第11話 初めての戦闘


ダンジョンの中に入る。


最初に目に入ったのは……


​───────光だった。


(あれ、俺ダンジョンの中に入ったんだよな?なんで光が?)


空を見上げた。


明らかに太陽の光がそこにあった。


「どうなってるんだこれは」


俺がボヤいてると後ろから声が聞こえた。


「そんなところで何突っ立ってんだよ。進んだ、進んだ」


俺の横に立ったのは赤髪の男だった。


「ダンジョンは初めてか?まぁ、肩の力抜けよ」


ポンと肩に手を置いてきた男。


「はい。ダンジョンは初めてで、なんで建造物の中に太陽が?」

「知らねー。そんなもん誰も知らねぇよ。だから細かいことは気にすんな」


かかかっと笑った男。


「このダンジョンじゃ、なにが起きても不思議じゃねぇよ。まぁそこんとこ念頭に置いて進むこったな」


ふははははと笑って男は歩いていった。


そしてしばらく歩いたところで


「転移。34階層へ」


男が言った瞬間、消えた。


(なるほど。あれがドックタグの力か)


かなり便利そうなアイテムだ。


まぁそれはそうと。


「さっさと動こう。時間は有限だ」


ここはダンジョンの一階層。


無機質なダンジョン、ってわけではなく、草木が生えていたり、川があったり、そんな見た目のダンジョンだった。


「ほんとにすごいな、このダンジョン。太陽があって、こんなものまであるなんてな」


っと、感動するのはここまでにしておこう。


(金稼がないとな)


この階層はゲームだとチュートリアルに使われるような場所だろう。


おそらくだが難易度は低いと思う。


よって、入手できるアイテムなんかもほとんど価値がないものだと思う。


そんなところのものを売る、となると。数を集めて多く売るしかないよな。


しばらく道なりに歩いてると道端になにかが落ちていることに気付いた。


「これは」


しゃがんで回収してみた。


【薬草(小)を入手しました】


「薬草か。これはなかなかいい値段が付きそうだが……」


俺は冒険者ブックを取り出してみた。


この本にはある程度のアイテムの情報が載っている。


そして、アイテムを売った時の相場も書いてあるのだが……


「は?売値10イェン……?」


ぱちぱち。


瞬きした。


「いくらなんでも安すぎないか?」


俺がそうしてると後ろから声が聞こえてきた。


「ダンジョーン」


子供の声だった。


10歳くらいの女の子だった。


「10イェーン。20イェーン」


ブチッ。

ブチッ。


薬草を採取していた。


(俺、今こんな子供でも来れる場所にいるのか?!)


そりゃそうだ。

こんな小さな子供でも集められるようなアイテムを集めても売値が着くわけが無いよな。


ギリッ。

歯を食いしばって俺は先に進むことにした。


(こんなもので生計は立てられない。もっと、先に進むしかない)


先に進みながら俺は冒険者ブックをめくっていた。


「一階層は敵が出ないのか。なるほど。それなら子供でも安全に入れるよな」


敵が出るのは2階層かららしい。


とりあえず俺は2階層を目指すことにした。



「一時間かよ……無駄に広いな」


俺は2階層に続く階段の前まで来ていた。


ここまで1時間だ。


このダンジョン無駄にデカくて移動するのに馬鹿みたいに時間がかかる。


「まぁいい。上がってしまおう」


俺は階段を上がっていくことにした。


2階に上がるとさっきと同じような景色が広がっている。


しかし、決定的に違うところがあった。


ボヨンボヨン。


青い物体が跳ねていた。


「あれが、スライムか」


剣を取りだして構える。


ジリジリと近寄っていく。


やがてスライムのステータスが見えるようになってきた。



名前:スライム

レベル:1

攻撃力:1

防御力:1



(弱そうだな)


そう思っていたら、ボイーンとこっちに向かってスライムが跳ねてきた。


(この行動、【たいあたり】か)


俺はスライムに向けて剣を振った。


ズバッ!


シュワァ。


スライムは光となって消えていった。


そして、ドロップとして宝箱が落ちた。


【スライムのかけら×1を入手しました】

【経験値×1を入手しました】


冒険者ブックで確認する。


(スライムのかけらの売値は15イェンか。タイパを考えたら微妙だな)


先に進もう。


先に進みながら色々とアイテムを回収してみたが、薬草(小)しか入手できなかった。


どうやらこの階層はそういう場所らしい。


そして、3階層にたどり着いた。


次に俺を出迎えたのは……


「ゴブリン、か」


1度戦った相手ではあるが……武器を持っている。


更には防具まで身につけている。


「周りも警戒しているのか。やっかいだな」


キョロキョロと周りを見て俺を警戒しているようだった。


(真正面からぶつかるしかないか)


俺は堂々と歩いてゴブリンに近寄っていった。


「ギィィぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


ゴブリンが飛びかかってきた。


俺は【サイドステップ】で回避した。


(1回のステップじゃ避けきれない。前みたいにもういっかい、出るか?)


【サイドステップ】


(やっぱり出た!これはシルキーに教えてもらった【呼吸法】のおかげだな)


ドォン!


俺の立っていた場所を殴りつけたゴブリン。


背中がガラ空きだ。


「もらった!」


ザン!


「ぎぃぃぃぃぃ!!!!」


一撃で倒しきれなかった。


「硬いなこいつ」


「ぎぃぃぃぃぃ!!!!」


同じように殴りかかってくるゴブリン。


しかし、今の俺はスタミナ消費量が半減されている。


サイドステップ2回で問題なくかわして同じようにゴブリンを切りつけた。


「ぎぃ……」


「やっと倒れたか」


ゴブリンが光となって消えた。


【ゴブリンの首飾り×1を入手しました】

【経験値を2入手しました】


「売値は……20イェンか」


Eランク冒険者。


話には聞いていたけどやはり生活は厳しいようだ。


俺はそれからゴブリンを倒しまくることにした。


みっちり長時間かけて。


俺は人の2倍3倍努力しなきゃいけないんだから。



【ゴブリン討伐数10を突破しました】

【称号を獲得しました】

【称号:ゴブリンハンター】


効果:ゴブリンに与えるダメージアップ


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る