十二章 笹木君待ちです

 三月位に、バンドでライブをしようと、武田君と計画している。今は一月だ。俺は、高校は、もう適当にこなしている。今は何かと理由を付けて休める。

 俺はどうしようか進路を悩んでいるのか、悩んでもいないのか、自分でも判らない。まぁいいや。そんなことは、

 武田君はと言えば父親とよく話して父親の脳を柔らかくして、音楽専門学校に行く許可を得た、とこの前言っていた。すげぇな。

 武田君は中々の進学校なので親の説得も大変だったろう。大学に行ってもプロミュージシャンになる人はいるが、彼は、もっと硬派にいきたいそうだ。なんかノリが武将っぽい。姿勢が武士だ。

 武田邸の武田君の部屋で、今は彼と会議している。武田君はバイトで買ったジャズベを弾いている。弾きながら、話す。俺は、

「笹木君にギター頼んでオッケーだった。ただ笹木君の受験が終わってから。」

と言った。

「ふうん、笹木君がオーケー。ドラムは。」

俺達は、レッチリをしたい。チャドのコピーしきる奴、そうそうおらん。おるわけないやろ。

「野田山君がやってくれたらなぁ。笹木君経由で聞くか。」

「どうかな。」

野田山君のバンドはスーラという名前だ。スーラはティーンズミュージックフェスティバルの地元の覇者で、ラルクのライブの、余興のコピーバンド大会とかも九州で優勝している。

 ちなみにラルクファンのマイキーもそれ見ていたらしい。マイキーによるとスーラ以外は女性ファンがボロクソ言っていたらしい、「なにあれ、ハイドのつもり?」とか言っていたそうだ。厳しい世界なんだからね。ねっ(わかるでしょ?ねっ!なね。)。

 そのスーラの中で一番演者として認められているのがドラムの野田山君だ。

 その野田山君は、俺の高校の友達の笹木君とバンドを組んで中学時代にミスチルを文化祭でった。

 それをビデオに録画したのを笹木邸で前に見た。まあしっかりしていた。ちなみに、その時のボーカルはマークツー高校で武田君と同級生で、友達なのだ。

 世間は狭いものでスーラのギタリストも武田君の知り合いかなにかだそうだ。クリスタルモールという、浜線という地域のショッピングモールにあるヤマハ音楽教室で、スーラのギタリストと武田君は、同じ先生からレッスンを受けている。武田君は毎週月曜日夜9時から三十分だ。

 そしてスーラのギタリストは二人いるが、そいつは上手い方だ。もう一人は名前も知らない。いや、武田君と同じ教室のやつの本名なんだっけ。まあいいや。

 そのうまい方はスタインバーカーというギターを使う。ヘッドレスだ。それはいいんだけど、武田君は毒舌なので、その件に関して、そいつが顔がイカに似てる、という話題に前になった。上手いと悪目立ちする。

 その時、ギターヘッドが、三角でイカみたいで嫌だからヘッドレスなんだろうとのことた。同族嫌悪的なことだろうと二人で結論付けた。

 イカの件は三段論法を武田君としてこのように結論が出て、以来、俺も武田君もイカとそいつを読んでいる。

 バンド活動においては攻撃的な発言はポジティブなイメージだ。技量と口撃力は比例するのだ。ロックンロールなので。ビートルズも相当だ。ビートルズはまじでその典型的ないい例だろう。

 イカの名前は俺は知らないどころか、そいつのその結構な面構えすら俺は見たことがない。なのにイカ呼ばわりはする。人間て面白い。

 二回言うが、それなのに、俺は武田君とイカイカ言っている。そういうときの武田くんの喋り方もまた、残酷なイントネーションをしている。彼はクラスメイトを皆クズだと言って一人大学進学せずベースを弾くというのか。なんてやつだ。

 まじで俺と武田君は常に攻撃対象を必要としているのかもしれない。話がイカにそれた。

 ま、そんなスーラの野田山君に俺は一回会った事がある。笹木君と遊んでいたときに何か野田山君に笹木君が用があって彼の家に行ったのだ。笹木君と野田山君は中学の同級生だ。

