第3話、知恵と勇気

ねむ。いい天気だな。

あ、青い羽のちょうちょとか珍しい。


「そうなんですね」

相槌を打って先を促す。


「そうなんだよ。だからね、わたしゃ言ってやったのさ、梅干しとうなぎは一緒に食べるなってさ」

「なるほど」

「なんでもそうさ。脂っこいもののあとにさっぱりする、一見すると良さそうだけど、全く反対のものってのは刺激しあって負担がかかりやすいのさ」


「これさ、毎回、何の意味があるんだよ?」

「ん?聞き込み?」

「だからな。マザコンが出してるんだから、さっさと片付けに行けばいいだろ?」

「だから、マザーコンピュータが全て正しいなんてわからないからね。まずは直接現地に行って、話を聞いて、事象を確認しないと」

「お前の好きな「フォースのお導き」だと思って、とっとと行かねーか?この田んぼの中の集落に情報があるとは思えねー」

「あれは人の意思力なんだよ?意思の力が物質を介して他者に影響を与えるんだ」

「よくわからんが、まあ、そういうことで行こうぜ」

「うん。次の家はあそこだね」

「まだやんのかよ」


うんざり顔する割には、付き合うんだよね。

ゆっくりと高い青空の下、土を踏み固めただけの緩やかな登り坂を歩いていく。


「僕たちパトロールも兼ねてるってわかってるでしょ?なんなら現地との交代式に出ればよかったのに」

「しっかしまあ、癒着防止とはいえ、地域課は毎年交代で惑星勤務、広域課は宇宙パトロール、俺たち事件課は宙域問わない広域犯罪に予測に基づいた予防処置。貧乏暇なしだな」


道端に遊ぶ子ども達が手を振ってくれる。

我々連邦軍は小さな「ヒーロー」だから。

俺も小さい頃は、時々やってくる「ヒーロー」に手を振っていた。


「国とか惑星で終わる時代じゃないからね。それこそ「仲裁だけで執着しない」ヒーローとかかっこいいよね。僕は収集癖だけでも色が変わりそうなんだけどね」

「それを無責任っていうんだよ。圧倒的な武力で仲裁だけじゃ、圧倒的な武力がなくなった時点で火種が際限なく燃え上がる」

「ま、火種が発生しないようにするのも仕事だからね」


この前、後輩くんが買ってきた、約30cmの柄から光刃が飛び出すお土産は、もう俺の大切な宝物。あれは嬉しかった。


初めて聞いた『ヴォン』という重低音に大興奮して、しばらくリビングで映画観ながら振り回してた。


「ま、現実は殴り合いに撃ち合いに、政治取引」

シュッ!シュッ!と空を裂く音がする。


「まあ、マザーコンピュータ相手に政治取引するやつはいないけどね」

「そりゃな。星から出られなくなる」


『ピピピー』


「あれ?もう時間?」

「ほらな」

「まあ、でもさ。影響があまり出てなくてよかったよね」

「たしかにな」


急いで集落の入り口に戻る。

大きな木の下に置いてきた反重力バイクの近くには数人が待っていた。


「連隊長!準備できております!」

「さて、行きますか」

「おうよ!」


跨れば、バイクがゆっくりと浮かび出す。

さあ、行こう。

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