最終部 自由の朝到来!

第1章 ケントの行方

 その後、地下8階の広場にコバルト、水莱、亜依が闘った下っ端と幹部がやって来た。

 当然ながら、EARTH・REVOLUTIONは警戒する。


「お前ら、ケント様と会ったんだろ。どこにいる?」

 バランは偉そうに言う。


「知らん。だからこれから捜す」

 憧君は立ち上がる。


「どういうことだ?」

 ルンは憧君の言葉に反応する。


「会ったと言われたら、一応会ったよ。でも、それは“プログラミング・ケント”だったの」

 キャリンは緑の目をルンに向ける。


「プログラミング・ケントだと……嘘をつくな!」

 バランの目つきはさらに険しくなる。


「タシカニ、アッタノハ“プログラミングプログラミング・ケント”デシタ」

 決闘時、水莱が造ったSKYはガシャンガシャンと音を立てて立ち上がる。


「アノコガタロボットノ、イウトオリデス」

 バランが造った小型ロボはSKYを指す。


「何だと!?俺らはケント様に大事な用事を伝えなければならないのに――」

 ジョニーは超重症を負った左腕に包帯を巻く。


「大事な用事って一体何なんだよ?!」

 貴弘は何か企んでいるだろうなと注意を払う。


「3階にある食堂が停電したからケント様に伝えに来た。魔法を使っても、ブレーカーをいじってもダメだった」

 ルンは青の魔法の杖をペン回しのようにして遊ぶ。


「それは大変(?)だなあ」


 政は腕を組む。


 水莱は疑問に思って政の耳元で

「おいおい“大変だなあ”って同情してどうするのよ」

 とささやく。


「落ち着けって。僕らが捜している本物のシャトルが見つかるかもしれないんだぞ」

「ああ、なるほどね」

 水莱は政の言った意味を納得して

「じゃあ、捜そっか」

 と階段に向かう。


 EARTH・REVOLUTIONとアクア団の3名は一緒に階段を登る。



 23時、彼らは階段の隣に設置されているアクリルの水槽の中にいる魚たちを眺めていると、いつの間にか1階にいた。

 部屋中をあちこち探し回ってもケントは現れない。


 諦めて2階に行っても彼はいない。


 停電となった3階の食堂に着く。天井に青色の電球がたくさん設置されている。

 そこでルンはスイッチを点けようとしたが、電球は無反応だ。


「球が切れていないか確認してきて」

 ルンはバランとジョニーに命じる。


「了解」

 2人はそう言って球を確認する。


 EARTH・REVOLUTIONも球を確認する。


 栞菜はレーダーからソケット、銅線、アルカリマンガン電池を用意してもらい、一つ一つ調べると、電球は青色に光る。

 ケイトは内側が青色に塗られている電球を取り外すと、フィラメントは何一つ切れていないとわかる。



 そうしているうちに20分が経った。


「私が調べた中ではフィラメントは切れていなかった」

 亜依は天井にある電球を眺める。


 EARTH・REVOLUTIONもアクア団の下っ端も亜依と同じ結果であることが判明した。


「やっぱり停電か……」

 ルンは困った顔をして、ベルトにセットされているトランシーバーを口元に近づけて会話をする。


「こちらルンです。ケント様はどこにいますか?」

「こちら下っ端のミサです。只今ケント様はお留守です」

「わかった、了解」

 ルンはトランシーバーを元の位置に片付ける。


「あ……アイツが留守とか……」

 侑馬は何か考え事をする。


「何故最初からトランシーバーを使わなかったん?」

 憧君はルンに聞く。


「トランシーバーを使うと、ケント様に怒られるからだよ。オレを捜す時は自分で探せ、基本は上級アジトにいるから。って」

 ルンはトランシーバーを見つめる。


「ケント様が夜に出かけるなんて珍しい」

 ジョニーは右手の親指と人差し指で顎の下を支える。


「もうこの時間だったら何があっても戻って来ているはずなのに……」

 バランは腕時計を見る。もうすぐ日付が変わる時間だ。


「おかしい!ボスの部屋に行こう!」

 ルンはケントの部屋にダッシュで向かう。


「待ってください、そんなことをしても大丈夫なんですか?」

 バランはルンを追いかける。


 EARTH・REVOLUTIONは黙ってルンのあとを追う。



 最上階、すなわち4階に着く。もうすでに8月8日の0時になった。


「君たち、ここがボスの部屋。本当は入ってはいけない所だ」

 ルンは“BOSS ONLY”と書かれた部屋のドアノブをひねると……開いた。


 本来は閉まっているはずだが、どうやら鍵をかけるのを忘れていたようだ。話によると、ケントの部屋には入ったことがないそうだ。

 恐る恐る足を踏み入れると、普通の事務所のような机が設置されている。反対側に青紫色のベッドがあるがケントの姿は無い。本当に外出していることがわかる。


 亜依は偶然机がある側を向くと、変な空間があることに気付く。


「あそこは……」

 亜依の言葉に紗理が反応すると

「あっ、本当だ!」

 とわざと大きな声で叫んだ。


 室内にいる人は全員変な空間の方に向く。青紫色の怪しげな空間がある。


「何、あの空間?」

 ケイトは落ち着いた声で空間の中に入り込む。


「ちょっとケイト、待って!」

 ブルーンは急いでケイトを捕まえに行こうとしたが、彼女は先に空間の中に入ってしまった。


 室内に残された人は皆、慌てて青紫色の空間の中に入った。

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