 野田山君の家は商店で、店舗の敷地の半分のスペースにドラムを置いて野田山君は練習していた。

 大きな通り沿いの店なので騒音の苦情とかがなさそうだった。その時は笹木君が二三言野田山君と話して用は済んだ。

「野田山君、レッチリとか好きかな。」

俺は言った。武田君は、

「どうだろ、好きならやってくれるかな。」

と言った。

「まずは聞いてみようか。」

「そうね。」

そうか。武田君が、

「そう言えばアラジンで牛タン切らせてもらった。

「へぇ。」

武田君はずっと近所の焼き肉店でアルバイトをしている。バイパス沿いの店だ。

「デカかった。」

「ふぅん。」

全く想像が付かない。

「そろそろベース買うの?」

俺が聞いた。

「そうね。そのうち楽器屋に行こうかな。金も貯まった。」

武田君はMr.Bigを弾きながら俺と話している。いつもの事だ。

 そして彼は何よりもコカコーラが好きでいつも飲んでいる。コカコーラ一択だ。

「というか、牧場行こうよ。西村君。」

嗚呼、マジでか。武田君はウエスタンのノリが好きで、こうやって、ここ最近、俺を住み込みの体験に行こうと誘っている。

「アキクニは?」

俺は、武田君に言った。アキクニは俺の中学の同級生で武田君の通うマークツー高校で武田君と友達になっているのだ。俺もまあまあ仲は良い。連絡先とかは知らない。

 武田君は、

「いやいや、アキ君はそっちの人じゃないよ。」

「俺もだと思うけど。」

あまり能動的に牛さんと関わりたいという心理にはいたらない。普通そうだろ。

「いやいや。行こうよ。西村君。」

まあ、

「であるか。是非に及ばす。分かったよ。」

「うんじゃ予約しておく。」

武田君のウエスタンフリークは前からだ。夏のティーンズでもウエスタンハットを被ってステージに立っている。

 この後暫く武田君の毒舌を聞いて今日は帰る。

「なら牧場の件は予約しとくから。バイバイ。」

「お邪魔しました。チャオ。」

帰りはバイパスを真っ直ぐ西に進んでそれだけ。あとは曲がって五分で帰り着く。

 武田君は、俺の高校の友達の富畑君と堀ノぐっちゃんと同じ中学だ。あと、エッサ。

 そう言えばエッサは最近ボクシングを始めた。家に遊びに行った時にプロテインがあった。エッサは、なんか消防士になりたいそうな。消防は難関らしい。

 武田君は、富畑君とエッサとは仲が良いが、堀ノぐっちゃんとはよろしくない。堀ノぐっちゃん曰く武田君は、

「喧嘩っぱやいのに喧嘩が弱い。」

との事だ。それをエッサに言うと、

「ひどいなあ、それはひどい。」

と言っていた。

 そう言えば、この前武田君の家に行った時に顔を負傷していて聞いたらクラスメイトと喧嘩したそうな。武田君は相当人を選ぶとは思う。

 クラスメイト全員カスだと心から発言している、普段から。口調からマジで思ってるのと、俺にマジで伝えたいのだと分かる。クラスメイトがゴミのようらしい事を。頭のが良すぎるのかな。武田君は。

 結局進路はどうしようかな。決めきれない。音大でもいいかも知れん。軽音楽の専門学校に武田君は行くそうだが。何も決まらないまま卒業してしまいそうだ、間違いない。

 実は一年と少し前からマジでピアノの教室に通っていた。ソナチネ迄いった。高校から割と近くの先生の家に毎週通っていた。なので学校にブルグミュラーとかを持って来ていたのだ。

 有名な先生で、地元の音楽大学でも教えているので、俺はマジで練習していた。失礼だろう、有名な先生なので教わる姿勢には気を付けたいものだな。

 ただ、そろそろ辞める事になるかもしれない。高校卒業して通いにくくなる。家から遠いし。その先生からは音楽理論もしっかり教わった。というか今ショパンの二拍三連のコツが掴めないで困っている真っ最中だ。

 まあ、笹木君に明日聞いてみるか。野田山君を誘ったりしてもらいたいので。やるのはまぁレッチリかなぁ。その他は皆の希望で。OKだったらの話だが。

 次の日、学校で笹木君に聞いてみた。

「あ、やろう。野田山君に聞いてみる。ただ、俺の受験が終わってから動き出してくれ。受験に専念したい。野田山君には直ぐに聞いてみるけどね。まだ、俺が受験をしている途中でしょうが。」

