊の東雲飾の姿が、ちゃんと見えているようだった。(飾が教えてくれた通り、動物には幽霊が見えるようだった)
「かわいい猫ちゃんだね。首輪をしていないし、野良猫かな? お母さんとはぐれちゃったの?」子猫を見ながら霰はいう。
「違うよ。この子は幽霊だよ。迷子の動物の幽霊」黒猫の頭をなでながら飾は言う。
「え!? この子が?」と驚きながら霰は言った。
「そうだよ。この猫は幽霊なんだ。そして今日、僕たちが退治する予定の悪い幽霊がこの子なんだよ」と霰を見ながら飾は言った。
その子猫は本当に普通のどこにでもいるただの子猫に見えた。飾がそういうのだから間違いはないのだろうけど、霰はこの子が幽霊だとうまく信じることができなかった。
「この子。本当に幽霊なの?」
「そうだよ。霰には見えるけど、ほかの人には見えない。声もきこえない」
「にゃー」と飾がそういい終わると、小さな声で黒猫が鳴いた。
驚きのあまり、霰は言葉がなにもでなくなった。
そんな霰のことを飾は深い優しさに溢れる顔をして、じっとしばらくの間、じっとただ見つめてた。
「この子は悪い幽霊なんだよね?」
「そうだよ。悪い幽霊」飾りは黒猫を自分のふとももの上にのせて遊んでいる。その姿はとても(もちろん子猫のほうが)かわいらしかった。
黒猫の子猫はさっきからずっとかまってほしくて「にゃーにゃー」と鳴いている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます