パンチ

イタチ

パンチ

若い女が、歩いていた

それは、セーラー服を、着こみ

茶色のスカートを、着用していた

その、白い模様の入った服が、揺れ

電車の座席に、付いた時

男が、話しかけてきた

「おい、譲さん、中々、かわいいじゃん」

男の体躯は、中々良く

八十キロの重量級なのではないかと言う

しっかりとした、筋肉質をし、その肌は、飴色にコーティングされたように、黒く

頭は、金色に、染められおり

更には、大きな耳ピアスが、片方側だけ、ずらりと、三個ほど、目にすることが、顔の、近い高校生には、見えた

その腰を折るように、話しかけてきた男は、顔面を、近づけると

その唇に、キスしかねぬ近さで

「ねえ、付き合わない」と、木の皮のような

大きく浅黒い唇を、開く

少女は、こぶしを、握りしめた

目の前の男は、更に、近づき、肩に手を当てようとしている

彼女は、その手を、思いっきり、男の顔面に、後ろに、振りかぶると

殴って居た

男は、一瞬何のことか、少女の手を見ていた

なぜ、手を挙げたのか、嫌がって逃げようとしたのだろうか

だとしたら、その手を取って座りなおさせれば・・

そう考えていたが、そのあとの記憶は、無く

車内には、倒れた音と

それを遠巻きに、見ていた小学生が、男の位置とはかなり離れた座椅子に、居たくらいで

冷ややかなクーラーの中

車内放送が

流れていた

少女は、男に、パンチを、した





「それで、茶村 花一って、言うんだな、その女は」

金髪の男は、目を覚ましたのが、それから三日後であり

鼻、顔面陥没

前歯上下、六本が、抜け落ちると言う

第三次ののちに、彼は、知らない天井で目を覚ました

そして、彼は、行動に出た

直ぐに、それを行った人間の洗い出しを、開始した

警察には、かっこ悪いので、何も話せなかった

しかし、駅に、同級生がおり、彼は、いじめを、続行するように、彼を、脅して、

その映像を手に入れた

そして、それからは、早かった

ここら辺の高校を調べれば、その制服は、直ぐにでもわかる

第一、この駅を使用する学校は、限られるし

この電車にいる高校生に、あの女子を、写真で、見せれば、だいぶ、早く見つけ、特定することは、可能なのである

しかし、男は気に食わなかった

女に負けることも、気に食わなければ、自分の思い通り、彼女を、好きにできなかったことに対しても、自分の恋愛を、否定されたように、感じられていた

それは、一般的なものではなかったかもしれないが

しかし、それが、果たして何だったかと聞かれても、分からなかった

男が、その女子高校生の名前

そして、家族構成、住所まで、聞きだし

電話番号を、手に入れたころ

彼の顔は、般若のように歪み

ただ、相手に、暴力で、返すことしか、頭には、存在していなかった

相手の家族のだれから、殺そうか

いや、殺しては駄目だ

あいつが、そう、あの女が、歪み顔を、出して、そのあと、更に

男の顔は、更に歪んだ

目は何も見ていない

ただ、歪みがそれを、言い表しているように見える

直ぐに、数人の仲間を、招集した

すると、その数は、数十人まで膨れ上がった

女を、どうしても言い

殴っても良い、殺しても良い

日頃のうっぷんが、渦を巻き、それが日常化している

そんな異常性の中につかれば、それに合うような人間も又集まってきてしまうのであろう

その招集は、錆びたトタンを、壁にしたような、路地裏の建物へと集められた

彼らの前には、バーコードのような、頭をした

作業着姿の壮年の男と

皴のよった

男と同年代のような、軽く茶色をかけたパーマの女

そして、朴念仁のような、優男は、黒い制服に、背の高く、頼りない体つきをして、この状況に、困ったように、そこに立ち尽くしていた

そろそろ、辺りは、暗くなり始めたころ

縄で、ぐるぐる巻きにされた

髪の長い女が

あの茶髪と、同時に、扉の前に現れた