「分かった。」

と俺は言った。なぜ、頼まれもしないのにライブをするのかな、そこにライブハウスがあるからだ。物事の根源に立ち返ってしまった。まあ、理屈抜きに面白いからかなぁ。

「じゃ。」

「じゃ。」

ナシは付いた。笹木君が野田山君を誘ってどうなるのか。マジで謎。まっ、でも後は野田山君次第なので、こっちは待つしかないし。

 今学校はもう全員がきっちり出席はしていない。終わりが近付いている。古城君は出席してきているので卒業出来そうだ。

 俺ももう卒業は余裕過ぎる程には定期テストの点数は足りている。そしてもうぼーっとしている。

 学食は最近チキンカツカレーを良く食べる。朝っぱらから食券を買っておかないと売り切れる。その次は牛丼かな。つゆだくで甘い。刻み海苔がかかっていてな。あまりに甘いので少し醤油をかける。

 ここ最近、卒業間近なので、だらだら過ごせる、ダルいのは英語とかの授業である。とっとと最後の授業が来ないかな。無理無理。おさらばが近いので、先生達と距離が生じ始めている、所詮、大人同士の関係なのだ。

 放課後が来て、チャペルの横で軽くバスケをすることになった。メンバーにはジョニー先生と、あまり面識はない外国人の別の先生もいる。確かキリスト教関係の先生だったっけ。よく見かけはする。あとは、もうすぐ帰国するアンソニーもだ。坂町君、ニッチン、と俺。

 ニッチンは中学時代はバスケ部だった。一回練習試合を俺の中学としたらしいが俺は全く覚えていない。記憶に無い。

 俺が切り込むと、

「ドライブ。」

「ドライブ。」

と英語で外国人枠が言う。ワット?経験者っぽいのだろうか。

 暫くして、俺が行きつけのコンビニに皆の飲み物を買いに行く。皆に、

「何がいい?」

「アクエリアス。」

とジョニー先生。

「アクエリアス。」

もう一人のはじめましての多分キリスト教の先生の方。

「アクエリアス。」

とアンソニー。ふぅん。頑なにアクエリアスか。何があった?外国人枠はアクエリアス一択ですか。日本人は。

「コーラ。」

「僕はユンケル。」

だそうな。

「任務了解。」

俺はゼロシステムの付いたブリジストンの自転車に搭乗した。俺しか乗りこなせない。ピーキーなセッティングなので。当然ゼロは何も言ってくれない。

「コメントは差し控えさせていただきます。」

といった感じ。

 コンビニはスパーという名前だ。高校の裏門から道一本で2分で着く。サクッと任務完了。皆に渡す。俺はアイスにした。異端者なので。

 そう言えば、アンソニーは将来海軍になりたいとこの前言っていた。ちょっと日本人とはメンタルが違うのだな、とだけ感じている。お別れ会的なやつも今度開催する。達者でな。

 バスケを暫く続けて解散。気ままに帰る。家に帰り着き、すぐギターを弾く。俺はあまり高いギターに興味がない。良さが分からないから。あまり生々しいプレイを目にした事が無いからだろうか。有名バンドのライブに行ってもいい音だなとかならない。

 安いギターで十分じゃないのか。そう思っている。今のところは。それよりギターソロが弾けると嬉しいけど。ちゃんと4連符の音が鳴ればなぁ。弾きながら常にそう思っている。

 やっぱりテレビでアーティストを観るときも、ギタリストのリードプレイは派手で目立つから素晴らしいなぁという感想しか出ない。

 三十分位弾いて、今度は音楽雑誌を眺める。ギブソンやフェンダーUSAも通販のページにあるが今ひとつ憧れない。ギブソンはラッカー塗装だそうな。よく分からん。

 日が明けた。適当に学校に行き、授業を軽く流す。今、進路についてばかり考えているが、どうしていいか答えが出ないので、ただ時間が過ぎていく。

 それは適当に流されるまま、ぼうっと何も考えていないで卒業していく事と表裏一体である。

 不登校だった古城君も出席日数が足りそうだ。このままいくと卒業出来そうである。まぁそんなもんだろう。俺は、ここからおさらば出来る事は喜びでしかない。

 休み時間に笹木君が俺の教室にやっ来た。

「コウメ。野田山君に聞いたら、やるってさ。」

と笹木君は言った。

「あ、そう。じゃあ予定通り笹木君の受験が終わり次第だ。」

と俺は言い、

「ならね。」

と笹木君は帰って行った。

 嗚呼そうか。携帯で武田君に連絡して野田山君のオッケーを伝えた。今日武田君の家によって帰ろうか。それも聞く。

 武田君は今日はアルバイトらしい。では後日。俺は今日はパルコにでも行くか。楽器が見たい。

 放課後、パルコの島村楽器に向かう。自転車で10分位か。距離はそんなに高校から離れていないが、でかい交差点があったりして信号待ちが長いのでタイムロスする。お。島村楽器にトーカイタルボがある。試奏した。

