第6話 カツアゲ地獄の極み
年が明けた2000年1月21日、一成は大矢らにスーパーに呼び出され、その駐車所において粘着テープをグルグル巻き付けられて暴行を受けた。
何か相当虫の居所が悪かったのか分からないが、この暴行はかなり激しく、一成は顔を蹴り上げられて鼻を骨折するほどの重傷を負い、入院を余儀なくされる。
もう暴力に遠慮がなくなり過ぎていた。
一コ上の先輩である増田に金をむしられるようになってからタガが外れてしまったようである。
極悪ぶりがすっかり加速した大矢たちは入院した一成を携帯電話で脅し、八百万円という最高額の金を脅し取った。
さらに1月27日には入院先に押しかけ、今度は五百万円だ。
誰にも助けてもらえないと絶望していた母親はただただ息子がこれ以上ひどい目に遭わないための金の工面に動く。
預金や父親の死亡保険金はほぼ枯渇していたので、実家の父から一千万円以上を用立ててもらった。
それでもこの気の毒な母子家庭にたかる悪魔たちは引きも切らない。
2月9日には増田とは別の扇台中OBが二人やってきて、百二十万円を巻き上げていったのだ。
母親はこの時、我が子を道連れに自殺しようとまで追い詰められていたし、直接やられている一成はなおさらだったが災難はまだまだ終わらない。
2月中旬、大矢たちは一成を連れて長野県白馬へスキー旅行としゃれこんだ。
もちろん費用は全額一成持ちなのは言うまでもない。
そして荷物運びやパシリも兼ねさせられていた。
だったとしても、やはり白馬の景観と雰囲気は最高だったのだろう。
一成はこの時かなりくつろいだ表情になっていたようだ。
後に見つかったこの時の集合写真に写る一成は笑顔で写真に納まっている。
もっとも顔はボコボコに腫れたままで、痛々しい笑顔ではあったが。
だが、このくつろいだ顔が大矢たちのカンに触ったようだ。
「グッチ、テメー!ナニくつろいだ顔しとんだ!!」と、旅行から帰ってくるなりからみ始めた。
大矢は中区のギャングの村上兄弟に八十万円をふんだくられたばかりか、さらなる金を要求されてテンパっていたところがあったからうっぷんを晴らしたかったに決まっている。
言いがかりなんてどうでもいいし、ご主人様である自分たちが悩んでいるのに奴隷がくつろいでいるのは大いに気に食わない。
またしてもガムテープでぐるぐる巻きに縛られ転がされた一成を複数人で蹴りまくる。
「オラ!オラ!オラ!テメーの笑っとる顔見とるとムカつくんだわ!!オルア!!」
「ごべ!!すいませ…グブッ!やめてくだ…ベっ!!!」
この理不尽な暴行は今度も手ひどく、一成はろっ骨を骨折。
またも入院する羽目になってしまった。
あれくらいやりゃ、また何百万要求してもラクショーだろう。
それより木村兄弟やべーな、カネ持ってったら持ってったでまた要求して来るだろし…、もしカネ払えなかったら…。
ああ~、どうしよう。
この時の大矢は際限なく恐喝の上前をはねようとする木村兄弟怖さでいっぱいだった。
そればかりを気にして、今回また一成を病院送りにしたことによって自分たちの悪行にピリオドが打たれ、報いを受けることになるとはまだ予想していない。
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