継承

夜鷹掌

【中編詩】春の習作 1

時計の針は瞳の焦点から外れて回してく

暗い液体が冷たい シンセサイザーの曲が流れて 永遠とは何だろう

足が止まると、意識が飛ぶ

ニケアの地平よ旋風を送れ 再生する1つのローマと4つの不確かな鷲の翼に収束する古い両民族の血が私のハートを掻き立てるから!

漣の底 沈船にたまむすび 濁りを留めて凝固する視線が残ってる


教室でぼんやり白板を眺めてると 銀色のシンナー臭が身体を刺したりした

瞬間に蛍光灯は唸り声を立て始めるようで私の腹の水たまりも引きが明らかになる

少年よ 駆け出せ!小さい頃の日曜日の贈り物を覚えてるだろ

連れられて車で向かった緑の満ちた大地と海とを。そのむすびめに生まれた日の光を無条件に浴びていられた 絵のような夕日と

夜にはドキュメンタリー映像にこの星の遺産の安堵を約束させている気がしていた

時間の1週間を溶かして 夏を頂点に季節を待ち侘びていたあの頃は、そうだった


誰を思ってか鶯が鳴く まだ眠りに入ったばかりに…

銀河を目指す軌道エレベーターはまばゆい灯台の光が明滅し上昇と地上を繰り返す

やがて突き抜ける虹の階段へ、少し歩いてみる

浜辺に風が吹く前に、ジャングルの木陰にもたれ遠くを見やるタキシードの道化がいる

振り返ることを忘れた顔の皺には汗の溝が混じるよう 無数の顔を包んでいくと痛むらしい

南国のように暖かい春でも黒い藤の花がどこかで咲いている気がした


銘の刻印された気球の尻尾

幌馬車が目掛ける理想郷の崖っぷち

ほと走る血潮が越境する

1人1人の平原には青写真の紙切れが散らばったままだ

心の鏡のような景色ならいいな

別れに耐えきれずにホームシックの延長の演技は極限まで行かず弾け飛んだ過去

私は今、生きている

歴史が虚像でも、あるかないかは私たちが未来の采配に対してどれだけ責任を持つことができるかにかかっている 伝えることを諦めるのはそもそも反則だ


陽炎の揺れて見えた門を抜けると

風と波に洗われて家がポツンと建つ

揺れてめくれる短く褐色のカーテンの下

1人の青年が積み荷をほどき終わって休む

雷光を遮断する石の置き物にも見えるぬいぐるみ

船が行ってしまっても動揺をしまって

豚汁をすすっている

里芋を汁と一緒に食うと倍は旨いらしい

水面張力で水を慎重に移し替える場面も、当たり前が崩れる

選ぶ時代なら当たり前だけどなにか

夢を置いてきた 既にここ他者の家に焚き火の跡が残るのは、廃墟からとはまた海の景色が違って見えたからなのだろう

memory horn


宛先を定めず遠くまで投げた君咲き

目覚めを待つのは運んできた汽水のゴロウでも狼でもあれよと 生き物の標準がぼやけている春

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継承 夜鷹掌 @Hokerikon

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