 10万か。あまり良い感触はないが、見切った感も無い。つまりよう分からん、ということだ。という事でした。

「ありがとうございました。」

店員さんにお礼を言う。

 エフェクターのコーナーで出水のダーマエ君が持ってたコルグのマルチがあった。ダーマエ君の演奏を聴いていてポテンシャルは分かっていたので、うーん、どうでしょうかー、えぇ。やはりー、

「すいません、これ下さい。」

「ありがとうございます。これですか。」

「そうです。」

これそんなに高くないんだな、と思いながら店員さんに、用意してもらっている。

「まだもうちょっと見たいので。」

「わっかりました。じゃ会計は後で。」

店員さんはブツをレジに持って行った。

 俺は店内をさろく。安いヤツないかな。ギブソンやフェンダーUSAがあるが、欲しいと思った事が無い。

 俺は支払いを済ませ帰った。パルコを出て、櫻井総本店という靴屋に入った。あ、

「これ、履いてみていいですか。」

エアジョーダンシックスが復刻されていた。黒だ。すげぇ。ゾイドの復刻も最高だった。

 店員さんやって来た。

「いいですよ。サイズは?」

「二十七で。」

「あ、ありました。」

更に店員さんは、

「はい。」

と渡してくれ、

「ありがとうございます。」

と、俺は言い、 履いてみて、うーん、うーん。マジで悩む。買おうかなぁー。初めてシックス見たわー。俺は

「ありがとうございました。ちょっと考えます。」

と言った。買うかどうか究極だ。

「わかりました。」

と店員さんは答え、俺は店を後にした。

 さっさと帰宅買ったブツをぶっぱなす。おー。イケてる。感想は以上。この地元で友達の進路はまじでつまらない。平凡。

ヤミーは農業高校なのに、ホテルのベッドメイクの仕事をするそうな。園芸果樹科だったのにな。

 ピロヒは地元の私立大学に行く。指定校推薦だ。この大学ならオラでも今から行けるわい。これはお決まりルートだ。

 濠丸は北九州の姉と同じ大学に行く。姉は3月で卒業だから入れ替わるそうだ。同じアパート。

 濠丸もピロヒと同じ高校だ。西の進学校。嗚呼おめでとう。あとのヤツは知らん。どうせつまらない人生なんだろう。

 最近、未だに交流がある中学の友人が、こいつらの理由に気付けた。家が一番近い奴らだった。

 最近も、この四人でヤミーの家で瞬獄殺の応酬を繰り広げた。ピロヒの家のときも多い。最低、月に三回は四人で遊ぶ。すき心を慰めがたくてな。僕のイケない所なんですけど。

 次の日、放課後に武田君の家に行った。

「ジャズべ。」

「そうそう。スティングレイと悩んだけど。フェンダーUSA。」

「いくらだった?」

「十二万闇いかな。」

ナチュラルのボディにローズの指板だ。おおーっ。武田君は指でしか弾かない。今はレッチリを弾きながら俺と話している。

「野田山君、OKだったね。」

武田君は言った。続けて、

「という事は、ライブが終わったら牧場ね。」

「そうね。マジで行くと。」

「マジマジ。楽しいって。」

「であるかぁー。」

俺は何かを頼まれたら、であるか、と是非も無し、しか答えを知らない。

「良いことあるよ。牧場で。」

と武田君。

「え?」

俺は返す。

「ま、行っとこう、行っとこ。」

武田君はノリノリ。ベーシストはノリノリでグルーブしてもらわないと困る。ベースも乗りで器種を選べよ。ロックじゃん。

「あとは、笹木待ち。」

「そうね。」

やる曲も何もかもは笹木君の受験が終わってから相談して決めることになっているのだ。笹木君は最近「ほうせい」に行きたいとか言っている。俺はその大学を全く知らないけど。

