第17話 一首縛りで
「ついつい反省会と短歌談義に花が咲いたが、もう八時半を回ってしまった。これから歌会を始めるか、日を改めるか」
皆のお酒が減らない中、雲助さんが生中の追加注文をしている。まだ、話し足りなさそうです。
「日を改めるたってよ。今週はもう無理だろう。来週は七月だぜ」
それはそうだろう。今月もスケジュールを合わせて、月末になってしまったのだから。
だったら……。
「一首縛りなんてどうでしょうか」
「一首縛り?」
首を傾げる夏芽さん。
「そうです。通常の歌会は、五首から十首を用意して、一日掛けてやるそうです。魔法使いの会は仕事帰りに飲みながらですから、五首くらい用意してあると思います。前回も前々回も話が横道にそれて、毎回二首しか披露していないけど……」
「えー、そうなの。僕は多くて二首だよ。毎回、くだらない話で時間が潰れるから、そんだけあれば、充分事足りるからね」
「ああ、俺もそうだぞ。いつも二首だけ用意している。それ以上作っても無駄だからな」
北壁さんも同意している。その隣りのゴン太さんも頷いているし、まさか、雲助さんも……。
「僕は一応、五首用意しているぞ。普段から作歌しているから、数には困らんからな」
「……とにかく、手持ちの歌から一首を選び、それで歌会をしてしまいましょうって、話です」
「なるほど、今日の前半は真面目な話だったから、お酒も進んでないしな、常連はお店に貢献しないと」
あなただけは、いつものペースで飲んでいるのを知っています。隠しても無駄ですよ、雲助さん。
「僭越ながら、今回は私に仕切らせて貰えませんか」
いつもの順番で歌を披露すれば、私がトリになる。それは避けたい。
私は鼻息を荒くして懇願する。
「それは構わないが……その前にお酒を注文しよう。店員さん、この焼酎のボトルを一本追加でお願いね。ツグミンも飲む?」
雲助さんは飲み過ぎです。
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