第4部 アクア団と決闘

第1章 性能対決

 上級アジトの建物は、コンクリート建築で城のような形をしている。その背後には怪しい空間を放った王宮殿のような建物がひょっこりと顔を見せている。


「何か嫌な雰囲気がする……」

 亜依は赤い剣を握っている右手から手汗をかく。


「確かにそうだけど、ここは仲間や地球を救うため我々EARTH・REVOLUTIONはアクア団と決闘しなければならない」

 水莱は勇敢に青い弓を肩にセットしてアジトの中へと消えてしまった。


「そうだよね。だから私たちはここまで来たもんね」

 コバルトは緑の杖で地面を軽く突きながら入口に侵入した。


「弱気でいたら、当然勝てるわけないからな」

 亜依は真剣な目つきをして、コバルトたちの後をゆっくり歩いて追いかける。



 内部は壁に灰色の素焼きのレンガが数え切れない程、壁に貼り付けられている。天井は学校でよく見るようなクリーム色の板に真っ白の蛍光灯が60センチ感覚で明るく光っている。通路は曲がり角がかなり多く迷路のようである。


「色合いと言うセンスが無さすぎるなあ」

 水莱は辺りを見渡しながら先を歩く。


「壁が灰色だったら天井も灰色に合わせるよね、普通」

 コバルトはうつ向いて緑の杖を真剣に眺める。


 亜依は黙って頷くだけだった。


 水莱は後ろを振り返ってコバルトたちの様子をうかがうと、やはり2人とも緊張しているようだ。しかし、亜依は目の下に隈が出来ており、顔色が悪いのを目に留めた。


「何、どうしたん?」

 水莱は血色の悪い亜依に調子を聞く。


「……寒気がしてきた……」

 亜依の体は小刻みに震えている。


 コバルトは自分と亜依の首を触って体温を調べると、かなりの熱があることに気づいた。

 水莱はレーダーに緑と黒のチェック柄のブランケットを用意してもらい、亜依の体に優しく巻きつけた。



 14時半、とある部屋から明るい光が差し込んできた。


 気持ちを引き締めて部屋にはいると、アクア団の下っ端、バラン・ソーラーが待ち構えていた。


「やっと来たか君たち。ケント様がおっしゃったように決闘を始めるぞ」

「何だって?」

 水莱は思わず一歩後ろに下がった。


「てか、情報伝わるの速すぎじゃない?」

 コバルトも驚きでいっぱいだ。


「まず1回戦は俺と機械作り対決だ。お前らの目前に部品が置いてあるだろ。そいつらは“小型ロボット”の部品だ。これを使って、ロボットがどれだけ性能が良いかを勝負する」


 亜依は今のところ病人なので、亜依は参戦させられない。そんな事情があって

「わかった。じゃあ私がロボットを作るわ」

 と水莱はロボットの部品に近寄る。

 

 コバルトは亜依の看病をすることになり、コバルトは冷たいタオルを亜依の首の周りに巻いて体温を冷やしているところだ。



 第1戦目、杉浦 水莱VSバラン・ソーラー。


 早速、水莱はそばに置いてある説明書を左手で掴み小型のロボットを作成し始める。ネジで止めるところが多いので、機械のドライバーが役に立っている。


 それに、ロボットの表情は液晶画面で、なおかつ喋るので、基盤に抵抗器やバッテリーをつけなければならない。だから、はんだ付けをする必要がある。


「この小型ロボは本当に時間がかかるなあ」

 水莱はタオルで汗を拭く。


 水莱は偶然バランの様子を窺うと、説明書を見ずにテキパキと小型ロボを組み立てていく。機械好きなだけはあるなと思った水莱は負けん気発動して、素早くロボットを組み立てる。



 1回戦が始まってから20分後、ロボットの上半身はスピード完成させた。残るは下半身だ。

 相手は小型ロボの顔面を仕上げれば完成と言うところまで来ているので、水莱は焦り始めた。


(たとえ相手が先に完成したとしても、私は絶対に思いやりのあるロボットに仕上げて見せる!)

 水莱はそう思いながら慎重に足を組み立てていく。


 後ろから眺めているコバルトは真剣に水莱の作業をじっと見る。


 苦しそうにしている亜依は

「頑張れ……水莱……」

 と小さい声で応援する。


 その言葉を耳にした水莱は、当然ながら応援に答えなければと思い、「ああ、頑張るよ」とキリッとした目を向けた。



 10分後、もうすぐ完成のところまで来た。


 左足を本体に取り付けてネジを締める。


 液晶画面の周囲1センチの枠や関節の色は水色、その他のボディは白で出来た、高さ60センチ程のかわいいロボットとなった。


「出来た!」

 水莱は嬉しそうに小型ロボの脇下を優しく両手で持って持ち上げた。ロボットはまるで1歳児の子どものように喜んでいた。


 本当に良い子だなと思ってロボットの頭を撫でると、緑に光る発光ダイオードで出来た液晶画面は嬉しそうな目を作った。


「そうだ、名前を付けてあげようよ」

 コバルトは水莱に近づいた。


「そうだね」

 水莱は頷いた。


 亜依はのろのろ歩いて来て、その場に座った。


「それにしても、このロボットはかわいいなあ」

 コバルトはそこら辺をよちよち歩く小型ロボにちらりと目を向ける。


「まあ、私が心を込めて作ったもんね」

 水莱は笑った。


「名前は……そうだ!“SKY”にしない?」

 亜依は近寄ってきたロボットの背中をさする。


「おっ、良いやん!」

 コバルトは目を大きく開いた。


「今日から小型ロボは“SKY”だね」

 水莱は手を叩いてSKYを呼び寄せた。


 水色の関節と白のボディが空のように見えることから、そう言う名前になったのだ。



「待たせたな」

 水莱は腕を組んでバランを真剣な目つきで見つめる。


「ここからがバトルだ」

 その声を聞いたコバルトは亜依の看病を忘れるほど試合に夢中になる。


「ロボ同士で“バドミントン”で勝負だ、先にシャトルを落としたほうが負けだ」

 何て適当な決闘をするのだろうかと思った水莱は小型のラケットをSKYに渡して、振り方を軽く教えた。



 一発勝負の決闘が始まり、サーブは敵からだ。


 サーブを打った!

 レシーバーはシャトルを追いかけて打つ。


 向こうも容易に打ち返した。

 SKYはスマッシュを打った!速いスピードで敵のネットに入る。


 どうなるか、ここは見逃せないシーンだ。


 シャトルに向かってひたすら追いかける敵のロボは打ち返すのか?

 ……相手は思い切ってSKYのスマッシュを打ち返した。


 向こうも高性能のロボットだな……と思いきや……

 シャトルはSKYから見て右のサイドラインを越えた!


 と言うことは……OUT!


「やったー!勝った!」

 コバルトはバンザイして大喜び。


 SKYは小型ラケットを床にガサッと置いて水莱のところに近づいて抱き着いた。


「本当に良くやってくれた」

 水莱はSKYの頭をよしよしと軽く叩いた。


「くそっ……負けた。まあいい、ここを通れ」

 バランは奥の通路を素直に通した。


 コバルトたちは奥の通路に向かい、SKYもそのあとを追った。

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