　悩んでいても仕方がないので（なんど説明してもわからないから実際にやってみるのが一番良いと飾は思った）実際にやってみることにした。

「まずは練習じゃないんだけど、初級からやってみよう」と飾は言った。

「初級じゃなくてもっと強い幽霊でいいよ」と自信満々の霰は言う。（空中にパンチしながら）

「初心者なんだから無理しない。まずはぼくに任せて」そう言って、飾は霰に明日、いつものように自分の神社にくるように言った。

「約束だよ。いい？　絶対に勝手に一人で悪い幽霊退治はしないこと。本当に危ないからね」

「わかった。約束する」そういって、二人は（なぜか）固い握手をした。

　木立霰は綺麗な顔をしている（小学生にしては）背の高い女の子だった。（背が高いのは霰の一番のコンプレックスらしい）

　美しいつやのある長い黒髪をまっすぐに伸ばしている。（うらやましいなと思うくらいに綺麗な黒髪だった）頭はあんまりよくないらしいけど、そのかわり運動にはすごく自信があるらしい。（かけっこでは男の子にもあとお兄ちゃんにも負けないそうだ）

　それから今までの会話からなんとなくわかってはいたのだけど、霰はすごいお兄ちゃんっこだった。（お兄ちゃんのことが大好きだった）飾が「霰。おにいちゃんのこと好きなの？」と聞くと「すきすき。だいすき」と満面の笑顔ですぐに霰は言った。（もう数年したらきっと反動でお兄ちゃんのことが大っ嫌いになるんだろうな、と飾は思う。でも、もしかしたら本当のおにいちゃん大好きで、ずっと好きなままなのかもしれない。ともちょっとだけ思った。霰は自分でもいっているけど、たしかにちょっと年齢よりも心が幼いところがあった）

　約束通りに神社にやってきた霰は今日は珍しく帽子をかぶっていた。真っ白な帽子だ。その帽子を深くかぶって、つばのところで顔を隠すようにしているみたいだった。

　霰は胸のところに（黄色いペイントで）へんならくがきのようなマークのあるぶかぶかの真っ白なパーカーをきていた。下は短いデニムのハーフパンツで、足元は白い靴下と水色のスニーカーだった。背中にはうさぎの顔の形をした小さなバックを背負っている。

　神社にやってきた霰はなんだかこれから隠れて悪いことでもするみたいに、にやにやとしたいやらしい顔をしている。