1. vsコントロール(2019/02/01)

 〈霧まといの川守り〉をゴミと言われた翌週、アキは再び『おっとりドラゴン』のカジュアルイベントに顔を出した。

 ゴミと言ってきたプレイヤーは発売当日のイベントだから顔を出していただけなのか、この日は店に姿を表さなかった。


 1戦目は引きに恵まれていたこともありストレート勝ちを決めることができ、このデッキは強いんだという確信を強めることができた。


 2戦目の対戦相手はコントロール・デッキの使い手として知られる常連の井川さんだった。先攻を取ったのは井川さんで〈神無き祭殿/Godless Shrine〉を寝かせて戦場に出す穏やかな立ち上がりからゲームは始まった。


 後手のアキはさっそく〈霧まといの川守り〉を召喚し、この相棒で勝ちに行けるというわずかな高揚感を覚えていた。一方で、対面の井川さんは怪訝な顔をした。パワー1の貧弱なアタッカーの採用に戸惑い、雑魚に対してわざわざ除去を使うのか、悩んでいた。


 結局、除去を撃つことなくターンが回り、アキは必殺のコンボ……いや、コンボとは呼べないような初歩的な戦術を披露することになった。〈執着的探訪/Curious Obsession〉を〈霧まといの川守り〉につけたのだ。つけられたクリーチャーのサイズが1点上昇するカードによって〈霧まといの川守り〉をアタッカーとして成長させるシンプルな強化を行ったのだ。


 たかが1点。されど1点。単体では20回攻撃しないとゲームに勝利できない貧弱なアタッカーは、クロックが2倍になり、10ターン守りきれば勝てるカードになった。井川さんはこれに対して即座に除去呪文を唱えて、〈霧まといの川守り〉を破壊しようと〈喪心/Cast Down〉での除去に動いたが、アキ打消しカウンターである〈 呪文貫き/Spell Pierce〉を握っていたのでこれを弾いた。


 2ターン目のこの小さな攻防が勝負を分けた。


 続く追加のクリーチャーの展開こそ打ち消されながらも1対1交換を繰り返し、その間も〈霧まといの川守り〉はダメージを与え続けた。

 ライフが半分を切る頃には川守りを除去しようと井川さんは必死になった。しかし、〈肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium〉には〈潜水/Dive Down〉を〈渇望の時/Moment of Craving〉には〈否認/Negate〉を当てて、秋〈アキ〉はきっちり20点を削り切り、ゲームに勝利した。


 確かな充足感に満たされながらアキは上位卓の席に着き、そしてTier1のミッドレンジに轢かれて優勝を逃した。

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お気に入りのハズレコモン「パワー1ブロックされない」をゴミと馬鹿にされた俺が青単クロパで無双するまで。 略して青ゴミ。 青猫あずき @beencat

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