第4章 仲間の居場所

 13時半、コバルトたちは元の地点に帰ってきた。


「さてさて、紅色のガラス玉の謎を解くとするか」

 亜依は目に近づけた瞬間、素早く目から離した。


「ちょっと、どうしたの?」

 水莱は地面に置いたガラス玉を覗く。


「……何か、嫌な雰囲気がする」

 水莱は目をしかめた。


 ガラス玉の中には怪しい煙が晴れてくる。

 コバルトたちは不思議に思って玉を注目する。


 中にはなんと……アクア団のボス、ケントが現れた。


「……!」

 3人は驚きすぎて何も言えないまま突っ立っていた。


「君たち、よくぞ目つき太陽を倒した。まさか、初めて使う武器でな」

「何よ!私たちを馬鹿にする気!?」

 水莱はガラス玉に左目をグイッと限界まで近づける。


「まあ、良い訓練にはなったけどな」

 亜依は水莱の体を起こす。


「何だと?急所まで把握しやがって!コイツらの命を狙っていいと言うわけだな」

 ケントは青筋を立てる。


「貴様、言うてること違うぞ!お前は“命は狙わん”と言ったくせに」

 水莱も対抗して青筋を立てる。


「オレ様はそんな記憶は無い」

 ケントは何事も無かったかのようにサラリと言う。


「じゃあ、その根拠を述べよ」

 コバルトは再び青色の目になる。


「……」

 ボスは考えている。



 その間、亜依は

「コバルトって目の色を変える能力があるの?」

 と聞く。


「うん、まあ私が高2のときにお父さんの魔法で7色に変えることが出来るようになったの」

 コバルトの虹彩は赤、青、黄、藍……と変色する。


「うわー、凄い!」

 水莱は黒褐色の目を輝かせる。


「私もそうなりたい!」

 亜依はそれに憧れる。


「でも、変色させるのにエネルギーを使うから、普段は緑のままだよ」

 コバルトの虹彩の色は緑に戻った。


「あれ、私たちのような黒褐色じゃないの?」

 水莱は尋ねる。


「そう。私たちが暮らしている現実界の“サーファス”では多くの人は緑色の目をしているの、遺伝子的な関係でね。前に言ったけどブルーンは理想の世界“ウリヴァース”から来たけど、元々の本名は私と同じで、当時、私の目が青色だったらなあ、と思っていたら、1年の終わりに、まさか自分の理想の姿がブルーンだったとは、と思ったの」


「でも、何でブルーンはサーファスと言う世界に来たときに本名を変えたの?」

 水莱はさらに奥深く突っ込む。


「彼女が言ってたけど、ブルーンの父が仕事の都合でサーファスの世界に転勤することになって、サーファスとウリヴァースには同一人物が必ず存在するの。だから、私と名前が被るから本名を変えたんだって」


「へえ。じゃあ、ここの世界も“サーファス”になるの?」

 亜依は両手を頭の上に乗せる。


「そのとおり」


「それでか。何で緑の目をしているのかな、と思っていたよ」

 亜依は手を打つ。


「と言うことは、私にも理想の自分が存在するわけ?」

 水莱はドキッとする。


「うん。1回行ったけど楽しかったで」

 コバルトは笑顔を見せる。


「行きたいな」

 亜依は目を輝かせる。


「行く方法は、所々に“シークレット・レイク”があるから、そこに潜ったら理想の自分に会えるよ」


「シークレット・レイクかあ。何か聞いたことがあるなと思ったら……」

 水莱は地面を見る。


「そのうち理想の自分に会いに行こう!」

 亜依の心が躍り始めた。



 余談話が終わると、ボスは

「そう言う貴様こそ根拠があると言うのか?」

 と聞き返す。


「そんなこと言われても……とは言わせへんで!」

 コバルトはニヤッとする。


「オレをひるませおって。一瞬根拠が無いと思ったのに」

 ケントはショックを受ける。


「これだ!」

 水莱は爆心地で見つけた双眼鏡型ビデオをポケットから取り出した。


 水莱は繰り返しボタンをポチッと押した。


 内容を聞いたケントは

「確かにそれはオレらのものだが、オレはこんなこと言った記憶は無い!」

 と自己主張する。


「ははあ、いつまでも足を引っ張らせるなあ。そんなに意地を張るならお前が根拠を言ったらどうなん?私たちは根拠を言った」

 水莱はビデオカメラを強く握りしめる。


「これは、オレの下っ端がやったものだ」

 ケントはやっと根拠を言えた、と満足する。


「下っ端がやったにしろ、ボスの命令が無いと勝手にしないはず」

 水莱は鋭いところを突く。


「よしんば、下っ端が勝手にやったとしても、ボスは処罰を与えないわけがない。違わない?」

 亜依は腕を組む。


「オレ様がこんな馬鹿なことをするとでも言うのか?」

「そんなことをしていたら、アクア団はとっくに崩壊しているよ」

 コバルトはガラス玉に腰かけ、かかとで軽く蹴って遊んでいる。


「こら、ガラス玉で遊ぶな!一応、それはオレのものだからな!」

「お前のものだったら勝手にするわ」

 コバルトはガラス玉から降りて魔法をかけて小さくし、さらに3つになったガラス玉をお手玉のように遊ぶ。


「そろそろ認めたらどうなんだ?下っ端や幹部から信頼されなくなるよりは、だいぶマシだと思うけど」

 水莱は辺りをうろうろ歩く。


「そこまで聞かれたら仕方が無い。実は、このビデオはオレが下位下っ端に命令して作らせた。その声はオレの声だ。ただ、わかりにくくするために、わざと声を低くした」

「やっと認めたか。じゃあ、私たちの仲間を返してもらおうか」

 亜依は怖い顔をした。


「仲間を返せと言ったな?ならば我々がいる“上級アジト”まで決闘しに来い!」

「決闘だって!?いいだろう、受けてたつ!」

 水莱はやる気に燃える。


 ガラス玉からボスは消えて、やがて煙に変わった。



 14時。


「よし、最後の上級アジトに行こう!」

 水莱はガッツポーズをする。


「オーッ!」

 コバルト、亜依は拳を空に向けた。


 すると、雨が止んできた。3人は傘を片付けた。


 最後に、水莱はコバルトの魔法で3つに分裂した紅色のガラス玉を地面に叩きつけ、ガラス玉は粉々に割れた。


 彼女らはアクア団と決闘するために上級アジトへと向かった。

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