第2話、美しく連なる宝石

「standby...standby...」

けたたましい警報音をバックミュージックにして、クルー達が軽やかにデッキを走り抜ける。


「もうさ、ドッグから出たくないんだけどね」

「ずっと内勤はそれはそれで嫌じゃないか?」

「平和がいいんだけどね。まあ、パトロールの旅も大切だよね」

「ドッグ内も戦争状態だろ。あのお偉いさんたち、マジでうぜー」

「まあ、ちょっと、言いたいことはあるけどね」

「あ、お前さん、それなりに偉いんだった」

「名前だけね。現場仕事してないと、現実がわからなくなるからさ。話聞きに行くって大切だと思ってるんだけどね」

「俺の給料を上げてくれる方が大切じゃないか?」

「あ、僕、人事権はあまりないし」


俺とバディを組んでるこいつも佐官クラスで本来なら偉いんだけど。同期のよしみってやつなのか、また内勤仕事を放り出してついてくるらしい。


「今回も来るの?」

「ああ。俺はな。チーフは本拠地に戻った」

「あの人、基本的に内勤だしね」

「よくこんな戦艦に乗り込んできたな。宙域制圧戦闘母艦ならわかるんだが、全く。軍の勤怠管理のお偉いさんが宇宙用戦闘機とか乗って出動するとか人材不足すぎだろ」

「緊急だったし、免許証持っていたのがいなかったんだからしょうがない。あーあ、管理職はヘルプ要員。いなきゃ働け、ですよ。あの人来たのってさー、確か誰かのチームが違法なサビ残したからでしょ?月200時間以上の勤務はクオリティ下がるから禁止なのに」

「あー、いや。まあ、反省している。いや、サビ残ってさ、普段から人員に余裕持たせないで。ほら、今回の件だって人員不足だからそうなる。大体「人間」がいる事件はロボット対応不可なのがな」

「で、振り出しに戻るって」

「そうそう!お偉いさん達にもっと給料よこせ!てな」

「ついでに人も!」


お互いに白い宇宙スーツ着て、デッキに進む。これから先は減圧区域。白く輝く耐熱壁にリノリウムの床をロボットたちが忙しく動き回る。


サンバイザーを閉じて、スーツ内の気圧を調整する。


『うっし。じゃあ、行きますか』

アナログな空気信号は一度デジタルに変換されアナログに戻り、聞こえてくる。

『さあ、パトロール開始!』


サンバイザー越しに、トンネルみたいな灰色の宇宙ドッグが額縁になった漆黒の宇宙が見える。その中に人工太陽を反射し燦然と輝く我らが母星、緑豊かなデメテル。銀河連邦のエメラルド。

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