第14話 超常現象研究会での午後

 放課後、マリアンナを連れて超常現象研究会のクラブルームへ向かった。


 彼女が朝に見せていた興味は見せかけではなかったようで、迷路のような特別棟の奥へ進みながら、興奮をあらわにしていた。


「麗奈、いる?」


 ノックしてドアを開けると、相変わらず、珍奇なオブジェに埋もれた部屋の片隅で、佐藤麗奈は分厚い本を紐解いていた。


 人がやって来たのに気づくと、ページから顔を上げて、

「ああ、正人くん………え?」


 麗奈は少し驚いたようだったが、正人がマリアンナを紹介しながら事情を説明すると、「そういうことなら、どうぞ」と言って、微笑で歓迎してくれた。


 マリアンナは部室の中を探検し始め、棚に飾られている様々な珍しい物(怪しい物ともいう)に、興味津々な視線を向けた。


 変わった形をしたカラフルな石を指差して、

「これは何、麗奈さん? 雫みたいで、面白い形!」

「ああ、それは勾玉よ。古代日本に伝わるお守りで、守護の力があると言われてるの」


 2人の会話は続き、マリアンナが質問し、そのつど麗奈が満足のいく答えを与えていた。


 やがて、棚に置かれたタロットカードのデッキを発見した。彼女は好奇心を露わにして、

「麗奈さん、タロット占いできるの?」


 麗奈はゆっくり首を振りながら、

「できるけど、あんまり得意じゃないかな。昔、祖父から教わった、易の方が得意」

「易って、あの竹の棒みたいなのを振って、『エイヤー!』って、やる占い?」


 マリアンナが易者を真似た動きに、正人は噴き出しそうになった。


 易は元々、周の時代から古代中国に伝わる占いで、一般に筮竹と呼ばれる竹の棒を使って占う。見慣れぬ者にはどこかエキゾチックな儀式のようであるが、東洋の国々でしばしば見られる光景だ。


 興味を引かれた正人が、「本当? じゃあ麗奈、占ってくれる?」と頼もうとすると、マリアンナは負けじと言った。


「ねぇ正人。タロットなら少しわかるから、私が占ってあげるわ」


 どうも穏やかじゃない。部屋にちょっと競い合うような雰囲気が漂い始めたが、正人は慌てて仲裁した。


「じゃあお互いに、マリアンナが麗奈の運勢をタロットで、麗奈はマリアンナの運勢を易で占ってみようよ。ね?」


「え。それじゃあ正人のことが分からないんじゃ…?」

「私はそれでいいよ。この研究会がどういうことをしてるかも、解ってもらえるだろうし」


 マリアンナも渋々同意し、おのおの占いの準備を始めた。2人の表情からは決意の色が窺えた。

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トワイライト・マジック ~魔法で夢を叶える方法~ さきはひ @sakiwai

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