第3章 紅色の目を持った太陽

 供養が終わってから亜依たちはビカリア洞窟を出た。


 武器は、コバルトは魔法を使えることから杖、水莱は元アーチェリー部だったから弓、亜依は棍棒を使って父と特訓してきたことから剣となった。



 12時、太陽はギラギラと光っている。


「お腹すいた。そろそろ昼にしない?」

 コバルトはお腹をさする。


「確かに、良い時間だもんね」

 亜依は眩しい太陽を見つめる。


「そうめんでも食べたいな」

 水莱はレーダーに食事を頼んだ。


 すぐさま、レーダーは3人分の食事を用意した。


「ありがとう、レーダー」

 水莱はレーダーの縁を撫でた。


 レーダーは照れくさそうな感じだった。



 15分後、食べ終わった直後、ある異変が起こる。


「あのさあ、あれ何?」

 亜依は空を見上げる。


 コバルト、水莱は空を見ると、紫色だ。それに、太陽が紫色に変色して、紅色の目をこちらに向けている。


「何か“漆黒の太陽”みたいだね」

 水莱はボソッと呟く。


「ソンナコト、アリマシタネ」

 レーダーは去年のことを思い出す。


「漆黒の太陽!何それ?」

 コバルトはその言葉に反応した。


「それはな、去年の9月に5次元の空の世界に行ったとき、5次元の人々が悪いことをすると“漆黒の太陽”と言う青黒い太陽が現れて、その日は食欲不振になる、と言う不思議な現象が起きたの」

 水莱は去年のことを振り返る。


「で、結局どうなったの?」

 亜依は続きが気になるようだ。


「最終的に“ギャラクシー・プリズム”と言うすべての次元を自分のものにするための集団が、太陽にも月にも小さな青黒い正二十面体の“ブラックライト”を宙にばらまいて、私たちが犯人を突き止めてから、元の太陽、月に戻ったの」

 水莱は記憶から情報を引っ張る。


「へえ、そんなことがあったんだ」

 亜依は納得した。


「まあまあ、とにかくこの“目つき太陽”を懲らしめよう。武器も使い慣れたら一石二鳥じゃん」

 水莱は矢を弓にセットし、紅色の目をめがける。


「そうだな」

 コバルトも杖を構えた。



 完璧に気持ちが切り替わったあと、亜依は

「私たちは空が飛べることをお忘れなく」

 と言い、ジャンプして太陽に向かった。


「ああ、マントがある限りね」

 水莱も太陽に向かって飛び跳ねた。


「おっと、宇宙服」

 コバルトは魔法でサッと宇宙服を着た。


「そうだった!」

 水莱、亜依はうっかりした。



 戦場は宇宙空間になった。飛んでいる真っ最中に宇宙服を着て大正解。


 亜依は赤色の剣を両手で握り、かけ声をかけて剣を振る。


 目つき太陽は少しダメージを受けたが、今度は反撃タイムだ。

 目つき太陽の紅色の目から真っ赤なマグマのようなビームを放った。


「盾でガードだ!」

 水莱は必死に盾でガードする。


 ビームを放ったあと、コバルトは杖に力を込めて爽やかな緑色で無数にある木葉を放つ。新鮮で生き生きとした緑の葉で太陽の白目を狙う。


 目つき太陽はかなりのダメージを受けた。やはり、弱点は“目”のようだ。


 水莱は弓に矢はずをつがえて紅色の目を狙う。クールな目で黙って矢をひょうっと放つ。

 矢先から粒々のドライアイスが連射する。


 ドライアイスはマイナス78度。それが紅色の目に突き刺さる。水莱は大ダメージを食らうな、と思った。


 しかし、それは間違いだった。驚くことに、目つき太陽は一瞬にして目をつぶった。


「嘘だ……こんなの有り得ない……」

 水莱はそう簡単に急所に当たるとは限らないことが分かった。


 太陽の表面温度は約6000度シーなので、すぐに昇華してしまった。


 目つき太陽は油断をしてしまったことに気づいた水莱は二カッと笑った。


「何で笑ってるの?」

 コバルトは疑問に思う。


「まあまあ、よく様子を見てごらん」

 水莱は矢先に集中する。


 ドライアイスは矢先から矢はずまで凍り、敵の目に向かって飛び続ける。


 目つき太陽はバチッと目を開けた。そいつの目前は水莱が放ったドライアイスの矢は目にふっと命中してしまった。


「目つき太陽は腕、足とかが無いから、矢を抜くことだって出来ないね」

 水莱は紅色の目に刺さったドライアイスの矢を無理やり引っこ抜いた。


 ううっ……と太陽は苦しむ。目には矢が刺さった跡が残っている。


「ざまあみろ。じゃあ、コバルト、亜依、とどめ刺すよ!」

 水莱は矢を放つ。

 今度は、矢先から海水を噴射した。


 次に、コバルトが緑色に輝く風のような光線を放った。


 最後に、タイミングよく亜依が剣を持って

「ファイアースクリュー!」

 と勝手に名づけた技の名前を叫び、剣に紅の炎をまとい、3人の技がちょうど目つき太陽の弱点に直撃するように時間を計って野球のバットのように薙ぐ。


 果たして、どうなったのか……


「ウオオォォォ……」

 元気を無くした目つき太陽は、紅色の目からガラス玉を落とす。


 やがて、まぶたは閉じ、太陽自身の色がだんだんオレンジ色に戻っていった。


「ふう、やっと目つき太陽を倒した」

 水莱はため息をついた。


 亜依は一部が欠けたガラス玉を手に取り

「何か、大きいよ。直径150センチくらいかな?」

 と眺める。


「意外に目つき太陽の目は小さかったんだね」

 コバルトは目を細める。


「うーん、まだまだ謎が続くなあ」

 水莱は腕を組んだ。


「謎は地球に帰ってから考えよう」

 コバルトの緑色の虹彩は集中モードを示す青色に変わってゆく。

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