第12話 反省会から始める

「それでは、六月の会を始める。でも、その前に……」


 雲井主任はちらりと、席の中央でふんぞり返っている私を見る。


「鶇くんの強い要望により、反省会から始める」


 みんなの視線が私に集まる。


「そうです…………」


 ここで少し溜めて、私の怒りの強さを表現する。


「ひゃん省して下さい」


 思いっきり噛んだ。涙目の私の言葉を引き継いで、萩田課長補佐が大人の言葉で嗜める。


「そうだぞ。お前らはやり過ぎなんだ。特に雲助。あんなところで謝罪されたら、ツグミンだって困惑するだろう」


「全く持ってその通り。申し訳ない」


 しゅんとする雲井主任。


「それにゴン太もゴン太だ。面白がって写真を撮るのもギリアウトだが、仲間内とはいえ、拡散するのは完全にアウトだ」


「面目ない。鶇さん、ごめんなさい」


 大きな身体を小さく縮こませているゴン太さん。


「そして、夏芽。お前は大袈裟に騒ぎ過ぎなんだよ。あんなふうに雲助を煽ったら、こうなることも予想できただろう。長い付き合いなんだからよ。」


「そうだね。ごめんね、鶇ちゃん。折角、仲良くなったのに、前回はあんな終わり方をしたから、辞めないか心配で、雲助を問い詰めちゃった。僕からも謝罪する」


 夏芽さんはしゅんとしても、キラキラオーラを発散して……いけないわ、鶇。桃色の妄想はお家に帰ってから。


「つい流されそうになったけど、萩田課長補佐、そのツグミンってのは、私のことですか」


「そうだ。いつまでも他人行基に、鶇くんとか、鶇さんとか、呼んでいるのもなんだかなあと思っていたら、スマホのゲーム広告でピ◯ミンってのがあったんだよ。知らないか?ぽーとして頭に花を咲かせている不思議生物なキャラクター。思わずこれだと思ったよ。名前の語呂とも合うし」


 すっごいドヤ顔で宣っている。夏芽さんとは違う意味でキラキラしている。


「それと俺のこともヨッシーでいいぞ。萩田課長補佐なんて役職名で呼ばれると、会社の延長みたいでつまらねえ。ここは遊びの場なんだから、フランクにいこうぜ」


「それもそうだな。僕のことも雲助でいい。こいつ等にずっとそう呼ばれて馴染んでいる。会社の上司ではなく、歌仲間としてそう呼んでほしい」


 雲井主任がきれいにまとめていますが、私のあだ名はツグミンで決定ですか。私のイメージはあのアホ面ですか。


「わかりました。これから雲井主任は雲助さんと呼ばせて貰います。萩田課長補佐のことをヨッシーと呼ぶには敷居が高いので、親しみを込めて北壁さんと呼ばせて貰います」


 私は百点満点の笑顔で宣言しました。


「おしっ、そのケンカ買った」


「先にアホ面呼ばわりしたのはそっちです」


 皆さん、わははと笑っている。


「僕だけあだ名がない」


 夏芽さんはしょぼんとしている。


「夏芽さんはそのままがいいのです。漢字も素敵だし、号(名前)にしても使えます」


「えへへ、そうかな」


 夏芽さんは嬉しそう。ふっ、ちょろいです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る