十一章 人として違うよね。盗んだバイクで走り出すとかあり得ないからね。お知らせ、進路に関しまして
そろそろ指定校推薦だのと進路決定の時期になってきた。とりあえずマイキーは指定校推薦狙いで、今迄テスト前に、ある程度は勉強してきていた。俺よりはしていた。
そして、その面接で話す話題造り先行で甲子園に応援に行った。多分いい子を装う為に。いや、多分ではない。
となると、試験が面接と小論文だけで済んである程度大丈夫な大学を東京で探して。
キリスト教繋がりの提携校ならより条件が良いのでなんかねぇか。
嗚呼、あった。俺の平均の通知表の評価でもいけるなここ。キリスト教の大学。嗚呼いける学部は社会福祉学部か。いいんじゃないか。一ミリも興味ない。あるわけ無いだろ。甘く見るな。
「あ、藤美先生、このキリスト教の推薦受けたいのですが。社会福祉に興味有りますし。」
と、担任の藤美ちゃんに言った。
「あ、そう。いいんじゃ。わかった。なんか孔明君、音楽好きだから音楽と結びつけて志望の文書くと良いよ。」
「は。わかりました。」
「じゃあね。」
「失礼します。」
話が早い。とりあえず、小論文対策に塾に行くか何かしないと。
後日、地元で有名な「ちきゆ
高校のすぐ近くにある。事前に電話を入れてある。入るとすぐ先生に色々手ほどきを受けた。要点をどうしっかり伝えるのか等、小論文の展開をレクチャーされる。
「なるほど。」
授業が終わった。塾の先生は、
「じゃ本番頑張ってね。」
と言った。
「ありがとうございました。」
ちきゆ館を後にした。
割と小論文の対策はやっている。大体頭の良さにもベクトルが無数にあるが、適当言って大人を転がすのは得意なので小論文は大得意だ。なんせキリスト教も社会福祉も最低だ。興味無し夫ちゃん。
知識を入れてどう繋いでそれなりにすればいいのでね。瞬時に判断してこれで回答欄の文字数を埋めるとかゴッツァンレースか。まあ自己催眠で模範生の皮を被るので謙虚にやってる。
大体、「社会福祉に一ミリも興味湧きません。」と言ったら俺ならもう合格に、してあげたいけどね。人としての本質を見定める知能がないのだろうな。もうちょっとロックンロールした方が良い。
「ふっ。」
では仮にだよ、俺がマジっぽく友達たちに「ちょっと社会福祉に興味があるんだよね、最近。」なんて言ってみろ。
多分、ハードにボケてることがバレるか。色々人格を疑われるとは、思はないのかね。あんた達はっ!そういうことでしょうが。狂ったと思われる。
一つ懸念があるとすれば、俺は多分受験予定の大学より頭はキレるだろうから、悟られないようにしないとな。そこは。受験生の
最近は、
「もう小論文対策したいから学校休みたいです。」
で、担任の藤美ちゃんのオーケーが出る。卒業が余裕で出来そうだからなのかも。なんかさっきも、
「わかった。孔明君頑張って。」
と言われた。
なので家で、今小論文の練習をしている、真面目に。ただ休憩は大事。
所でマイキーはというと、何か指定校推薦の第一志望が取れなかったのだ。それで、マイキーに被せた生徒の担任がマイキーが志望していたのを知っておきながら、その生徒を推したので怒っていた。どころかその先生に問い詰めたそうだ。
「先生知ってましたよね。」
と。その先生は、
「俺も胸が痛かった。」
と言っそうな。多分嘘だろ。
その場で、その先生のこれから始める授業をボイコットしたという事でした。よもや、よもや。
まぁマイキーは推薦欲しさに俺よりかはテスト前一週間にせっせとやっていたし、甲子園に孔明を連れて行った。指定校推薦でいい子面しで、面接に、甲子園のエピソードを挟むためだけに。この様な計画、計略?を巡らせていたらその先生が自分の生徒をマイキーの推薦枠に被せて取られたのだ。泥棒猫か?
