二十五章 傾国の育毛野郎を発見、被害が拡大する前に速やかに目標を駆逐する。イットイズ長坂の戦い。作戦コード78364(ナヤミムヨー)
農作物の荷受けのバイト初日、段取りを説明される。なる程。
先輩と挨拶する、
「はじめまして。」
「宜しく。坂西です。」
坂西さんは俺より年上そうなの男性。コロナでマスクをしているが、防塵マスクだ。
「何ですか?そのマスク。」
俺は坂西さんに聞いた。
「ウイルスは布マスクじゃ防げない。」
え?
「そうですか。」
なんて奴だ。やめるんだ。
まだピークの忙しいシーズンではないので、世間話をしながら、タグを切る作業をしている。用紙を切り分けているのだ。定規を使って紙を切る作業。
坂西さんの黒い定規はツタヤで買った紙を切る用のヤツだ。
「そのエクスカリバーヤバいすね。」
「そうや。」
「切れ味半端ないす。俺も欲しい。」
「買って来てやろうか。」
「お願いします。」
なんだかんだ話している内に、筋肉番付の奴等がなんさま叫ぶなぁ、という感想を共有した。
そして、芸能人のズラのヤツを俺の知り合いの知り合いが収録でズラが取れた件を目撃した事を話した。
「俺もズラ。」
「あ、皿洗いの先輩にもバーコードの人がいるので、今度被るように言っておきます。」
嗚呼、また逸材がいた。
「どれくらい本物ですか。」
「このうなじだけ。」
「へぇ。」
「六十万位するとた。」
「高いですね。」
「俺の同級生はアデランスにいます。」
「俺はアートネイチャー。」
「へえ、僕はユンケル。」
話題はは音楽になり、
「あ、そう言えば、皿洗いのバーコードの先輩はフォークが好きなんですよ。アコギ持ってますし、ハカランダのヘッドウェイ。」
「あ、そうだろやっぱり。」
「え、フォークがですか?」
「そう。俺も音楽はフォークた。」
ふうん。勉強になるなぁ。
話題がスポーツになった。
「あ、俺、バスケの入団テスト受けてたんですよ。」
「そうや。俺はホークスのファンた。」
「あ、そうですか。従妹がバイトで福岡ドームでハーゲンダッツ売ってました。」
「そうや。俺はジャイアンツ戦のとき、ジャイアンツファンに囲まれてから、そこでジャイアンツの、文句を言ったら袋叩きにあった。」
「りんごが木から落ちる位、当たり前じゃあないですかぁー。」
その後、ホテルのバイトに行った時に仲間にマジでズラの人がいたと報告した。それからホテルの皿洗いはもう殆ど無くなった。
野菜のバイトはある。今日も。坂西さんは、金が無くて、健康保険を滞納し、今日は早退して市役所に払いに行くのだそうな。ズラのメンテにも金がかかるそうだ。そして、毎週のようにホークスの応援は行くのだそうな。
「先に保険払えよ、人間のクズですね。」
「そうた。クズた。はは。」
彼は去って行った。
坂西さんはマジでヤバい。世界と戦えるレベルを通り越して、世界の頂点レベルだ。
説明しよう。まず昼最寄りのデイリーで毎日弁当と一緒に
昼トイレに行くと大便器の個室から大きいな呻き声も彼だ。家は水前寺駅の側だそうだが、そこから乗り継いで、西熊本駅から原付で来ている。このおかしさは遠方の方には伝わりにくいが、あり得ないのだ。
そして、郵便局をミスが多くてクビになったそうだ。
「あだ名がミスターだった。」
とのことだ。
そこにもう一人、バイトの人がパーティに加わった。
さながら優秀なアスリートが県外の強豪校に行くかのやうに、東京に行ったそうだ。
優秀なワル。優秀なワル?ベジータ?そこで有名な暴走族に入ったそうだ。先輩に言われ。
桑名さんは、
「ここはピークになると所長とか皆リフトに乗って作業に入る。」
と言った。俺は内心、俺が来たからには俺が一人で何とかする、と思った。今年は出てこなくていい。長坂の張飛のごたる気持ち。ここは俺一人に任せろ。俺が来たからにはここは絶対抜かせない。
ピークが来た。案の定今年は誰も出てこなかった。マジで一気に六百ミリリットルジュースを一秒で、イッキ飲みして回復を図ったり、本気だ。まるで張飛やぁー。
「孔明君の後釜の人は、比べられて苦労するばい。」
「いや、俺はアスリートなので特別です。ははは。比べてはイケない。誰もプロアスリートに張り合わない。」
そう言えば、何かホテルが休業手当を頼んでもいないのにくれた。そして、何か説明会で呼ばれた。辞めるなら会社都合で、と。菜妃は大学生になっていたので俺は本人に気付かず、こんな若い人いたっけ、と菜妃を見て思った。後々気付いた。俺は、
「じゃソユコトで。」
と去った。
極力一般職はダルいので失業保険を当てにしよう。手続きに行った。
会社都合なので条件が素晴らしいではないか。
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