「あ、武田君福岡に行ったら、クリスタルモールの音楽スクールの武田君の行ってる時間帯に俺行こうかな。入れ替わりで。」

「あ、そう。今度、先生に言っとく。」

「ありがとう。月曜夜九時か三十分だったよね。」

と俺は聞いた。

「そうそう。一番遅くて次がいないから少し長くやってくれる時がある。」

「へぇ。」

というか俺は熊本に残るのか。今そういう発言をしたような。

 俺は、過去に武田君に、スティングレイ何か丸くね?って発言したが、暗示だったのかは謎。意外と周りの人間の認識は人に影響するものだ。

 しかし、武田君は既に結構大きな打痕をもうジャズべに付けている。ボディサイドのエンドピンとかジャックの辺。打痕と呼ぶには凹み過ぎている位だ。

「ここで打った。」

俺に教える。あまりウジウジしない。そんな武田君は嫌だけどね。気色悪い。

 この日は夜十時半位迄武田邸にいた。家までタラタラ自転車をこぐ。東バイパスという道だ。 一時間掛らない程度のゆっくりさ加減なんだけど。

 はぁ野田山君かぁ。まぁやるだけやるしかない。なんせナンバーワンドラマーだからなぁ。ふぅー。と常に思っている。

 武田君もスラップ上手くなってるし。笹木君も上手いしー。嗚呼。やるしかない。あー、やるしかない。

 帰宅してからも頭の片隅には常に今度やるライブのことがある。部屋にはプラモに、ギター、コンポ、漫画、色々とにぎやか。プラモに関しては今年は豊作だった。赤い人の最後の機体がMGで夏に出た事とか。最高だった。

 高校の近くの電車通り沿いのプラモ屋で予約して、発売日にでっかい箱を抱えて帰宅しているときに限ってクラスメイトの女子とエンカウントしたのも良い思い出です。その時の俺はめちゃくちゃ格好良かったに違いない。

 ゾイドがまさかの復刻でアニメもあったしな。最高の一年だったわ。マジで高いギターとか買わずにプラモ作っとけばいいじゃない。何が違うん?高いギター。

「So what?」

って感じ。

 笹木君の受験が終わった。国公立コースという特進クラスの彼は、

「ほうせい、ほうせい。」

言って、この度一連の受験を終えた。

 早速ミーティングの日程を決める。俺だけが他の面子から家が離れまくっている。初っぱなは江津湖の側のジョイフルで会う事になった。やる曲とライブの日を決める。

 笹木君は結局「ほうせい」大学は無事に落ちて、それより格式の低いところも残念なことに滑り散らかした。というわけでした。浪人するそうだ。

 俺はクラスメイトとかがシコシコ受験勉強している最中さなか酒と薔薇の日々を送っていたような気がする。先週の記憶、そんな昔の事は覚えていない。卒業後とか、そんな先のことは分からない。刹那的なのだ。頭が良すぎる。

 富畑君も浪人らしい。ニッチンは地元の公立大学に合格した。荒杉君と太田黒君は隣の県の私立に行く、四流大学に。おめでとう。

 そう言えば、太田黒君は、

「藤美ちゃんに落ちるからやめとけと言われて。ムカつくから受かってやった。」

とか言っていた。受かってもムカついたままでいた太田黒君は。これだから馬鹿は困る。

 そう言えば、なんか地の頭の良さを調べるようなテストを二年のときにやらせていたっけ。それで担任の藤美ちゃんは太田黒君を止めたのかな、あの太田黒君のキレ方にそれを感じた気がする。

 堀ノぐっちゃんは地元の私立のナンバーワンに進学する。八流大学に。ただ下には下があって地元にはあと私立大学が幾つかあるが十流と、十一流大学となる。なので大したものだ。

 坂町君は浪人する。クラスメイト以外だと、出水君とモッツァレラ氏は浪人。俊ちゃんはパソコン関係の専門学校だ。まあそんなところか。あ、エッサは消防士を落ちたので浪人して、また消防士を来年受験するそうな。 

