二十一章 清掃業にアルバイトを変える
今まで続けていたアルバイトを辞める事になった。何か職員になってもいいと言われたが、なったらずっと続けてくれとのことだったので辞めるしかなかった。
俺のメンタルはスポーツマンなので率先して体を動かし勤務していた。爽やかだろう?
で、次に清掃業に入った。原付で家から通う。職場の同僚は、ほぼほぼ、ヤンキーばかりだ。皆ちょっとやそっとのヤンキースではないので、むしろ心が澄み切ったやうな純粋無垢な悪である。なので気が合う。
タトゥーは職場仲間の半数は入ってるのではないか。前科もあったり。俺の一ヶ月後に入った奴は二十歳で子供がいて保保護観察中だそうな。
彼は熊野と言う名前だ。で、タトゥーがはいっていて、これを、反省してるから除去するそうな。
これは嘘である。俺は、
「消すよりも、ミッフィーのタトゥーを足してはどうか。」
と提案したが、却下だった。
彼らのおかげ?で車やバイクの世界に目覚めた。違うかも知れん。彼等の長所は乗り物の価値をしっかり認識出来ることだ。ただ、俺は
「原付で通勤していても実りはないな。」
とはなった。
確かにバイクは魅力的だ。バイクの免許を取りに行く事にした。前々から、うっすらとは興味はあった。もちろん違法改造等の予定は無い。
この職場はワルしかいないので、デフォルトで客の目を欺けるときは欺く。客にバレないならサボる。ワルだから。
例えば、警察関係の施設も、前科がある者は施設に入れないが、バレないのでこっそり入ったり。
まぁ、付き合ってみて、解るのは、盗んだバイクで走り出してパクられた職場の同僚達、今後は犯罪はしないだろうな、という事だ、皆。その人の雰囲気で何となく、それを感じる。
昼の休憩も、ヤクザと暴走族の話で盛り上がったり。俺に概論を教えてくれる、俺が質問するから。
この清掃業は色々得るものがあった。掃除のノウハウとか。諸々。
あとは皆ヤンキーなので、初見の窓のバラし方とか、テクっている。俺も負けてない。
作業中、備品を壊してもバレないようになんとかしたり。
一つ問題があるのは、朝5時起きの時とか、夜勤とかで、毎日二時間継続したトレーニングが不可能になった。
規則正しい睡眠が不可欠なので。まあ、当然トレーニング出来るときはしていた。ボールハンドリングとか、テレビを観ながらやったり。
何かの手違いで夜中のアニメが録画されていて、それきっかけで、ちょっとオタクなアニメを観るようになった。ボールハンドリングをしながらアニメを観ていたり。
リングのある公園に行って朝から晩までシュートを打ったり、新港の手前のちょっとした公園でずっーとドリブルを突いていたり。
ドリブルは疲れたら座ったまま続けて、それでも疲れてきたら横になって突いたり。永遠に繰り返した。
ダムダムダムダムダム。これを週二回、三回平均して二時間程継続した。上達の、決め手は能動性だ。
我々の業務は客がクレームを言ってこないかどうか、をクオリティの基準にしている。なので客より頭が良いのだ。
ここは十人が十人、バレないなら洗浄ワックスの仕様を、掃き拭きワックスで逃げて良い、と確信している。
更に、窓もバレないならスクイジー、ウォッシャー使わずに、からタオルで拭いていい、のだよ。
そしてクレームが来たときだけ偉そうに出てくるバカな社員や何かが、どれ程馬鹿なのか正確に認識している。
現場のアタマで行き、次の打ち合わせから全てをしているのはアルバイトの俺達なのだ。
ここの給料だが、最低賃金である。それでもまぁ特に不満は無い。
言い方を変えると、多分お金の使い方は、高給取りのヤツより、アホな使い方をしないらしい、低賃金労働力勢等は。これは大学の同級生に教えてやりたい。て言うか、人相が大学にいた頃より変わった自覚症状がある。朕はバイクに乗り過ぎてタフガイになってしまった。
話を戻すと、多分無骨に体を動かして、泥臭く金を稼ぐから無駄が解る時もあるらしい。
俺は有名大学を出て、今はこんなアルバイトをしているが、金が欲しくて大卒の学歴を活かす事は常に最善で、最良という訳は無いのかもな。これでいいじゃん。
欲深さと優秀さを比例させて金を取る趣味が無いだけさ。資本主義社会なのにな。豚の論理で俺は動かないだけだ。
少なくともこの事に気付いてしまった事実はある。スポーツマンは爽やかに行こうではないか。財布の中身も爽やか、かも知れん。
後はバイクに乗ったことで多少人格が変わったと思う。東京なぞは車もバイクも窮屈だ。電車なぞ最低だ。もう絶対東京に帰りたくない。
電車よりバイクだろうが。ツーリングスポットも天下の阿蘇にすぐ行けるしな、ここに住んでいれば。
清掃会社で一年経った。そしたら、新人が二人入って来た。野山、と赤木。俺と大体同じ年齢だ。