「余談だが朕の好きな女性のタイプも泥棒猫であるそ。」
話を戻すと、そしてマイキーが第二志望した武蔵境の私立の枠を選定する際、その泥棒猫先生はマイキーを推したらしい。どこから漏れる情報。忍者か。まあいい。
良心の欠片もあったのか、その泥棒猫先生は。無いいと思う、俺はね。けっ。だから俺は頭が良い。馬鹿ほど恥ずかしいものはない。ま、それ自体に馬鹿は気付けないんだけど。そいつらに対して優しい心が芽生えさえしてくる。ねっ。
まぁマイキーは納得しているようだ。己の推薦を受ける武蔵境の私立大学に不満を漏らさないので。
そういえば先日AVで逆シャアを借りてマイキーと観たが、ラストびっくりだよ君ぃ。ちなみにAVとはレンタルビデオショップだ。本やCDも売っている。逆シャアのビデオはそうとう借りられていて画質最低だった、その、レンタルビデオ一本だけで回して。
ま、それはいいとして。こんな受験真っ只中でも帰りに高校の近くのうどんやに寄って帰りまくったりしてはいる。友達ほぼフルメンバーで。安いのだ。かけうどん百円。俺は早く家に帰りお勉強したいのに百円が悪い。悪かとです。
そこから、しばらくして東京まで受験に行って帰りの空港でゾイドのウルトラザウルスを当然のように買って帰り、スミ入れが大変だった。
受験の結果は俺だけがその大学の推薦落ちたらしい。というか、
「音大に行けば?」
と面接した教授言われた。
その教授は、何かを俺のいう人物に見出して、もうこの大学違うという答えだしたような目をしていた。なんだろう、この目の語るものは?
担任の藤美ちゃんに言ったら、
「残念だったね。また頑張って。
「はい。」
という感じ。そして、罪を告白するなら、ジョン・レノンミュージアムにも、行って来た。罪人よ。悪魔が囁いてこなければ真面目に受験して帰ってきたのにな。俺としたことが。
まぁ、今年だけでライブに何回も行ったし、ニッチンと新日本プロレスを観に行ったし。
そういう受験生スタイルがあってもいいじゃない。受験に落ちたらギターを弾けばいいじゃない。マリーアントワネットはパンが無いならケーキを食えばいいじゃない、と言った。
大学受験に落ちたらミュージシャンになれば良い的な発言で、ぶっ飛んでいる。確かに、ストーンズもビートルズもぶっ飛んでいる。あれなら自分でエピソードを調べたらいい。
まあ、俺位ビックになると、ビートルズ大辞典を予約しに行った時、前金を言われた時、全額支払い完了して入手するけどね。ただ初版は誤字多過ぎ。バシバシ誤字がある。
嗚呼、そういえばルナシーは終幕するなぁ。マリンメッセに行ったのが懐かしい。
バンド仲間の武田君は最近は、前よりも洋楽志向にも程があって、お世辞にも日本のバンドを彼の前で賛辞してはならないよう変化している。毒舌だし。彼はレッチリとMr.Bigの日々を送っている。
まぁそれに対して何の懸念もない。日本人の良い所は自分と洋楽や、NBA、MLBとの差を的確に認識している点だ。
言い方を変えると勘違い野郎だけは日本から出してはならない。どれだけ差があるかだけは日本人は解っている。解ることが出来る程度には知能はあるらしい。
これは競技に対する姿勢が清く正しい、という事でもある。これは最大の武器である。遠い未来には日本は追いつくかもしれん。
これを言うと笑う人が多いだろう事が、尚更予感を強める。よくあることなのだ。
まぁ海外のミュージシャンも日本のファンのそう言う点を、指摘して評価している事実はある。
最近、武田君の家に遊びに行くとレッチリをしっかり弾けるようになっている。武田君のプレイを見ながら、嗚呼こう弾いてるのか、となる。そして、進学校にいながら武田君は、せっせと受験勉強をしているクラスメイトを愚かと言う。豚に見えている。彼の目には、クラスメイト全員豚見えているのだ。尾崎は確か好きだったし。尾崎はね。
まぁ俺のバイクを盗んで尾崎が走り出したら俺は私人逮捕するけどね。
「やめてもらっていい?ちょ、待てよ。おい、ちょ待てよぉ。尾崎、走り出すな。」
ちょ待てよ案件だわ。まぁ今バイク持ってないけどな。バイク持ってたら尾崎に怯えていたわ。かなわんわー。
「あのー。鈍感なのか何なのか知らんけど迷惑なだけですから。そういう人からは自然と人が離れていくんだからね。はい、隠しても解るんだからね、全部自分の口で言うよー。さっ全て供述せんか。カツ丼食う?」
大体親は尾崎がそんな歌詞を書いたときに説教したと?ちゃんと説教しとおと?