 何か俺に富畑君が、

「一緒に予備校トゥギャザーする?」

とスカウティングしてくる。

 まあ、それでもいいかもな。

「わからないの、だって、わからないもの。こんなときどうしていいかわからない。命令ならそうする。碇君は私が守る。」

と俺は富畑君に返事している。そしたら富畑君は、

「出撃。」

と俺に命令した。

「はい。」

と俺は答え、富畑君は続ける、

「今度予備校のパンプもらったり説明受けに行こう。二箇所巡ろう。」

俺の行けないところはノーという言葉を知らない事だ。答えはいつも、

「であるか。」

か、是非もなし、しか無いのだ。

「じゃ今度。」

「任務了解。」

だ。

 何日か経った。今、江津湖の側のジョイフルに集合している。なんか俺が野田山君とバンドを組んで今、ファミレスで打ち合わせしている絵がしっくりこない。

 彼は名うてのドラマーで有名人なのだから。まぁ笹木君の友達なんだけど。因みに武田君と野田山君は同じ音楽専門学校に進学する。

 挨拶すると、武田君はルーティンであるコーラフロートをシルブプレする。 

 とりあえずビールみたいに、

「とりあえずレッチリ。」

「野田山君やりたい曲ある?」

「あるよ。」

「武田君は?」

「あるよ。」

野田山君は最新アルバムのタイトルナンバーが、武田君は母乳のスラップのソロがある例のやつだそうな。

「最新アルバムの一曲目はとりあえずやっとく?」

誰となくそう言い、

「そうね。」

「そうね。」

「だよね。」

となった。鉄板らしい。俺は野田山君がどう思うかと気になりながら、

「日本のライズとかは?」

と言った。

「あ、俺ライズやりたい。」

あっそうなんだ。野田山君は。

「じゃやろうか。」

持ち時間は三十分で、野田山君のスーラというバンドも出る。こっちのチケットは俺と笹木君と武田とでさばく事にした。

 笹木君が、

「ライブと言ったらディープパープルでしょうが。」

と言い、誰も反対しなかった。笹木君はギターよりキーボードが得意なのだ。必然的に俺がギターボーカルになる。

「曲は?」

「あれあれ。」

「あ。あれね。」

「そうそう。」

という事でした。

 あとはバンド名は、俺が、

「アイアンコングにしてちょうだい。」

と大御所女優のイントネーションで頼んだので、そうなった。

「あと三曲位か。」

「あ、俺ルナシーやりたい。」

「俺も。」

「俺も。」

「あ、じぁあ俺も。」

と、笹木君が言うと。残りの三人で、

「どうぞどうぞどうぞ。」

とハモった。息ぴったりだ。

 曲は一番格好良い初期のやつに決まってるでしょうが。

 あと二曲は笹木君がレッチリから一曲選び、俺がアニメソングから一曲選んだ。

「あ、じゃあ、三月二十日か?了解。」

と、スーラの対バンの一枠に収まりスケジュールが決まった。

「スタジオの練習は週二あるかないか位のペースで様子見よう。」

「スタジオどこにする?」

「健軍文化ホールは?」

「西村君遠くない?」

と武田君は俺に言う。

「いや、大丈夫よ。」

と俺は言った。

「じゃあ健軍文化ホールね。取れないときはミュージックファームにしようか?」

「そうね。」

「オッケー。」

「分かった。」

じゃあ笹木君に俺は、

「あ、じゃあリーダーは笹木君で。全員友達なので。」

「そうね。仕切るの大好きじゃん。」

笹木君は、

「オッケー。」

と言い。俺は、

「スケジュールの管理とスタジオの予約を頼みます。」

と言った。笹木君は、

「わかった。」

と答える。

 一時間位で解散した。ライブの本番の直後に俺と武田君は牧場に体験に行くのでその決め事もしないといけない。

 俺は家に帰宅した。嗚呼ディープパープルのあの曲をするのか。英語も覚えないとなぁ。CDと歌詞カードを準備をして作業に入る。

