第3部 連れ去られた仲間の軌跡

第1章 残された暗号

「見つかった!こっち来て!」

 貴弘はEARTH・REVOLUTIONを呼び出す。


 貴弘の所に向かうと、周りは木がいっぱい立っていた。


「何で周りは木が立っているのかなあ」

 憧君は爆心地の近くにしゃがみこむ。


「普通は木も吹き飛ばされているか、倒れているかのどっちかなのにね」

 キャリンは木を見る。木は元気そうだ。


「それは、爆心地を隠したかったんじゃない?そうじゃなかったら、倒木をほったらかしにしているよ」

 紗理は木にもたれる。


「確かに、爆心地が踏み入れたことのない土に覆われているしな」

 政はふかふかの土を右手でグシャっと乱暴につかむ。


「で、爆発した後に、木を植えたり、凹んだ穴を隠したりとしていたのか」

 水莱はレーダーが用意したスコップでふかふかの土をグサグサ刺す。


「絶対そうだよね」

 ケイトは三角座りした。


「そろそろ掘り出そうか」

 水莱はスコップで爆心地を掘り出した。


 11人は中級アジトに残っているシャベルを取り出して協力して掘り始める。



 日付が変わって、7日0時10分、ついに掘り終わった。穴の直径は100メートルだ。

 底には訳のわからないアクリルで出来たメッセージが残されていた。


 ブルーンはメッセージを取り出して、読み上げる。

「ここを掘った者は、命がないと思え」


「うわー、随分怖いメッセージやなあ」

 憧君は慌て始める。


「しかも、わざわざアクリルで書いた理由も謎やし」

 キャリンはポヤーッと夜空を見る。


「紙で書いてたら、微生物によって腐ってしまうよ」

 栞菜はアクリル板を触る。


「そっか。そいつらは紙を分解してしまうんだね」

 キャリンは穴を見つめる。


 実は、また新たな問題が発覚した。


「メッセージが置かれていた所に暗号がある!」

 亜依は穴に潜る。


「何だって!?」

 侑馬は目を大きく開いて驚く。


 暗号は、小さな黒のプラスチックにこう書かれていた。


『=δ∞∅』


「えっと、イコールにデルタ、無限大、空集合ファイ……意味わかんない」

 ケイトは記号を読む。


「アクア団がこんな記号を知っていたなんて意外」

 水莱は別の意味で感心する。


 亜依は暗号のそばにあるものを見つけ、

「何か、カメラのようなレンズがある!」

 と彼女は驚く。


 憧君はシャベルを持って穴を滑り、様子を見に行った。そして埋め込まれているレンズをシャベルで掘り出す。


「うーん、これは……双眼鏡型ビデオだな」

 憧君はそう言ってレンズから目を通す。そして、言葉を続ける。

「コイツは自動ビデオで、レンズに人が入ったら勝手に録画される仕組みだ」


「んじゃあ、録画したヤツは無線で上級アジトに届けるとか……」

 コバルトは分析する。


「ヨクゴゾンジデ」

 政のレーダーが喋る。


「と言うことは……暗号を解かないと命が狙われるってこと?」

 紗理の額には冷や汗がつーっと頬に流れる。


「ソノトオリデス」

 政のレーダーは悲しい声で答える。


「やっばー!」

 水莱は暗号の意味を解読しようとした。


「みんなで考えよう」

 貴弘はあぐらをかいた。



「まずは、イコールは”等しい”、無限大はそのまま……あと2つの意味忘れた!」

 憧君は頭を抱える。


「焦るなって。デルタは物理で言う変化を表す記号。空集合ファイは空っぽの意味がある」

 水莱は真剣な顔で暗号板を睨みつける。


「これらを繋げると”無限に変化が無いに等しい”となるね」

 ケイトはひらめく。


「これだけでは意味がわからないね」

 キャリンは腕を組む。


「もしかして、アクリル板に書かれている内容と関係があるのでは?」

 ブルーンはアクリル板を持つ。


「ありそうやな」

 侑馬はアクリル板をまじまじと見る。


「ここから分かることは”無限の命の変化が無いに等しい”かあ」

 亜依はうとうとし始める。


「あと、ビデオが欲しいね」

 紗理は双眼鏡型ビデオを手に取る。


「で、最終的にビデオを付け加えると”ビデオを見つけたら、無限の命の変化が無いに等しい”だね。この暗号の意味は絶対それに違いないよ!」

 水莱は自信満々に言う。


「流石水莱!すごいよ!」

 栞菜は大喜び。


 すると、ビデオのスピーカーから怪しい声が放たれる。

「よくぞ分かったな、EARTH・REVOLUTION。お前らの命は狙わないから、安心し給え」


「ああ、危なかった」

 キャリンは安心しきる。


「おいレーベ、安心するのは速いぞ」

 侑馬は指摘する。


「アクア団は人の命を狙う可能性は十分にあるから、信用しちゃあかんよ」

 コバルトは眠そうな目を向ける。


「そうやな」

 キャリンの緊張感が増す。



 9時、亜依は目を覚ました。

 亜依の周りにはコバルトと水莱しかいないことに気がつき、慌てて彼女らを起こした。


「ええっ、ブルーンたちがいないの!?」

 コバルトははっと起き上がる。


「深夜までここに一緒にいたのに……」

 水莱は視線を落とす。


「ネテイルアイダニ、アクアダンニツレサラレタシマイマシタ」

 水莱のレーダーはしょんぼりした。


 すると、空から強い雨が降り始め、亜依たちの衣装を一瞬で濡らしてしまった。


「あいつら、命は狙わんと言ったのに、嘘つきおって!」

 水莱は腕に力を入れた。


「だから、早く助けに行こう!」

 亜依は立ち上がった。


「ラジャー!」

 コバルトと水莱も立ち上がって傘を差し、次の目的地へと向かうことにした。

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