大型車の車庫だろうか、その大きな扉から漏れ出す逆光の前に

仲間と連れられた女

そして、それを待たされ

見せられている

家族が居た

「おいおい、楽しみだろ、この前は、よくやってくれたな

俺は、なにも、悪いことはしていないのに」

女は、ただ、そこにいた

そこで、話を聞いていたが

ミシミシと縄が音を立てているような気もした

「今から、お前の親爺を、このただの、そこら辺に転がっていた

鉄パイプで、脳髄漏れ出すまで、なぐりまーぁーす」

金髪はそう言って、本当に、そこら辺に転がっていたのだろうか

用意したのか、分からないが

鉄パイプを、地面からとると、仲間であろう、一人に投げた

「じゃあ、よく目を、かっぴらいて、見ろよ

暗くなってくるけど、お前の心情よりも、明るいだろ」

男は、始めろよ

そんな事を、叫んだように見えた

しかし、暗い、地面に、一人の若者が、倒れていた

その横には、銀色の鉄の棒が、家族の一人、小さな妹が、握って、おもちゃのように、持っては、立っている

男の顔に、一瞬「っあ」

と言う疑問符が浮かんだ

「っう」

次々に、擬音が出る

それは、人間が、出すような、声ではない

ただ、生物的に、出る声

それは、そして、自分が出しているのではない

自分が、起こそうとしている動作ではない

誰かが、意図的に、出さす、物理的音楽

「っあぁ」「おっ」「ぅが」

意思表示とは、別に、次々に、倒れる人

床には、集まっただけの人間が、げろを、巻き散らしたり

血を、巻き散らしたりしながら、落ちていく

周りの人間は、子羊のように

何かを、鳴き

そして、手に持つものは、長身の弟や

母親により、壊されていく

取られていく

逃げるものは、背骨を折られ

立ち向かうものは、内臓をつぶされた

それは、猫が、虫を、楽しんで、殺しているような

食べることのない

無意味な、遊び

「お父さん止めて」

しかし、金髪の全ての手が

そして、歯が無くなったころ

舌が、父親の手の横から、地面に落ちた

そのこぶしは、鉄よりも硬く

工事機器よりも早く

そう思えた

「帰ろ」

彼女が、妹から、行われた

ロープの切断で、その場を、後にする頃

ゆっくりと、工場にまかれたガソリンが、火をともした

本来燃えにくい

生肉の人体は、その高熱により

脂肪が発火し

まるで、薪のように、燃えだしたころ

家族四人は、何ともない家で、料理を、始めていたのである

「だから、何で、そんなことしちゃうの手加減ってものがあるでしょ」

父親は、ビールを飲んで、知らん顔

母親は、鍋を、テーブルの上の鍋敷きに、置きながら

「まあ、かわいい娘のためを思ってでしょ、ほら、顔見せってあるじゃない

それで、張りっきったんじゃないの彼しかと思って」

娘は、それを、否定する

「でも、おねいちゃんが、怪我を、させたせいで、こんなことになったんだから

そうだよね、おねいちゃんのせいだよね、ねえ、兄貴も、そう思うよね高次兄」

男は、黙々と、ポン酢に、付けながら、鍋を、食べている

「もう、普通が良いのに」

彼女はそう言いながら、手を合わせると

ご飯をよそい

お玉で、鍋の具材を木のお椀に盛ると

白菜に、箸を、付け始めたのであった

一人妹が、首を振りながら

「これじゃあ、おねえちゃんに、彼氏なんて、出来ないよ」

と肩を、ゆするのである

その手にはなぜか、鋭いナイフが握られており

彼女の座布団の横には、日本刀でも置くように、あの現場から拾ってきた

武骨な鉄の空洞の棒が、さも、ありなんと、鎮座していたのであった

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パンチ イタチ @zzed9

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