第4話、知ることが幸せとは限らない
『ぽふ』
宇宙空間は音がないから、爆破ひとつとっても地上はとても新鮮。
「あ、そっちはどう?」
『・・こちら・・はい、大体の位置関係はすでに確認済みです』
「それはよかった。こちらもまあ、おおよそいいかな。もう少ししたら合流するよ。ポイント送るね」
辺りは焼けたきのこのいい匂い。
夕飯は焼いたポルチーニ茸を添えたステーキがいいな。
「お疲れさん。順調だな」
「まあね。地上は予測通りだね」
転がっているロボットの頭を蹴りながら、軽い足取りでこちらに向かってくる。
「それにしても、機械人用麻薬とか、おっかねーな」
「ひどいよね。ヒューマノイドやアンドロイドが持ってる味覚を機械人に持たせるとか。大体、身体変更できるんだから、本人の希望であの身体か、理由があってあの身体なのに」
「しかし、何食べても快楽回路に直結させるとか、ありえねー。でも、機械人でこれ食べるとたまらなくなるらしいぜ?料理に混ぜられた奴が言ってた」
「その子どうしたの?」
「ボディ入れ替え」
「うわ、負担デカすぎ。最低だね」
見た目は巨大きのこ。2mぐらいの舞茸にしか見えないが、そのひだには強力な麻薬成分。食べると体内の電気信号と融着して「食べる」行為を気持ちがいいと、回路を書き換えてしまう。より「きのこ」を食べることを促して、拡散していく。
その「宿主」の死体を養分に増殖していく。きのこそのものは栄養化は高く、死ぬ前に食べたい「食物」ランキングに入る「管理植物」。これはさらに麻薬成分を高めた「御禁制」。
「そんなに美味いんかな?これ」
「食べてみたら?普段から食べてるヒューマノイドやアンドロイドには効き目薄いけど」
焼け潰れたきのこを手にしてみる。ふにふにしているけど繊維は硬い。ベッドに良さそう。
「このきのこをマザコンに食べさせるとか、なかなかいい度胸なテロだな」
「まあ、無駄なんだけどね」
「この程度は普通に食べるしな、あの人」
「だけど、こんな通常より多い麻薬量の逸品は周りの生態系を壊してしまうからね。すでにだいぶシンジケートの財源になっている」
「あの村の子どもたちに何かあっても嫌だしな」
何せ電気や有機体を養分に増殖するだけでも恐ろしいのに、このきのこが周りにあるとやたらとグルメな人になるという噂もある。人に影響を及ぼすことは間違いない。人の死体を用いるなど、エスカレートする前に止められてよかった。
「さて、みんな集まったね」
「よっし!じゃあ、アジトに向かいますか」
さあ、捕物開始だ。
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