第7話テスト終了


「イッツン、見て。ゴブリンが三体密集してる」

「離れそうにないよな、あれは」


俺たちは最後の3匹を見つけたのだが、最後のやつらは全員で固まっていて離れる様子がない。


いろいろアイテムや落ちているもので陽動をしてみたりしたが、警戒心が強いのか離れる様子が見えない。


「シルキー。俺が1匹倒すまでに2匹惹き付けられるか?」


正直言って自信はないが、こうするしかないと思う。


「うん。なんとかしてみるよ」


「じゃ、よろしく頼むぞっ!」


俺は茂みから出ていき一匹に斬りかかった。


「ギィィ!!!」


他の2匹と分断するように、吹き飛ばした。


これで直ぐには救援にはこれない。


「ギギャッ!」


「ギゲッ!」


残りのゴブリンも黙っていない。

だが、それも計算のうちだ。


「やぁっ!」


シルキーがナイフを持って2匹を俺たちに近付けないようにしてくれていた。


その僅かな時間を使い。


「シルキー、1匹仕留めた。後はそいつらだけだ」

「さすがっ!イッツン!」


その後俺たちは残ったゴブリンをじっくり慎重に倒していった。



そして集めた討伐証明を持って俺はオッカマの元に戻った。


「どうだった?初めてのモンスターとの戦闘は」


答えたのはシルキーだった。


「聞いてよオッカマン。イッツンが強すぎて戦いじゃなくて殺戮だったよ」


「え?そうなの?イツワちゃん」


「あいつら全員周囲を警戒していなかった。だから簡単に奇襲することができたよ」


完全に不意打ちすることが出来た。


そして全てのゴブリンを一撃必殺。


恐らくだが俺がここに来てからの練習の成果が出たのだろう。


「じゃあ、今から試験結果を採点してあとで連絡するわね」


オッカマは訓練所の方に歩いていった。


シルキーが俺の腕を引っ張ってくる。


「イッツン!イッツン!打ち上げしようよ!打ち上げ!」


「意外だな。暗殺者も打ち上げするんだな」


「するよー。打ち上げくらい。さぁ、さぁ、早く早くー」


ぐいぐい俺の腕を引っ張ってくる。


俺は少し苦笑いしてからそれについて行くのだった。


訓練所の部屋に戻って俺は出ていくための準備をしていた。


数日とはいえお世話になった部屋。


来たときのような綺麗な状態に戻す。


「よし、これでいいかな」


散らかっているものもない。


シャワー室も綺麗にした。


ベッドももちろん髪の毛1本残っていない。


そうして俺は部屋を出た。


今からシルキーと打ち上げに向かうためだ。


部屋を出るとシルキーがニコッと笑って待ってた。


「酒場行こ!奢るから!むっふっふ!今日のあたしは上機嫌だから」


いつでも上機嫌だと思うけど、俺は頷いてシルキーと一緒に酒場に行くことにした。


酒場で食事を済ませた。


色々飲み食いさせてもらって頭が上がらない。


訓練所に帰るまでの道でシルキーはこの街の真ん中にあるめちゃくちゃでかい建造物に目をやった。


天まで届くのではないか?と思わせるくらい背の高い建造物。


「あれが天空の螺旋っていうダンジョン。夢なんだ、冒険者になって登っていくの」


そう言ってからシルキーは俺の顔を見た。


「イッツンとなら叶えられそうな願いだよ」


(うん?それはちょっと、どうだろう?でも夢は壊さないであげようか)


「それは良かったじゃないか」


「これからもよろしくねイッツン」


ニコって微笑んできたシルキー。


俺はそんなシルキーと共に訓練所に戻った。


訓練所に戻るとオッカマに呼び出された。


「えぇ、では試験の結果を発表するわね」


コホン。


咳払いするオッカマ。


シルキーは胸を張ってた。


「むっふっふ」


俺は少しの緊張感を覚えてた。


(大丈夫だと思うけど、俺だからな……)


そんな感情が顔に出たのだろうか。


「イツワちゃん。自分を信じてればいいのよ」

「そうだよ。イッツン。イッツンが落ちてるわけないって」


(シルキーは見え見えのフラグ立てるの好きなのかな?)


オッカマは慎重に息を吸って口を開く。


「では、合格者発表よ」


緊張の瞬間。


「合格者、五条 イツワ」


その名前が聞こえて俺は胸をなでおろした。


(良かった)


「以上よ」


「へっ?あたしは?忘れてない?!オッカマン?!」


オッカマは呆れ顔でシルキーを見た。


「あなたは遅刻した時点で落ちてたわよ、シルキーちゃん」

「んなっ?!」

「また試験受けてちょーだい」

「見逃してよーお姉さーん」

「だーめ」


オッカマはそれから俺に封筒を渡してきた。


「はい。これはギルドへの推薦状。これを持っていけばあなたも晴れて冒険者ってことよ」


「ありがとうございます。お世話になりました」


そう言って歩き出そうとしたときシルキーが話しかけてきた。


「イッツン。私も冒険者になれたら仲間にしてくれる?」


「なれたらね」


「うん!待ってて!絶対になるから!」


「まってるよ」


俺はそう言い残して訓練所を後にすることにした。



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