 キャンパスノートに歌詞を移し、CDを聴きながら発音をカタカナを駆使してノートの英語にルビを打つ。レッチリはラップもある。

 レッチリの方がディープパープルより聴き取りにくい。良い意味で何言ってるのかわからない。そこが魅力なのだから。

 後は後日、笹木君のパープルのバンドスコアをコピーし配るし、ライズは耳コピして笹木君とギターパートを打ち合わせせなんけん。

 自動車学校も卒業式が終わったら行く予定だ。まぁ今はバンドをやらないと野田山君いるので沢山練習しないとヤバいのでやるのだ。

 何日か経過してスタジオで合わせる練習も進んだ。主に健軍文化ホールでやっている。俺はソフトケースを背負い自転車でバイパスの西端からせっせと通う。

 今日もそうやって健軍文化ホールに到着した。パープルの曲を合わせたが。

 通した。しかし俺は全くソロが駄目だった。周りのメンバーは何も言わない。俺は馬鹿ではないのでこの状況で、やるべき事は解る。

 家に帰るが帰って来るまでもずっと練習しないとイケないいう気持ちが強く思考を支配し続けた。当然今もだ。

 実際にテレビで映画を観るときもギターを弾いたまま観た。ヤバいので。

「ヤバい、ヤバい。」

ずぅーっとギターを弾いている。きちぃ。はぁはぁ。嗚呼難しいなぁ。

 次のスタジオ練習の日が来た。パープルの例の曲をやる。

「バーーーーーーン。」

終わった。武田君が、

「弾けるね。」

と言い、

「ああ。」

と俺は返事した。他の二人も武田君と同じ事を言いそうな表情だ。

 この日はスタジオ練習の後、真っ直ぐ帰った。あ、明日は卒業式だ。

 日が明けた。完全に卒業式は無価値だ。え?違う?心残りはキリスト教の高校だったのだが、

改宗に失敗した事だ。俺がじゃなくて、無宗教にしようとしたのだよ。この高校を。スケールが違う。

「クソがぁー。」

俺は今日卒業するが諦めんぞ。

「アイアム、ア、アンチクライスト。」

俺がキリスト教に屈する訳ない。負ける訳がない、

なぜなら俺は義によって立っているのだから。このままではまだ終わらんよ。一端退く。

 式の最中に横の女子の野丸のまるさんと、適当に話している。

「俺の名前だ。」

式では一人一人名前を呼ばれ返事していく方式だ。

「はい(元気です)。」

適当に返事していく。次の野丸さんもだ。こんなの適当。

 マジで言ってることが心に留まらない。校長の挨拶とか全部。俺は野丸さんに、

「まる子のラスボス誰か知ってるか?」

と言った。

「いや。」

野丸さんは言う。

「たまちゃん。たまちゃんには気をつけろ。」

「わかった。」

「メガネの奥の目!」

俺が言った。

「怖。」

野丸さんが返す。

 あ、式が終わった。教室に戻り清々しい気持ちで解散した。チャオ。

 帰る前にテニス部の後輩が花を渡すそうだ、と坂町君に言われた。

「であるか。」

校庭付近に行く。適当に受け取る。荒杉君もメンバーらしい。

俺は某後輩に、

「後輩をあんまりパシリに使ったりしてはいかん。」

とだけ言った。

「御意。」

某後輩はきょとんとしているが、そう返した。

 マイキーと適当にチャリで帰った。嗚呼、清々しい。マイキーは、これから上京の準備とかあるだろう。

 俺は明日富畑君と予備校巡りだ。まぁそれもよかろう。その後もスケジュールは埋まってる。ジョニー先生の家でバーベキューを皆でするという事だ。これは命令だ。命令ならそうする。そして、自動車学校にも行く。謎にニッチンと俊ちゃんと、管三郎君とで三井グリーンランドに行くし、ライブもある。そのライブの後はベーシストの武田君と牧場に一週間体験に行く。俺は忙しいのでマネージャーが欲しくなる。その時は卓球と軟式テニスは事務所NGにしてもらおう。あと、カントリーミュージックも。

