第10話 初めてのレベルアップ


起きた。


横では宿屋の女の子が寝ていた。


状況だけ見ればあれな状況ではあるが、神に誓おう。

俺は何もしていない。


部屋の中を見ると昨日女の子が洗濯してくれた俺の服が干されていた。


ベッドから出ると服に触ってみた。


(ばっちり乾いてるな)


干されていた服を取ると着替えた。


それから女の子を起こすことにした。


「朝だよ」


肩を揺すると


「むにゃむにゃ」


起きてきた。


「おはようございますなのです。ふぁ〜」


女の子は俺を見てきた。


「大丈夫でしたか?サキュバスの被害は」

「今のところ不調はないけど」


俺はそう言いながら水晶に手を当てた。


最早慣れたものである。


そして、水晶の中を覗き込む。


【レベルが上がりました!】


水晶の中にはレベルアップの通知。


「レベルアップ……?」


あー、そうか。


思い出した。

昨日称号を獲得して……それで寝てるだけで経験値が獲得できるようになったんだっけ?


それでレベルアップしたんだろう。


【レベル1からレベル2に上昇しました】



名前:五条 イツワ

レベル:2

次回レベルアップまで10EXP


攻撃力:2

防御力:2


スキル:剣術E 体術E


称号:剣士見習い、勇気ある宿泊者


状態:なし



(状態異常の【だるい】はなしか。大丈夫だ。サキュバスには襲われてない)


女の子に目をやった。


「ありがとう。お陰様でサキュバスの被害には会ってないや」

「それはよかったなのです」


にっこり笑ってた女の子だった。


準備を済ませて俺は宿屋を出ることにしたのだが、最後に。


「しばらく通わせてもらおうと思うけど今日みたいにサキュバス対策してもらうことはできる?」


聞いてみると女の子は顔をパァァァァァっと明るくした。


「大丈夫なのです!いつでもお待ちしておりますなのです!」


俺はその言葉を背に受けて冒険者ギルドの方に向かっていく。


特に事件もなく平和なままギルドまでやってこれた。


受付カウンターの方に向かっていく。


昨日の受付嬢が俺の対応をしてくれることになった。


「おはようございます。イツワさん」

「昨日の話の続きをお願いできますか?」


コクンと頷いて話し始めた。


「まず、冒険者にはランクと呼ばれるものが存在します」


「たぶん、EからSランクって感じですよね?」


「はい。その通りです」


その辺はよくあるような異世界ものと同じらしい。


「なお、Eランクの方がダンジョンに挑む時は10階層まで、と決まりがあります。決まりを超えて攻略した場合事故があっても、ギルドではいっさいの責任を負いません」


「違反して死亡しても完全な自己責任ってわけですよね?」


重く頷いた。


「基本的にギルドの言うことを守っていただければ死亡することはありませんので、そこはご安心ください」


「分かりました。ちなみにランクのあげ方は?」


「ランクポイントと呼ばれるポイントを集めてもらいます。一定以上集めるとランクを上げるための試験が解放されます」


「ランクポイントの集め方は?」


「ダンジョン内での行動で集めることができます。モンスターを倒す、アイテムを集めるなどです」


「ポイントはあとでギルドで精算する感じですか?」


「いえ、ギルドカードが勝手に記憶しています。」


なるほど。


だいたい理解した。


「とりあえずダンジョンに向かってみましょうか」


「そうですね。ダンジョンにはたくさんの人がいますし、あ、そうそう。こちらをお渡しします」


【冒険者ノート】


「初心者の方必見!な内容が書いてあります。困ったら見てくださいね」


ニコッと笑って送り出してくれる受付嬢だった。



俺はダンジョン前までやってきた。


ダンジョン名【天空の螺旋】。


この世界の人々はここに一攫千金の夢を見て挑んでいく。

稼げるか稼げないかは己次第。


俺も今日からそんなダンジョンの住民の1人になる。


ゴクリ。


(緊張するな)


初めての職場。


初めてのダンジョン攻略。


緊張するなという方が難しい。


だが、覚悟を決めて俺はダンジョン入りの列に並んだ。


ダンジョンに入る前には入念なチェックが行われる。

本当にこの人間はダンジョンに入っていいのか、ダメなのか、というチェックらしい。


(検査、弾かれないといいけどな)


そう思って見ていたら前の方から声が聞こえた。


「お前はだめだ。体調が優れていないように見える」

「ちっ、昨日酒飲みすぎたからな」


そんな会話。


見ていると男がダンジョンへの立ち入りを拒否されたらしく渋々帰っていってた。


(体調も考慮されるんだな。検査ってのはかなり厳しいようだ)


そして……俺の番になった。


検査員が俺の顔を見てきた。


「異世界人か。ギルドカードを」


提示を求められたので見せた。


「ダンジョンに来るのは初めてなようだな。簡単な説明を行おう」


検査員は簡単な説明をしてくれた。


それから最後に重要そうなことを口にする。


「ギルドからドックタグは受けとったな?」

「はい」

「ドックタグは特別な魔法道具だ。決して無くすな」

「特別な魔法道具?」


「あぁ。ドックタグには【転移魔法】が使える魔法陣が刻まれている。これからダンジョン内で転移したくなったらそれを使え」


ギルド職員の説明によると、ドックタグを握り『転移』と口にするだけで転移することができるらしい。


転移できる場所は既に攻略済みの場所だけらしいけど。

後はダンジョンの内側から外側にも一瞬で転移できるらしいから危険になったらそれで離脱するといいらしい。




ドックタグについていろいろ考えていると


追加の説明をしてくれた。


「ドックタグを3枚渡されたと思うが、他2枚の説明はこっちだ」



【不滅の証】

・戦闘不能になるダメージを受けても一度だけダメージを肩代わりする。



【全知の証】

・装備しているだけで敵のステータスや自分の簡易的な成長ログなどを確認することが出来る。

リアルタイムで自分のレベルアップやスキルのランクアップを視界で確認可能。




「冒険者ノートというものも受け取ったと思うが、時間があるときに目を通しておけ。いろいろと役に立つことが書いてある」


「はい」


(まさに至れり尽くせりって感じか、これなら意外となんとかなりそうだな)


俺がそう思ってると職員は言った。


「では、健闘を祈るぞ。異世界人。私にお前の活躍を見せてくれ」


検査の方も無事に通ったらしい。


これから俺の初めてのダンジョン攻略が始まるわけだ。

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