第12話 サキュバス対策


ダンジョンを出たのは夜の10時前だった。


俺はそのまま冒険者ギルドに今日の戦利品の清算をしに行くことにした。


戦利品を全て売ってみて日給どれくいらなのかを確認したかったからだ。


「アイテムの買取をしました。お支払いはこちらになりますね」


【5500イェン】


(ダンジョンに向かったのが9時くらい。12時間前後ダンジョンで稼いでこんなものなのか)


最初の方はどこの世界もなかなか厳しいな。


俺がそう思っていたら受付嬢が話しかけてきた。


「すごいですね、イツワさん」


「なにがですか?」

「今日初めてダンジョンに入ったんですよね?」

「そうですけど」

「初めてダンジョンに入った人の日給はだいたい2000イェンですよ。2倍以上稼いでますよ」


目をぱちぱちさせてた。


どうやら驚くべきことらしいが。


「俺なんかまだまだですよ」


報酬を受け取ってギルドを出ていくことにした。


そのあと酒場に寄って食事をすることにした。


ちなみにシルキーに連れてきてもらったから知っているがこの世界の食費は割と安い。


日本なら1000円くらいのものがこっちだと300イェンくらいで食える。


ここの人達が低賃金でも生きていける理由がここにあるらしい。


ちなみに基本的に自炊なんていう文化はなくてみんなここで食べるらしい。


酒場側も究極の薄利多売を行っているらしい。


だからこんなに安く出来るそうだ。


安めの料理ばかり頼んで軽く食事をしていると、対面に人が座ってきた。


「よう、また会ったな」


顔を上げると対面に座ってきたのは赤髪の男だった。


「あー、あの時の」

「俺はグレンって言うんだ。グレンでいいぜ」

「イツワです」

「知ってるか?この酒場を出てちょっと進んだところの路地に装備屋があるんだ」

「装備屋?」

「めちゃくちゃ腕が良くてな。最初はたいへんだろうし教えてやろうと思ってな」


グレンはメモに地図を書いてくれた。


「武器はいいものを使え。防具もだ。先輩からのアドバイスな」


それからグレンは机の上に金を出した。


「1万ある。飯代はこれで払えよ。邪魔したな」


ふって笑って立ち上がったグレン。


「なんでここまでしてくれるんですか?」


「俺が冒険者になった時、先輩に同じことをされてな。駆け出しが1番大変だろ?それだけだよ」


軽く笑ってグレンは出ていった。


(この世界の人あったけーなー)


俺はありがたく【10000イェン】を拝借して酒場を出ることにした。



酒場を出ると俺はグレンに言われた装備屋に向かうことにした。


裏路地とは言えないくらいの路地だった。


そこに装備屋があった。


「にしし、らっしゃい、お客さん」


「オススメされてきたんだけど」


「おけっ。しかも異世界人だよね?表示価格から20%引いてあげるよ」


「いいんですか?」


「いいよ、いいよ。だから見てってよ」


俺は店員に店の中に上げてもらった。


ちょうど欲しいものがあったんだよなぁ。


「敵に見つかりにくくなる装備とかってありますか?」


「ちょうどよかったね。あるよ。これ。すっごいレア物」


店員はとある装備を指さした。


首飾りだった。


10万イェンと書いてある、商品名は【カゲロウの首飾り】


「たっか……」


「でも、効果はお墨付きだよ。私が言うんだから間違いない。良かったら試用してみる?」

「いいんですか?」

「いいよ。この紙に名前とか連絡先書いて」


俺は渡された紙に名前とか必要なことを書いた。


「明日まで借ります。効果が実感出来れば買いますから」


「あい。なら明日待ってるよ」



俺は昨日も使った宿屋【ストロベリー】に帰ってきた。


首飾りはつけている。


(俺の考え方が正しければこれでサキュバスに認識されないと思う)


そう思ってとりあえず試用させてもらっているが……どうだろうか?


宿屋の中に入る。


「今日もお客さんこないですねー」


カウンターで悲しんでる女の子。


俺は目の前まで移動して手を振ってみた。


しかし、気付かれない。


(本物かもなこれ)


そう思って俺は首飾りを外してみた。


「あれ?いつのまにそこにいました?」


「さっきだよ」


そう答えて首飾りをつけた。


「むむむっ……」


女の子が目をこらす。


「姿は見えないけど、音と匂いでなんとなくいるのは分かりますです。でもいるの知ってないと気付けないのです」


(姿はやはり見えない、か)


「今日も泊まりたいんだけど、案内お願いできるかな?」

「喜んで!」


ふんふんふんと鼻歌を歌いながら案内してくれる女の子。

昨日と同じ部屋だった。


「今日も私は必要ですかにゃ?」

「分からない。とりあえず温泉に向かってみるよ」


俺はそう言って女の子を残して温泉に向かっていくことにした。


脱衣場の中に入るとやはり温泉の方から声が聞こえる。


「はぁー、男はいないのー?」

「この宿はサキュバスがいるっていう悪評広まりすぎててもう無理かもねー」


なんて会話が聞こえてくる。


俺は服を脱がずに温泉へ続く扉を開けた。


温泉の近くまで移動する。


サキュバス6人くらいの姿が見えた。


だが、誰1人俺に気付かない。


(本物の首飾りだな。これ)


ほんとに気付かれてない。


そのことを確認した俺は脱衣場で服を脱いでから温泉に入ることにした。


大量のサキュバスと一緒の温泉だ。


「どこかに男いないのー?」

「もう、長い間吸ってないもんねー」

「はぁぁ、場所変える?宿の」

「無理無理ー。このボロ宿以外警備厳しいから追い出されるよー」


誰ひとり俺の存在に気付かない。




【称号を獲得しました】

【称号:見えぬ者】


効果:

不意打ちの威力をアップする。





名前:五条 イツワ

レベル:4

次回レベルアップまで15EXP


攻撃力:4

防御力:4


スキル:剣術E 体術E


称号:剣士見習い、勇気ある宿泊者、見えぬ者


状態:なし



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