第13話 購入確定、効率アップ


俺は首飾りを持って昨日の装備屋を訪れた。


「よっす。どうだった?」

「ばっちりですよ。俺が思ってた通りの効果を発揮してくれた」

「でしょ?にしし」


って笑う店員だったけど、ずいっと身を乗り出してきた。


「でも注意してね。そのアイテムは敵から見えにくくなるだけだから。攻撃したりしたら、いるのはバレちゃうからね」

「はい」


「それと、歴戦のモンスターとかは第六感で居場所を察知することもあるから、過信しすぎないように」

「雑魚モンスターとのエンカウントを避けるアイテムという認識でいいんですよね?」

「うん」


どのみちそれで十分である。


俺は8万イェンを出した。


10万の20%オフだからこれでいい。


「毎度ありー」


こうしてこの首飾りは完全に俺のものになった。


正直言ってしばらく【ストロベリー】で宿泊するだけで元は取れると思う。


このアイテムのコスパは優れてると思う。


これからダンジョンに向かう予定だが……その前にやることがあったな。


「現在のランクポイントを調べてみよう」


たしか、ランクポイントの見方は……ギルドカードを見たらいいんだったな?


「ギルドカードの……っと。あったあった」



現在のランクポイント

10

必要なランクポイント

50


「あと40か。一日で10しか稼げてないってことは、4日くらいは見といた方がいいか」


先は長いが……コツコツやっていくしかないな。



ダンジョンの二階層まで戻ってきた。


今日もダンジョン内にはゴブリンがウロウロしている。


そのうちの1匹に狙いを定めて……ゆっくりと近付いていく。


(明らかに昨日とは様子が違うな)


昨日はすぐにこちらを視認していたのに……明らかに気付かなくなっている。


それでも警戒はしているようだが、俺が近くにいることにはまったく気付いていない。


ジリ。ジリ。


足音を立てないように、呼吸音も極力抑えて俺はゴブリンの背後から近付いていく。


5メートル、4メートル。


少しずつ距離が詰まっていく。


「ギィィ、ギィィ」


ゴブリンの声だけが聞こえる。


静寂の中、俺はついにゴブリンの背後を取った。


ゴブリンとの距離はほぼゼロ。

密着状態。


ナイフを抜いてゴブリンの首に突き刺した。


ザクッ!


そして、思いっきり横に引き裂いた。


「ギィィ……」


すんなりと事切れて光となって消えていく。


「一撃か」


冒険者ブックにも書いてあったがこの世界のダメージ計算はこうらしい。


自分の攻撃力-敵防御力=ダメージ


なのだが、細かい仕様もあって


弱点を攻撃した場合、×2倍。


そして、不意打ちをした場合×2倍となるらしい。


つまり、今の攻撃方法だとダメージが普通に攻撃するより4倍上がっているそうだ。


更に俺は不意打ちでボーナスダメージがつく称号も持っている。


(これなら簡単にゴブリンを乱獲することができるな)


俺は今日もゴブリンを乱獲していくことにした。


ふぅ……。


今日も3時間くらい経っただろうか?


今日もかなりの数のゴブリンを倒した、のだが。


「明らかに回転数が上がったな」


弱点攻撃ボーナスと不意打ちボーナスが乗ったからかなり楽にゴブリンを倒せるようになっていた。


「これなら階層を進んでもいいかもな」


今日はあと9時間くらいいるつもりだが……少しでも効率を上げるために先に進んでみよう。


3階層……2階層と大して変わらなかった。


そして、4階層も同じだった。


全体的にレベルは上がっていたが、それでも4倍のダメージで攻撃できる俺の相手にはなっていなかった。


そして、五階層。


今までのダンジョンとは内装が変わっていた。


無機質な壁のダンジョンだった。


(ツルツルした壁に四方を囲まれている。かなり大きなフロアだな)


その真ん中には巨大なゴブリンがいた。


「ギィィェェェェ」



名前:ゴブリン・エリート

レベル:5



「でかいな。3メートルくらいはあるか?」


まぁいい。


やる事は変わらない。


「殺そう」


俺はゴブリンに近寄っていき、背後に周るとゴブリンの膝裏を切りつけた。


「ギィィッ?!」


そのまま膝を付かせたところで首を切ろうと思ったのだが、ダメだったか。


だが……


「ギィィェェェェ!!」


さっき切りつけられた足を守るように動いている。


かなりの深手にはなっているだろう。


そこでゴブリンエリートは叫んだ。


「ギィィェェェェ!!!!!!」


俺に向かって拳を振り下ろしてくる。


【サイドステップ】を2回。


攻撃範囲外に出ることが出来た。


回避しながら攻撃を放つ。


「スラッシュ!」


エリートの腕を切り裂いた。


だが、今回は不意打ちボーナスが乗っていないせいで痛手になっていないようだ。


しかし、それも計算済みである。


(中ボスっぽいしな。簡単に倒せると思っていない)


「ギィィェェェェ!!!」


エリートの声が響いた。

その瞬間だった。


「ギェッ!」

「ゲゲッ!」


壁に空いた穴からゴブリンが出てきた。


増援の数は10を超えるか。


そいつらが一気に俺に向かってくる。


「スラッシュ!」


そいつら全員を大振りの剣で吹き飛ばした。


その瞬間だった。


「ゲッゲッゲッ!」


エリートが飛び上がって俺に向かってくる。


(雑魚を犠牲にして自分の攻撃を当てるつもりだったのか。当然、その程度のことは警戒済み)


その瞬間だった。




【ゴブリン討伐数100を超えました】

【称号を獲得しました】

【称号:ゴブリンマスター】


効果:ゴブリンの攻撃範囲が分かる




俺の視界にエリートの攻撃範囲が赤い範囲で映る。


まるでゲームで敵の攻撃範囲が赤いゾーンで表示されていた。


(なんだこれ、敵の攻撃範囲がはっきりと見える!)

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