第3章 海原から向こう岸へ

 30分かかって、ようやく海に到着した。


「ここから船を使うんだけど……どこにあるん?」

 ブルーンは辺りをキョロキョロした。


「北の方に少し歩いたら、ちょうど良い大きさの船があるなあ」

 栞菜は船に指を指した。



 EARTH・REVOLUTIONは栞菜が言った船に乗った。


「なあ、誰が運転するん?」

 水莱は舵の前に立った。


「ロボットニマカセルノハ、イカガデショウカ?」

 突然、水莱のレーダーが喋り始めた。


「ロボット?そんなあ、誰が用意するん?」

 水莱はレーダーを胸ポケットから取り出した。


「ミライノウシロニ、“自動で運転する”トイウスイッチガアリマスヨ」

 水莱は舵の近くにある機械のようなものを見る。


 確かにスイッチはあるが、“自動で操作する”と書かれている。


 水莱は、そのスイッチを押す。そして、目的地を入力し、やっとのように船は動き始めた。


「これ、どう考えてもロボットじゃないね」

 水莱は嘲笑った。


「まあな」

 政も嘲笑う。


「てか、本当に爆発地点まで連れて行ってくれるのかなあ」

 亜依は組立式のテーブルの上に左肘をつけた。


「ちょっと不安だよねえ」

 紗理は碧い海を退屈そうに眺める。


「まあまあ、心配すんなって。暗い気持ちでいるの、つまんないだろ」

 侑馬は両手を腰に当てた。


「そうやな」

 亜依は少し元気を取り戻した。



 正午頃。


「そろそろご飯にしたいなあ」

 栞菜は船の中にある網を持つ。


「いい時間やしね」

 ケイトは海に魚がいるかを確かめる。


 栞菜はケイトに近づいて、

「おお、魚がいるじゃーん」

 と興奮し始めた。


「うん、これは秋刀魚やな」

 貴弘が腕を組んで栞菜の側に突っ立っている。


「そろそろ秋刀魚の時期だもんね」

 ケイトも栞菜の側に立っている。


「ほれほれ、3匹もゲットしたで」

 栞菜は水の入ったクールバックに秋刀魚を入れた。


 その中に入った秋刀魚は、コバルトたちが塩焼きにしている。



 40分後、待ちに待った昼食が出来た。


「いただきまーす」

 昨日と同じく、一斉に挨拶をした。


「あー、塩辛い!」

 塩味が苦手な紗理は秋刀魚の上に乗っている塩を箸で取り除く。


「この塩味が良いねんやんか」

 政は猛スピードで食べる。


「新鮮だし、海の幸って最高!」

 水莱は味わって食べる。


「ところで、目的地までどのくらい距離があるん?」

 侑馬は問いかける。


「んー、あと300キロ」

 政はレーダーで確認する。


「あと半日で着くんかいな?」

 侑馬は急に食べるスピードが遅くなった。

 


 4時間後、紗理は机の上でうつ伏せになって寝ていたことに気がついた。


 辺りを見渡すと、彼女以外も全員うつ伏せで寝ている。


「船酔いでもしてしまったのかなー」

 紗理はそう言って、舵の近くに立った。


 真っ赤に染まった太陽の背景に、向こう岸が近づいている。もう到着しそうだ。


「みんな、起きて。もう着くよ」

 紗理は1人ずつ、体を揺すって起こす。


「もう着くのかー」

 キャリンはあくびをした。


 西側を見た亜依は

「なんだ、丸一日かからなかったじゃないか」

 と呆れた目つきで向こう岸を見つめる。


「めっちゃ早いスピードで走っていたのかもしれないね」

 ケイトはリュックサックを背負った。


 やがて、船は向こう岸の船乗り場に止まった。


「さあ、着いたぞ。爆発地点まであと200メートル。頑張って向かうぞー!」

 憧君は拳を空に向けた。


「オーッ!」

 他の11人も拳を空に向けた。

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