 日が明けた。十時になってから富畑君とまず地元の有名な壺溪塾こけいじゅくに行った。富畑君は能動性が高い。ミー、ノット。

「うん。まぁまぁか。」

富畑君が言った。

「そうね。」

雰囲気と印象は共有しまくりで、同意見である。

「次、代ゼミ行こうぜ。」

富畑君が言う。

「わかった。」

壺溪塾からめちゃめちゃ距離がある。駅の側だ。

 到着した。二人で中に入る。なんか雰囲気がわろからず。説明してる職員さんもしっかりしてる。富畑君も

「ここで、よくないか。」

と言う。

「そうね。」

ふと、同じように見学に来たであろうヤツが俺に、

「西村孔明。」

と言う。しっかり目が合いまくったまま。俺は誰かわからなかった。

 なんだこいつ。こいつ動くぞ。何方どなたか知らないので、そのままスルーして富畑君と階段を下りて行った。

「もうここでいいんじゃ?ここにしようや、コウメ。」

「そうね。」

食堂が一階ある。

「食堂行こう。」

俺は言った。

「おう。」

「で、食ったら今日は帰るか。」

「わかった。」

食堂に入る。うん?白身フライ丼ていうのがある。なんだこれ。注文してみた。

 出来たので受け取る、どれどれ。

「なんじゃこりゃ!」

カツ丼のカツをピッチャー交代して、白身フライが登板しちゅう。まっこと度し難いセンスぜよ。味はやっぱそんな感じ。朝敵ぜよ。

 食べ終わり、白川沿いを下り近見まで行き、富畑君と解散した。

「じや入学式で会おう。」

と富畑君が言った。

「わかった。バイバイ。」

「じゃあな。コウメ。」

川沿いで富畑君と別れた。

 何か納豆炒飯を作ろう。竹輪も入れるので包丁でカット。と、自分の中指の左手の指先を皮を削いだ。ヤバい。これは。ギターヤバい。

 後日、スタジオで皆に報告した。明らかに支障出まくり。メンバーは特に気にしていないようだ。もう本番近いので、回復は間に合わないな。奇跡かな。

 三月二十日が来た。ライブ本番だ。上通りというアーケードにあるライブハウスに集合だ。その前に俺はパルコで弦交換した。

 ライブハウスの名前は「2000GTR」だ。対バンは天下のスーラと同級生位のガールズバンド。リハでボーカルのボリュームをやや落とすようにPAにリクエストした。

 スーラのスタインバーガーの烏賊君はエアジョーダンシックス履いてるやんけ。俺は結局買わなかったヤツ。スーラの感想は以上だ。

 あと、強いて言うことがあるならば、もう一人のリズムギターはグラスルーツのロゴをステッカーで隠していた。いや、ESPではないのは音で解る。俺でも解る。

 笹木君は俺がこの前買ったコルグのマルチを使っている。貸したのだ。俺は前から持っていたショボマルチエフェクターだ。彼はメインギターなのだから。

 リハが終わり本番前の空き時間にコンビニに行きおにぎりを買って来た。普通ボーカルは食わないものだな。食うと声に影響が出るから。

 今回はそんなの知らんので。おにぎりを食べる。流石に一個だ。パクパク。

 武田君は、ウエスタンハットを被っている。MCは笹木君に丸投げだ。ボーカルの俺は喋らない。喋るのは好きくない。

 本番が始まった。レッチリから演奏した。俺のチケットノルマに貢献してくれたピロヒがメンバーと観に来ている。メルシーボク。本番はやっぱ集中力が違うな。

 ギターはジャズコーラスをスーラのサイドギターの方がアンプで歪ませていたらしく、俺のエフェクターはクリーンのアンプのセッティングだったので音がヤバいヤバい。指先も負傷してるし。

 演奏が終わった。笹木君が、ハモらなかったので理由を聞いた。

「緊張した。認めたくないものだな、自分の若さゆえの過ちっちゅうモンは。」

「あっそうなんだ。」

 終わって、ライブハウスの、オーナーに挨拶に行った。

 声を掛けてくれるが、まず笹木君に

「キーボード安物過ぎる。」

「ですよね。」

当たり前の事は誰も口にしないだけだ。それよりオーナーはロン毛でジョンレノン風過ぎる。ジョンレノン風にも程がある。

 俺には、

「お疲れ。」

だそうな。

「ありがとうございます。」

俺は返事した。

 武田君にジョンが、

「指弾きで凄い、スラップとかね。あれこれあれここれ。」

と言っている。喋りのトーンが違う。武田君のプレイが気に入ったのだろうか。

「あ、はい。」

武田君は適当に流す。皆でオーナーの部屋を出た。

 控室で帰り支度してるとにき野田山君が俺に、

「バイバイ。」

と言い、俺も

「バイバイ。」

と返した。野田山君と直接話すのは初めて会ったジョイフル以来だった。

 武田君が、

「ジョンレノンっぽいね。オーナー。なんだあの眼鏡。」

と言う。俺は

「ジョン、武田君のベースが大変好みらしい。」

と言った。

「そうそう。」

「何なんだジョンは。」








 



 

 

 





















 

 



 


 

 





 


 









 

 

 








 










 




 

 

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