霰の部屋は玄関からすぐの狭い木製の階段を上がったところにある二階の部屋だった。隣にある部屋はお兄ちゃんの部屋らしい。(樹お兄ちゃんの部屋というかわいらしい文字の看板がドアに飾ってあった)

 小さな四角い部屋で、かわいらしいものがたくさん置いてあった。目立つのはベットと勉強机と真ん中にあるテーブルと衣装ダンスだった。(ぬいぐるみもたくさんあった)木立家ではペットは飼っていないらしい。色合いはピンクと白と薄い青色だった。思っていた以上に女の子っぽい部屋だった。(小学校六年生にしては幼すぎるかもしれない)

「うーん」

 霰は考える。

「全然わからないの?」

「うん。わからない」

「それじゃあだめだね。全然だめだめだよ」

「どうして?」霰は言う。

「あのね、霰。悪い幽霊を退治するっていうことはね、悪い幽霊のことをよく知って、その幽霊のことを好きになるっていうことなんだよ。もっと相手のことを知りたいって思うことなんだ。それが悪い幽霊を退治する方法なんだ。もちろん、物理的に悪い幽霊を退治する方法もある。でもそれは本当の専門家のする幽霊退治なんだ。ぼくや霰のやろうとしている悪い幽霊退治はそうじゃない。そうだな。イメージするとしたら、『泣いている迷子の小さな子供をお父さんとお母さんのところまで連れて行ってあげる』みたいな感じかな? だから霰はいきなり悪い幽霊に殴り掛かろうとするんじゃなくて、もっとよく相手のことを観察して、悪い幽霊の気持ちをよく知ろうとしなくちゃいけないんだよ。まあもちろん、相手にもよるんだけどね。本当に危険な危ない幽霊だったらそんなことをしたら、こっちが呪われてしまうからね。どう、ぼくのいっていること理解できた?」

 まるで小学校の先生のようにテーブルのところに正座で座って話をきいている霰に向かって、(立って話をしている)飾は言った。

「全然わかんない」と霰は言った。

 霰はもっとヒーロー的な悪い幽霊退治をイメージしていた。漫画やアニメや映画のように悪い幽霊をぶっ飛ばして改心させるというイメージだ。(でも飾はそうじゃないという)

「だからまずはぼくで練習しないと。ほら、ぼくがいま、なにを考えているかちゃんと当ててみて?」とにっこりと笑って飾は言った。

 霰はもう一度、言われた通りにやってみる。でも、やっぱり全然飾の考えていることなんてちっともわからなかった。

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