⑧ 母親の過去を辿る手紙《往信》高瀬 奏➠藤野 真澄
突然のお手紙失礼いたします。
私は
先日亡くなりました母、
『
ですから、どのような事情で母がこの掛け軸をお借りし、なぜ今になって私に返却を託したのか。一切わからぬままに、貴方様に文をしたためることが果たして良いのかどうか、とても迷いました。
ただ、母一人子一人、肩寄せ合って生きてきたなかで母が私に頼み事をしたのは、後にも先にも今回が初めてでした。そんな母の願いを無下にもできず、甚だご迷惑なことと思いつつ、こうしてお尋ね申し上げた次第です。
もし差し支えなければ、経緯などをお教えいただけたら幸いです。
でももし、そのままにして欲しいとお望みでしたら、この掛け軸は私の方で大切に保管させていただきます。
お手数をおかけして申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
高瀬 奏
※茶掛とは、茶室の床の間に飾る掛け軸のこと。
今回は、母親は『茶掛』と言ったけれど、実際にはお茶席では無く玄関に無造作に飾られていただけ、という設定です。
※このあとに続く、返信の設定上、お題を一部修正させていただきました。
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