第7話テスト終了
「イッツン、見て。ゴブリンが三体密集してる」
「離れそうにないよな、あれは」
俺たちは最後の3匹を見つけたのだが、最後のやつらは全員で固まっていて離れる様子がない。
いろいろアイテムや落ちているもので陽動をしてみたりしたが、警戒心が強いのか離れる様子が見えない。
「シルキー。俺が1匹倒すまでに2匹惹き付けられるか?」
正直言って自信はないが、こうするしかないと思う。
「うん。なんとかしてみるよ」
「じゃ、よろしく頼むぞっ!」
俺は茂みから出ていき一匹に斬りかかった。
「ギィィ!!!」
他の2匹と分断するように、吹き飛ばした。
これで直ぐには救援にはこれない。
「ギギャッ!」
「ギゲッ!」
残りのゴブリンも黙っていない。
だが、それも計算のうちだ。
「やぁっ!」
シルキーがナイフを持って2匹を俺たちに近付けないようにしてくれていた。
その僅かな時間を使い。
「シルキー、1匹仕留めた。後はそいつらだけだ」
「さすがっ!イッツン!」
その後俺たちは残ったゴブリンをじっくり慎重に倒していった。
◇
そして集めた討伐証明を持って俺はオッカマの元に戻った。
「どうだった?初めてのモンスターとの戦闘は」
答えたのはシルキーだった。
「聞いてよオッカマン。イッツンが強すぎて戦いじゃなくて殺戮だったよ」
「え?そうなの?イツワちゃん」
「あいつら全員周囲を警戒していなかった。だから簡単に奇襲することができたよ」
完全に不意打ちすることが出来た。
そして全てのゴブリンを一撃必殺。
恐らくだが俺がここに来てからの練習の成果が出たのだろう。
「じゃあ、今から試験結果を採点してあとで連絡するわね」
オッカマは訓練所の方に歩いていった。
シルキーが俺の腕を引っ張ってくる。
「イッツン!イッツン!打ち上げしようよ!打ち上げ!」
「意外だな。暗殺者も打ち上げするんだな」
「するよー。打ち上げくらい。さぁ、さぁ、早く早くー」
ぐいぐい俺の腕を引っ張ってくる。
俺は少し苦笑いしてからそれについて行くのだった。
訓練所の部屋に戻って俺は出ていくための準備をしていた。
数日とはいえお世話になった部屋。
来たときのような綺麗な状態に戻す。
「よし、これでいいかな」
散らかっているものもない。
シャワー室も綺麗にした。
ベッドももちろん髪の毛1本残っていない。
そうして俺は部屋を出た。
今からシルキーと打ち上げに向かうためだ。
部屋を出るとシルキーがニコッと笑って待ってた。
「酒場行こ!奢るから!むっふっふ!今日のあたしは上機嫌だから」
いつでも上機嫌だと思うけど、俺は頷いてシルキーと一緒に酒場に行くことにした。
酒場で食事を済ませた。
色々飲み食いさせてもらって頭が上がらない。
訓練所に帰るまでの道でシルキーはこの街の真ん中にあるめちゃくちゃでかい建造物に目をやった。
天まで届くのではないか?と思わせるくらい背の高い建造物。
「あれが天空の螺旋っていうダンジョン。夢なんだ、冒険者になって登っていくの」
そう言ってからシルキーは俺の顔を見た。
「イッツンとなら叶えられそうな願いだよ」
(うん?それはちょっと、どうだろう?でも夢は壊さないであげようか)
「それは良かったじゃないか」
「これからもよろしくねイッツン」
ニコって微笑んできたシルキー。
俺はそんなシルキーと共に訓練所に戻った。
訓練所に戻るとオッカマに呼び出された。
「えぇ、では試験の結果を発表するわね」
コホン。
咳払いするオッカマ。
シルキーは胸を張ってた。
「むっふっふ」
俺は少しの緊張感を覚えてた。
(大丈夫だと思うけど、俺だからな……)
そんな感情が顔に出たのだろうか。
「イツワちゃん。自分を信じてればいいのよ」
「そうだよ。イッツン。イッツンが落ちてるわけないって」
(シルキーは見え見えのフラグ立てるの好きなのかな?)
オッカマは慎重に息を吸って口を開く。
「では、合格者発表よ」
緊張の瞬間。
「合格者、五条 イツワ」
その名前が聞こえて俺は胸をなでおろした。
(良かった)
「以上よ」
「へっ?あたしは?忘れてない?!オッカマン?!」
オッカマは呆れ顔でシルキーを見た。
「あなたは遅刻した時点で落ちてたわよ、シルキーちゃん」
「んなっ?!」
「また試験受けてちょーだい」
「見逃してよーお姉さーん」
「だーめ」
オッカマはそれから俺に封筒を渡してきた。
「はい。これはギルドへの推薦状。これを持っていけばあなたも晴れて冒険者ってことよ」
「ありがとうございます。お世話になりました」
そう言って歩き出そうとしたときシルキーが話しかけてきた。
「イッツン。私も冒険者になれたら仲間にしてくれる?」
「なれたらね」
「うん!待ってて!絶対になるから!」
「まってるよ」
俺はそう言い残して訓練所を後にすることにした。
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