第4章 爆心地付近の中級アジト

「さてさて、衣装も揃ったし、アクア団の”中級アジト”と言う意味不明のアジトに向かうとするか」

 憧君はレーダーが準備してくれたテントを張って寝る支度をする。


「そうやな。何でアクア団は訳のわからない名前をつけるのだろうね」

 ブルーンはあくびをする。


「それはボスがいい加減な性格をしているからじゃない?」

 栞菜はテントの中に入った。


「なるほどな。でも、まだ爆心地は未発見のままだけど」

 侑馬はふあーっとあくびをする。


「ここで急に話を変えるんかい」

 彼の隣にいる貴弘がツッコミを入れた。


「だって、初級アジトが爆心地かと思ったら、そうじゃなかったやん」

「まあ、そうだけど」

 貴弘は自分のテントに向かった。



 8月6日10時、EARTH・REVOLUTIONは出発する支度をしている。


「今日は”中級アジト”に向かうぞ!」

 水莱はアクア団に復讐してやる、という気持ちで言った。


「おーっ!」

 残りのEARTH・REVOLUTIONは空に拳を向ける。


 水莱たちはおよそ半日にわたる移動が始まった。



 21時、EARTH・REVOLUTIONは中級アジトに着いた。予定より少し早めに到着出来た。


「あのボロボロだった”初級アジト”に比べて”中級アジト”はちょっぴり立派だなあ」

 憧君は既に破壊した初級アジトを小ばかにする。


 確かに、初級アジトは木製で出来ていたが、中級アジトは鉄製で表面が錆びないように油が塗られている。


「何でボスは3つのアジトがある、と言ったんだ?」

 政は疑問に思ってレーダーを取り出す。


「サイショハ、アジトガヒトツシカナカッタノデス。ダンダンハッテンシタトキニ、ヒトニミツカラナイトコロニ、アラタナアジトヲタテタノデス。ソノヨウニシタケッカ、アジトガミッツニナッタノデス」

