お気に入りのハズレコモン「パワー1ブロックされない」をゴミと馬鹿にされた俺が青単クロパで無双するまで。 略して青ゴミ。

青猫あずき

0. お気に入りのカードをゴミと馬鹿にされる(2019/01/25)

「うわ、そんなゴミ入れてるの初めて見た。アフガキかよ」


 対戦相手のこぼした本音にアキは耳を疑った。

 今、彼は新弾発売日のイベントを遊びにやってきたカードショップ『おっとりドラゴン』のデュエルスペースで見ず知らずの相手と卓に向かい合っていた。


 テーブルの上ではアキが このターンに出したばかりの〈霧まといの川守り/Mist-Cloaked Herald〉以外にクリーチャー・カードはない。明らかに対戦相手のゴミと言う発言は彼のお気に入りフェイバリットである青い戦士を指していた。


 アフガキという言葉の意味は分からなかったが馬鹿にされていることはすぐに分かった。


 〈霧まといの川守り〉はトリム平均31円、最安値では10円を下回るコモン・カードである。カードショップに買取に出しても値がつかいないために、回収ケースにゴミとして突っ込まれていてもおかしくない。


 だからと言ってそれを対戦中に、それも自分が使っているならいざ知らず、対面の相手のカードに対して言うなんてマナーが悪いんじゃなかろうか。ルール適用度がもっと上のイベントならジャッジを呼んでいたかもしれない。


 とは言え、このイベントは競技的でなくプレイヤー間の交流を活発にするためのカジュアルイベントだ。


「やっぱり弱いですかね、このカード。自分はかなり気に入ってるんですけど……」


「オレだったら ぜってぇ入れないっすけどね、アタッカーにするにはクロック細すぎっしょ。抜いたほうがいいっすよ、マジで」


 結局、その対戦はTier1のミッドレンジを使う対戦相手がストレートで勝って終わった。


 友人と一緒に帰り、牛丼屋でその話をすると「俺もゴミだとは思うけど」と前置きした上で対戦相手のマナーの悪さには同意してくれた。


「そもそもアキはなんでそいつ入れてんの?」


「Yukuhiro Kenが勧めてたから。信頼できるクロックだし……」


「クロックとして信頼するには1/1は貧弱すぎると思うけどね。でもアキがそう信じてるなら抜かなくてもいいんじゃね? 気に入ってるんでしょ、そいつ」


「おう。このデッキで1番好きなカードかもしれない」


「そんじゃあさあ、そいつ使い込んでTwitterにリスト乗っけようぜ。勝者のコメント載せてくれるじゃん、あそこに『ゴミで全勝』みたいなこと書いてさ」


友人が何の気なしに言った言葉がアキの目標になった。Tier1を下し店舗優勝を飾り〈霧まといの川守り〉の画像をツイートに載せてやるまで使い続けてやるのだ。

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