第2章 暗黒欲望の宮殿

 0時15分、空間のゴール地点に着いた。目前には怪しい宮殿がある。


「もしかして、この建物って……上級アジトの後ろ側にあったような……」

 コバルトは宮殿を見る。


「それが、この宮殿だと思う。屋根の部分が見た時と一緒だよ」

 水莱は屋根を見上げる。


 怪しい宮殿は、あの空間と同じ青紫色に染まっている。建物の形は世界遺産のタージマハルのような形をしている。

 建物の入り口に近づくと、白金の板に次のような文字が刻まれていた。


『暗黒欲望の宮殿


 王:ケント・シャトル

 王妃:マーリン・シャトル

 世子セジャ:バリス・ナイト


 発電部

 部長:シャイン・テイン

 副部長:ミーアン・グルー


 調理部

 部長:アンニー・ソール

 副部長:キャシー・レンダー


 警察部

 部長:ユルマン・スレンダー

 副部長:ガーベル・ネイラン


 清掃部

 部長:リマ・シーアン

 副部長:ジェーン・バンガン』


「暗黒欲望の宮殿……?何だ、その意味不明な名前」

 憧君は腕を組んで首をかしげる。


「しかも、まるっきり個人情報載せてるし」

 キャリンは目を細めて刻まれている文字を見る。


 水莱は一つ一つの文字を指で追うと“暗黒欲望”と“ケント・シャトル”の文字が刻まれていないのがわかった。


「ちょっと、この2つ、何か変だよ」

 水莱は変な感触がする部分を爪で削る。


「杉浦、そんなことすると白金が傷むぞ」

 貴弘は指摘するが、水莱は作業を止めない。


 じっとしていると、削った部分から新しい文字が現れた。


 紗理は浮かんできた文字を読む。

「“神の宮殿”に“王:ホルン・ナイト”……宮殿名と王様が全然違う!」


 それを聞いたEARTH・REVOLUTIONとアクア団はお互い顔を見合わせる。


「と言うことは、シャトルが本来の王様を牢屋か何かに入れているわけだな」

 侑馬は腰に手を当てる。


「何だと!?ケント様がこの宮殿の王様をやっているだと……」

 ルンは右手を強く握りしめる。


「オレはアジト以外には出かけないから、お前らもアジトとバイト先以外は出かけるな!と言っておきながら出かけているとか、俺らは何だと思っているんだ!」

 ジョニーはしかめっ面をする。


「絶対許さない!」

 バランも怒りが爆発する。


「まあまあ、とりあえず、宮殿の中に入ろう」

 コバルトのあとについて行って、宮殿の内部に入る。不思議なことは、門番が誰もいないことだ。



 0時40分、一触即発状態のアクア団3名と次こそは懲らしめてやると思っているEARTH・REVOLUTIONは本堂にお邪魔して王室に向かうが、これも珍しく女官様や内官様など誰一人歩いていない。


「この宮殿、本当に変だね」

 亜依は辺りを見渡す。


 壁も床も何もかもが薄い青紫色に塗られている。



 不思議に思いながら王室に到着した。


 ケントがどんな反応をするのかとEARTH・REVOLUTIONは思って、先に亜依、コバルト、水莱が入って、後に残りの9人が入る。水莱の合図でアクア団の3名が入る、という作戦を立てた。


 そういうことで、最初にその3人が入り、残りの9人が入る。


「お前ら、オレの居場所がよくわかったな」

 ケントは高級な衣装を着ている。


「お前の部屋、門番さん、女官様や内官様も通路を通っていなかったのは、貴様が命じたからか?」

 亜依は偉そうな口調で聞く。


「オレはこの宮殿の王だ。礼儀をわきまえろ!」

「は?偽の王に敬語と言うものは必要ない!」

 貴弘は夜中であるにもかかわらず怒鳴る。


「白金の看板の文字が刻まれていなかった部分が2か所あったから削ったんだよ。しかも、貴様と王妃様は兄と妹の関係。世子セジャ様は貴様の息子ではなく“甥っ子”だろ!?本当の王様を牢屋か何かに閉じ込めるとかどういうことだ?!しかも、地球や宮殿を貴様のものにするとか“人間失格”だ!」

 水莱は王室に向かう途中にレーダーで調べたことをはっきり言う。


 ケントは鼻で笑った。その行為を見た水莱は王室の入り口付近で待機している3名をこっちに来るように合図する。


 アクア団の3人が入室するとケントの表情が変わった。


「おい、何でお前らがここにいる?」

「と言うより、あたしたちはケント様を捜していたのです、食堂が停電したので。まさか、掟を破るとは思いもしませんでした」

 ルンは眉をひそめる。


「そうですよ!アジト以外に出かけていたとか、俺たちを裏切ったと言うのですか!?」

 バランは目を細めて腕を組む。


「ケント様のために一所懸命バイトをしていたのに、その恩も知らず……そんなケント様だったら、アクア団に入団した俺が馬鹿でした!」

 ジョニーも怒っている。


 ケントは体を震わせながら席を立つ。


「でも、お前たちも今までこれ以上に悪いことをしているんだよ」

 ブルーンはアクア団の3人に言う。


 その3人は戸惑ってから頷いて

「あたしたちが責任を持って地球を元の状態に戻す」

 と口にした。


 ルンは本当に悪いことをしたと今になって、やっと悟った。


「何だと!オレらの今までの努力を白紙にさせる気か!?」

 ケントはキレる。


 少し時間をおいてから

「と言うわけだ!私たちは貴様を見つけたから、お約束通り”決闘”をさせてもらうぞ」

 と水莱は背中にある弓を取って構える。


「そうだったな」

 ケントは決闘をするために動きやすい服装に着替えに行った。

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