 レーダーは何でも知っているかのようにスラスラ説明する。


「と言うことは、新たなアジトを建てるたびに外側の材料が異なるのも、アジトが発展したからなのか」

 憧君はひらめく。


「マサニ、ソノトオリデス」

「いやあ、それは知らなかったなあ。でも、そのお金はどこから手に入れてるんやろうね」

 憧君の話を聞いていたキャリンが話に割り込む。


「ボストカンブガシタッパニ、ミセノアルバイトヲサセテイルノデス」

「うーわ、最低!で、ボスと幹部は下っ端からお金をもらっているわけ?」

 とキャリン。


「ボスと幹部の性格からしたら、そうじゃない」

 コバルトはキャリンの隣に来る。


「絶対やりかねないよ」

 亜依は腕を組む。


「そろそろ中級アジトに入ろう。時間の無駄だよ」

 水莱は入り口に向かう。


「うん」

 と残りのメンバーは返事をした。



 EARTH・REVOLUTIONは暗い蛍光灯を頼りに、足音を立てずに侵入するとすぐに、アクア団を象徴する旗が押しピンで飾られているのを見つける。

 初級アジトと違ってキラキラのラメが入っている。しかも、青、紫、赤色の星は夜光タイプとなっており、ほんのり光っている。


「旗も手をかけているのか」

 紗理は小声で独り言を言った。


 奥へと入っていくと、料理や掃除、発電などの精密な機械がズラリと整列している。


「普通は下っ端がいるはずなのに誰もいない」

 ケイトは辺りを見渡す。


「寝室で寝てたりしてね」

 ブルーンはたくさんの歯車が埋め込まれている機械をじっと見る。


「ココニイルシタッパハ、スコシクライノタカイシタッパデス。デスカラ、クライノヒクイシタッパトハチガッテ、ザンギョウガアリマセン」

 栞菜のレーダーが喋り出す。


 栞菜はビーズ・ネオンを取り出して

「一体アクア団の位はどうなっているの?」

 と聞く。


 レーダーはアクア団の位を画面に表示した。

 栞菜は表示された文字を読み上げる。


「上からボス、幹部、上位下っ端、下位下っ端。ただし、上位下っ端と下位下っ端の区別は、はっきりしていない……」

「本当に適当なんだね」

 水莱は栞菜のレーダーを覗き込む。



「やっと見つけたのか、EARTH・REVOLUTION」

 その声にEARTH・REVOLUTIONはバサッと振り向く。ケントだった。


「貴様、この前はよくも……」

 水莱は両手の拳を握りしめる。


「とりあえず、5日前に起こった爆発の爆心地はここから200メートル離れたところにある」

 ケントは水莱の言葉を無視する。


「そんなんで、よく中級アジトは傷ひとつもいかなかったんやな」

 侑馬はケントをにらむ。


「それは、爆風から守るために頑丈に工事し直したからな」

 寝室から出てきたルンはニヤッと笑う。


「それでか」

 侑馬は納得した。


「じゃあ、オレらは仕事時間じゃないから静かにしてくれよ」

 ケントはそう言ってルンと一緒に寝室へと向かった。



 姿が見えなくなると、ブルーンは

「何か、シャトルとスマージェットが恋人同士に見える」

 とクスクス笑う。


「そう見えるけど、そんな場合じゃないよ。早くこのアジトを破壊する方法を考えないと」

 ケイトは腕を組んで指摘する。


「どうしろと言うの?」

 ブルーンはケイトをガン見する。


「だから今から考えるの」

 ケイトは冷静に言い、床に座った。



 23時、政は良いアイデアを思いついた。

「そうだ、機械を動かして、摩擦熱によって火を起こしたら良いんだよ。この建物は鉄製だから、熱で溶けるに違いないよ」

「なるほど。やってみようか」

 貴弘は立ち上がった。



 実験が始まった。

 まず、機械を作動させる。


「それで、予備の木材が四隅にあるから、歯車に当てて摩擦熱を発生させる」

 政は木材を肩に担ぐ。


 EARTH・REVOLUTIONは政の言うことを従った。


 5分経って、キャリンが

「熱くなってきた……てか、火がついた!」

 と騒ぎ始める。


「じゃあ、床に置いて!」

 政は大きな声で言う。


 ドサッ!ドサッ!と乱暴に木材を投げ捨てる。

 床はボーッと燃え上がって中級アジトに設置されている非常ベルがジリリリリ!と鳴る。


「逃げろーっ!」

 政は必死に逃げる。



 中級アジトから脱出した後、水莱は

「とりあえず一件落着かな」

 と熱で溶ける中級アジトを眺める。


「まあ、そうやな」

 栞菜は水莱の隣に立つ。



「お前ら、よくも”中級アジト”を燃やしたな!」

 非常口からケントが現れた。


「やかましい!燃えたから何だと言うの!?もうひとつアジトがあるから良いじゃない!」

 水莱は大声で怒鳴る。


「最後の”上級アジト”には料理とかする機械はないの」

 同じく非常口からルンが出てきた。


「ははあ、万が一のために機械が設置されていないとか馬鹿じゃない?」

 キャリンは目を細める。


「おいっ、ジャラ、ソーラー、早く”上級アジト“に機械を設置せよ」

 ケントは命令する。


「承知しました」

 ジョニーは敬礼して、中級アジトからバランと一緒にまだ使える機械を引っ張り出す。


「というわけで、我々アクア団を滅ぼしたければ”上級アジト”に来い」

 ルンは強気で言う。


「今度は貴様らに逆襲してやるからな!覚悟しとけよ!」

 ケントはルン、ジョニー、バランを連れて上級アジトに向かった。



 EARTH・REVOLUTIONの視界から消えると、水莱は

「あいつらが十分私たちに逆襲してきているのに、まだこんなことを言うとは」

 と4人が消えていった方向に向かってにらむ。


「ここからが本番、って感じやな」

 侑馬は真剣な目つきをした。


「そうだけど、何で地球を侵略したがるのかが謎だよね」

 ケイトは右足のつま先で湿り気のある地面を蹴る。


「どうせ、あいつらは偉そうぶりたいんだよ」

 憧君は腕を組んで曇っている空を見上げる。いつ雨が降ってもおかしくない状況だ。


「ケントって奴はそういうタイプだよねー。でも、ウチらが手を出さないと時間が刻々と過ぎていくだけだし……」

 栞菜はポケットからレーダーを取り出し、爆心地からの距離を調べる。


 顔を覗き込んだブルーンは

「半径200メートル辺りにあるのか……」

 と冷静な声で言った。


 それを聞いた政たちはこっくり頷いた。


「というわけで、ここから半径200メートルの所に爆心地があるから、とにかく探そう」

 コバルトは駆け足で爆心地を探しに行く。


「うん」

 残ったメンバーも散らばって探し回る。

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