野山は、小倉北区出身で方言が独特やねん。
「わしは部落出身じゃけー、親戚知り合いワルしかいない。」
と初日に皆の意気投合出来そうな百点満点の挨拶をした。俺は、
「そうなんですねー。もっと詳しく教えて。」
と聞いた。
「まあ部落しか住めない団地に親戚ばかりで暮らした。そこに道を間違えて迷い込んで入った奴はまずただで帰れない。」
「おおー。他には。」
「学校の廊下をバイクで走っていた?」
野山は饒舌だ。皆と打ち解ける。気が合うんや。色々聞いたが、変な芸能人の話は聞いて良かったと痛感した。機会があったらそいつは全力で避けよう。そいつがどんなやつか詳しく聞いたが、今ここでは言及はしない。ありがとう。野山さん。
もうこのような話題が山程あるのが、この職場だ。それか馬鹿な同僚の文句を言っている。
「狂っている。」
とか。
綺麗に、嫌われている人は全員から嫌われているし、そいつ等は頭だけは悪いので鈍感で助かる、というかノーダメージ過ぎて目障りだぞと。
「何でこんな奴が人権を獲得しこの国てをやっていけてるのかな?」
人間性で人を差別する分には問題無い。むしろヒーローだろうが。
野山さんなんか俺のヒーローなので、この前の土曜日のエピソードを披露したい。
お前ら聞け!男一匹が命を賭けて諸君等に訴えかけているのだぞ。
パン屋の洗浄ワックスに行きました。そこのお客さんから差し入れのパンを帰り際に人数分頂きました。
ビニールに包まない、ホットドッグ的な紙に乗せるやうなパンが、一個だけ、資材車の床に落ちたのを、野山さん、躊躇なく
「マーさん、はい、パンです。」
「うん?ありがとう、むしゃむしゃ。」
全員ポーカーフェイス。全員。
「全員、仲良しこよしやぁないですかーぁ(笑)。」
マジで俺のヒーロー。
もっと凄いけど、彼のポテンシャル。その他のエピソードの話は止めとこうよ。え、聞きたい?
ほーして、野山さんは鬼のようにバス釣りが好きらしい。今度一緒に行く事になった。
「釣りしてなかったら、悪い事してる。」
「ですよね。」
もう一人の新人の赤木さんは、もう、バイクが好きである、との事でした。
俺はこの二人とかの後輩じゃなくて良かった、この二人じゃなくても、誰が来ても俺はきっとそう思うかもな。
野山さんと釣りに行く前日、俺は仕事帰りにタックルベリーに寄り、店員さんに、
「オールスターでよろ。」
店員さんは、デュエルのシャッド、デプスのスピナーベイトを取って、俺に渡した。
まだ取ろうとする店員さんに、
「メガバスってどれすか?」
メガバスは名前だけ知ってる。それなのに気になる。
「あ、メガバス。じゃトップでも買えば?」
「お任せで。」
「御意。」
なんか、ワイルドボア色のポップXと、メッキに、グリーンバックのペンシル、ドックXを店員が選んた。これ雰囲気的にアメリカメーカーかな?
店員は、会計の時に、
「お前、いいのばかり取っていくなぁ!」
と言った。けっ!まいどあり。
俺は今迄、技量的にダウンショットでしか釣れないと思っていたが、明日ハードベイトで釣ったるわ。なぜならこんな高い値段のルアーは信じられるから。
野山さんと行く、立岡の川を登り、オーバーハングで左右一匹ずつ。
「は、やっぱり、デュエルのシャッドでしたよ。おほほほ。」
地形の都合上、ラインを手で手繰ってパワーリフトしたが、十二ボンドのラインの限界を手の感触で感じながら持ち上げたので、このバスの重量は十二ポンドです。
野山さんは傍観している。
次は猫池だがボーズ、すぐ中堤と、鐙のあそこに行った。鐙で、風が吹いたのでスピナーベイト。あ、釣れた。
「野山さん来たよ。」
この池はど真ん中に先日野山さんがビッグベイトをぶち込んでいた。サイズはまあまあ。
で立岡に昼三時位に戻り、ゴルフの進入禁止の所に野山さん進入してダイワのピーナッツで二匹釣った。
俺には釣れた理由がわかった。三時はバスはローテーションにおやつの時間なので、アドレナリンバリバリのリアルな造形のルアーとは真逆のピーナッツなんだ。捕食のときのテンションが軽くつまむ程度の気分のバスにアジャストしとおと?
俺はあいにく近しいクランクを持ってなかったので憂き目にあった。
この野山さんが二匹釣るとき、丁度熊野が遊びに来た。
まあ、おもろい。また来よう。その日、夜街で職場の焼き肉に行ったが、野山さんも熊野も、俺も行った。
「孔明君ばっかり最初釣ってたとき正直面白く無かったです。」
じゃあどうしろと言うんですか?
「あと、夏は朝夕マヅメはトップウォーターが釣れるけぇ。」
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