狂人×狂人

短めです。


―――⭐︎



「……失礼します」


「そこに座ってくれ。なに、そんな緊張をすることはないよ」


 アイナは協会において『怖い存在』という一面を持っていたりする。

 Aランクアタッカーであるミコでさえ、緊張を隠せていない。


「まず一つ、ミコは接近禁止令のことは知っているね? それで、今日の件は故意かな?」


「もちろん知っています。いいえ、故意ではなく、その……聖地、いや、八王子A1には素材回収に行ってまして……わたくしの不注意で未探索領域に迷い込み、そのまま気を失ってしまい……」


「聖地? はっ、なるほどなぁ。まあ、それはいい。お前ほどのアタッカーが不注意で未探索領域に迷い込む? 冗談はよしてくれ。私には真実を話してくれないか?」


 すでに嘘を見抜かれている。それもそのはず。アイナはユウの配信をずっと見ていたのだから。ミコがナニをしたかなどおおよそ見当がついている。

 いや、見当がついているというより確信があった。


「……うぅ。恥ずかしながら、自慰行為を、その、してしまいまして」


「そうだろうと思ったよ。野外で自慰とは……とんだ変態娘だね。どうせユウのことでも考えていたのだろう。ただしTPOは弁えないといけないな」


 言いようのない圧力にミコはアイナを直視することができない。


「は、はひ……」


 そして羞恥からかミコの顔は真っ赤である。しかし、アイナは止まらない。


「腹筋が好きなんだろう? 筋肉フェチも悪くないと思うが……それは置いといて。とりあえず今回は故意ではないことはわかった」


「……はい」


「ならば、お咎めは無しだ。色々と疲れているだろうし今日はもう休むといい。」


「は、はい!」


 故意ではなく単に性欲に負けた結果であるため、処分は下されなかった。アイナはその辺の理解をきちんとしている。

 暗かったミコの表情も一瞬にしてパッと明るくなる。

 その表情は野外で致すことに目覚めた変態とは思えないほど可愛らしく清楚なものだった。


「それでは、失礼しますわ!」


「今後は気を付けるように。お疲れ様」


 さて、ミコが帰った応接室Bにはアイナだけが残されている。

 補足になるが、この応接室Bは機密性を高めるため防音仕様となっていたりする。


「……とんだ変態娘、か。はぁ、私も大概だよ」


 アイナはとても綺麗なブーメランを放っていた。

 常習的に応接室Bで致している彼女こそ生粋の変態と言えるだろう。


「ミコにユウを寝取られる……か。私もオカズとしては大いにアリだと思っていたんだよな」


 そうして彼女の指がいつもの場所へ添えられる。

 こんなときにも励もうとしているのだ。ミコ以上に狂いきっている。


「ん……ユウ、いかないでくれ……私を捨てないで……んぁ……はぁ♡ミコのどこがいいんだよぉ……あ゛ぁ♡イ゛ゥ……ンン♡」


 今日のオカズは寝取られ妄想のようで、とても捗っているご様子だ。

 ミコにお咎め無しと言った彼女こそ、このことがバレれば一発懲戒処分だろう。

 立場を利用して、防音仕様の応接室Bで、職務中に、致しまくっている。数え役満だと思いますがどうでしょうね。


「ふぅ……少し胸が苦しくなってしまうが……バッチリだな♡」


 数分後、妙にツヤツヤしたスッキリ顔で応接室Bからアイナが出てくる。

 密かに職員から『疲れ知らずのアイナ』なんて呼ばれていたりもするが、その真実を知られれば『変態狂人アイナ』と呼ばれることだろう。


「うーん、よし! 今日も残りの仕事をサクッと終わらせて定時に帰るぞ!」


 こんなことをしていても仕事はきちんとこなす。これこそが協会のエリートである。


「今晩は寝取られシチュだな。まだまだヤれる」


 本当に協会のエリートなのである。



◇◇◇



 ミコは処分がなく、安堵していた。正直なところアタッカー活動の一時休止命令くらいは覚悟していたのだ。

 しかし、真実を暴露したところアイナはある程度の理解を示してくれた。その結果がお咎め無しである。


「これで何も気負うことなくヤレますわね」


 アイナもアイナだが、ミコもミコだ。ユウの生腹筋チラリズムを思い出し、すぐに臨戦態勢となる。

 あまり今日の件を反省していない様子。寧ろオカズとして活用していくスタイルだ。


「ふぅふぅ♡反則ですわよぉ……ユウくぅん……」


 目に見えぬ速さでパンツを脱ぎ捨て、即座に相棒のディルド(サイズ調整済)と共に快楽の世界へと堕ちていく。

 目の前に一目惚れした筋肉があるのに触れられない、そのもどかしさが興奮をさらに高めていく。

 そして、自分を護ってくれた逞しい背中。抱きつきたかった。あわよくば舐め回したかった。


「止まらないのお゛ぉ゛♡わたくしを焦らさないでぇぇ♡ユウ、くん゛♡大好きですわぁぁああああ♡♡」


 まさに煩悩の狂人となったミコは無限絶頂コースへと案内される。数時間も快楽の海に溺れ続け、これまでにない極楽気分を満喫した。


「あぁ♡病みつきになりますわね……叩かれると思いますが、これは掲示板で自慢しないと……デュフッ♡」


 生腹筋により脳を完全に破壊されたAランクアタッカーはこの後も狂ったまま己の道を突き進む。

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