飾はいつものように翡翠色のワンピースをきている。幽霊のあざりは服をきがえることはできない、ということはなくて、ちゃんと着替えようと思えば着替えることができる。でも汚れたりすることはないから、めったなことでは着替えたりはしなかった。(でも、霰の服装を見て、自分も今度は着替えをしようかな? と飾はさいきん見た目のことを怠けていたことを感じながらそう思った)

「ぼくも服、買い物にいこうかな?」飾は言う。

「飾。洋服買うの? なら今度一緒に買い物に行こうよ」

「行きたいんだけどさ、お金がないんだよね。ぼく」飾はちらっとお賽銭箱をみる。(もちろん、ばちあたりなことはしない)

「私もそんなにおこずかいないからな。悪い幽霊退治でお金がもらえたらいいな?」自分の白いがま口の財布の中身を開けて見ながら霰は言った。

「飾はどこかに服をしまっているの? 神社の中?」

「違うよ。ぼくは幽霊だからね、着替えようと思えば、この場ですぐに着替えられるんだよ」飾は言う。

「え!? それってつまり魔法みたいに?」

「魔法かどうかはわからないけど、まあそんな感じ」と飾は言う。

「きがえてみて」わくわくしながら霰は言う。

「それはまた今度ね。今日はなし」

「どうして? みたいのに」少しすねて霰は言う。

「今日は悪い幽霊退治をはじめてする日だから。そっちに集中したいんだよ」

「なるほど」霰は言う。

「じゃあ、今度絶対に着替えるところみせてね」

「うん。いいよ」飾は言う。

 そのタイミングでぽつぽつと空から雨が降ってきた。朝からどんよりとした曇り空だったのだけど、天気予報の通りに雨になった。

 二人は神社の赤い鳥居のところでお話をしていた。雨が降ってきたので二人は急いで神社の屋根のあるところまで移動する。

 神社から帰るとき、霰はいつもこの赤い鳥居のところで飾とばいばいをしていた。

 飾はこの神社の敷地内を境界として、境界の外に出るためには誰かの招きが必要なのだという。(勝手に神社の外にでることはできないらしい。幽霊とはそういうものなのだそうだ)

 だからいつも、二人は飾が普段、ぎりぎりまで移動できる限界の範囲である神社の赤い鳥居のところでばいばいをしたのだった。(それは昨日も同じだった)

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