第4話
日付が変わっても、眠気が襲ってくることはなかった。
さっきまで窓から明るく覗いていた月は厚い闇雲に覆われ、これまで月の光に
奏太は暗闇の中、パソコンに向かっていた。画面の明るさを一番暗く設定しても、強い光が放たれていることが分かる。
しかし、ブルーライトの光に
今はただ、奏太にとってかけがえのない人——千影を救うことしか頭になかった。
奏太は手を動かし続けた。インターネットの検索ボックスに次々と文字を入力しては
「大切な人 余命宣告 救いたい」「死にそうな人 救う方法」「○○病 効果的な治療法」……。
静かな空間にキーボードを叩く音が絶え間なく続く。
検索しても検索しても、千影を救う方法が見つからない……。
医者でもない自分がインターネットで検索して治療法を見つけることが出来るなら、この世に医者という職業は存在していない。
そんな当たり前のことが分かっていながらも、何かをせずにはいられなかった。
「……っ、俺が身代わりになれたら……千影の身代わりになりたい」
思わずパソコンの脇に投げ出した両拳がぎゅっと握り締められる。胸の苦しさに耐えるかのようにしばし顔を
その時、パソコンの画面から放たれる光が一瞬途切れたように感じた。なんとなく気になってパソコンの画面に向きなおると、検索画面ではなく検索結果画面に切り替わっていることに気づく。検索ワードは「千影の身代わりになりたい」。
「何やってんだよ、俺……」
無意識にこぼれたこんな声ですら文字として変換し、そのまま検索ボックスに打ち込む自分に自分で呆れる。
検索ボックスに打ち込んだ文字を消し、また別の文字を入力しようとした時、検索結果の一番上に目が止まる。
「株式会社スケープゴート……『身代わりサービス』?」
なんとなくその文字の並びが気になって、パソコン画面上のカーソルをその青い文字に合わせクリックする。それと同時に、瞬時に画面が切り替わる。
一見して普通の企業のサイトに他ならないが、表示されている内容に目を通した瞬間、奏太は大きく目をみはる。
「これって……!」
必要な部分のメモを取り終わった奏太はパソコンを閉じ、椅子の背もたれに寄りかかる。ギィッという
(この方法なら、千影は助かるかもしれない……)
奏太は窓の方に目を向ける。気付けば深い闇が薄れ、空が
奏太は徐々に明けゆく空に、希望の光を見た気がした。
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