第2章 剣戟対決

 15時半、亜依たちは次の決闘の部屋に着いた。どうやら、ここはトレーニングルームみたいだ。

 その部屋の向かい側には、武器と防具を装備している下っ端、ジョニー・ジャラが立っている。


「2戦目か……今度は誰が行く?」

 水莱はコバルトと亜依の目を見る。


「相手が右手にしているのは剣だから……亜依しかいないんじゃない?」

 コバルトは亜依の様子をちらっと見る。


「そんな無茶な。亜依の高熱はまだ治ってないよ」

「私が手にしているのは杖。もし私がジャラと勝負したら負けちゃうよ」

「そうかもしれないけど……」

 首を傾げた水莱を見て、コバルトは黙って緑の杖を亜依に向け、治癒の魔法をぶつぶつ唱えた。


 ライトグリーンの光に包まれた亜依は、次第に血色が戻り、すっかり元気になった。


「マホウノチカラハ、イダイダネ」

 SKYは初めてスピーカー部分から声を発した。


「ああ、本当にすごいよね」

 水莱はSKYの方に視線を下ろす。


「亜依、大丈夫やんな、ジャラと戦える?」

 コバルトは杖の位置を元に戻す。


「うん。アイツと戦えるのは私しかいないし……」

 亜依はそう言ってジャラと戦う姿勢になった。



「第2戦目は俺と“剣戟対決”で5分勝負だ。傷が深かったり、途中でGIVE UPした人が負けだ、良いな」

 ジョニーは青く鋭い剣を亜依に指す。


「ま、男女差に不利はあるけど、そこはやるしかないね」

 亜依は伝説の勇者からもらった剣を鞘から取り出して右肩に担ぐ。



 第2戦目、福田 亜依VSジョニー・ジャラ。


 たったの5分なのか、長い5分なのかはよくわからないが、相手はTHE STRONG ENEMYだ。亜依はジョニーとの勝負に勝てるのだろうか?


 まずはお互い睨み合っている。そこから先に手を出したのは、ジョニーだ。

 ジョニーはムキムキの腕の筋肉を見せながら鋭い剣で亜依の首を狙う。


 亜依は黄色の盾で攻撃を必死でガードする。

 確かに手応えはあったが盾があまりにも頑丈なので、亜依はダメージを受けることは一切なかった。


 反撃TIMEで、亜依は赤色の剣に大きな炎の渦をまとう。炎の渦はさらに大きくなり、亜依の全身を守るくらいの大きさになると、剣の先をジョニーの目に向けて炎の渦を発射した。


「流石勇者から頂いた剣だよね」

 トレーニングルームの角から座って見ている水莱はコバルトに話しかけた。


「そうだね。あとは命中するかどうかやな」

 炎の渦がジョニーの方に向かってくると、相手は驚いて慌ててステンレス製の盾で守る。


 ステンレス製の盾VS炎の渦、どっちが勝つのか?


 渦は火が消えることなく攻める。盾は炎の温度に負けず、しっかりジョニーを守っている。


 いっけー!と叫んだ亜依はナイアガラの滝で相手をより苦しませようとする。


 炎の渦にナイアガラが加わったので、火の攻撃はさらに強力になった。そこまで来ると、流石に盾も火の攻撃に耐えられず、最終的には盾はステンレスの融解液となり、ジョニーの左腕は火傷を負った。


 相手は火傷でひるんでいる中、亜依は止めの一発を放つ。

 剣先から現れた火山弾は相手の患部を狙って前進する。


 けがを負っていない右手で剣を振ろうとしたが、その時はもう手遅れだった。よしんば早めに剣から水の技を放っても、高熱の火山弾にやられて、水蒸気になってしまっているだろう。


 結局、火山弾はジョニーの患部に思い切り当たり、左腕の筋肉も火傷を負い、重症どころか”超重症”となった。


 攻撃を放った亜依でも、そこまで威力があるとは思っていなかったようで、自分がやったのだと言うことが自覚出来ずにいる。



 試合開始から丁度5分が経った頃にコングが試合終了の合図を送った。


「……やられた……」

 ジョニーは患部を押さえながら言う。


「力があると言っても、物理技だけだね」

 亜依は赤色の剣を背中にある鞘の中に片付ける。


「ここまで来るとは……思っていなかった……」

「ま、ここは訓練不足だと言うことだな」

 水莱は亜依の近くに立つ。


「…………………………」

 相手は黙ったままだった。


「そんなことで私の勝ちだね。じゃあ、先に行かせてもらうよ」

 亜依は超重症のジョニーを何の手当もせず、先に進む。


 コバルト、水莱、SKYは亜依のあとを徒歩で追った。

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