仮に説教したとしてだ、現実は知らんけど、そんな親だったら尾崎を食うタレント性をしとおと?そうと?親、その時、ガチ説教。その時歴史は動いた。
「えー、息子よ。お前が、そんな歌詞書いたら、親の俺が親としての躾を疑われるんでやめてもらっていい?」
とか普通なるだろ。冗談じゃねぇよ。
そんな説教する親はねぇ、タレントになれるよ君ぃ。そのムーブは。そのやうなムーブはスーパースターしか出来ん。そのムーブスーパースターにつき。鵯越の逆落としの域だよ君ぃ。
したら、事務所が反論したりして。
「あくまでタレントの演出でありー、えー、そこはー、」
尾崎はただなんかマジっぽい雰囲気はバリバリ。ただ言えるのは、盗んだバイクで走り出してんじゃねぇよ。逮捕する。
「そこは、ファクトリー契約してファクトリーマシンで走り出す、だろうが。そこの歌詞はぁよぉー。そこは逃げ切れ。追跡を。ぶっちぎり。俺が今走り出すでしょうが。俺がまだ走り出している途中でしょーがー!だっ!」
ファクトリーマシンで走り出した方が男らしいぜ。そこは。人様のバイクを盗んでおいて、誠意ってなにかね。それを歌詞に書いて歌ってメガヒットしている。誠意ってなにかね。
俺がぶっちぎっているかもしれないから、後ろを振り返り説明するなら、ファクトリーとはバイクレースの誉。メーカー直々に作ったレース用のバイクがファクトリーマシンだ。まぁサーキットのバイクレースやね。その契約ライダーがファクトリーライダー。
ファクトリー契約して走りぃだすうぅー。あ、すみません、今、歌ってしまいました。
「えーこの度孔明は歌ってしまい、歌ってしまいました事を、大変ご迷惑をおかけいたしました点を謹んで謝罪致します。この度は誠に申し訳ございませんでした。(ここで3秒頭を深々下げ)
急に話は変わりますが、
あ、すみません、また歌ってしまいました。えぇ゙この度はぁまた歌ってしまい大変申し訳ございませんでした。
これは天丼と言う技である。繰り返すことで笑いをとる、これはワールドワイドに有効打である。あんまり、ジョニー先生もマークもアンソニーも、ある一定のギャグが無効だが、これは効く。必殺技の天丼。技と言ったら技の一号でしょうが。
「力と技、といふ言葉を聞いて君は何を思うかね。技の一号、力の二号、ではここでクエッション。では力と技とは、さぁ誰でょう。お答え下さい。デロデロデロデロデー(効果音を口で言っている)。」
そして、
「このクエッションは答えが出せるまで2時間掛かる。なぜなら難しい問題だから。
ただ、某クイズ番組の全問題をいつも二時間掛けて考える人がいます。
ここでクエッション。それば誰でしょう。は、やめておきます。こここここ(特徴的な笑い方)。では、本来の問題、力と技と言ったら、誰なのかお答え下さい。 デロデロデロデロデー。」
さあ、二時間位一問に時間を割いたところで答え発表といく。二時間かかったろ。マジになれよ。俺は真剣なんやねん。え?ミステリーハンターも呆れているよ。であるか。
オンエアでは当然カットだが、クイズ番組の一問にマジで2時間かけて考える、否、2時間掛かる?ムーブ、只者ではござらん。ただただ、そのタレント性は見事である。大義であった。タレントはタレント。プロはプロ。なに、どうということはない風の噂さ。何、訴えられなければどうということはない。だから誰とは言わないよ。ね。
では答え、
「
これ位は知っておいた方が良い。色々な意味で。格好良いとはどういうことなのかとかね。
さっきから、めちゃめちゃな言動を俺は繰り返しているのだが、まあ、これでもセーブしている。所で今、俺は家でギターを練習していたのだ、実は。
受験はあまり真剣に考えられないので勉強もなあなあ。日曜日の夜たい。今は。コーラを買いに自転車で二分の駄菓子の自販機まで行こうかな。コーラと言ったらコカコーラでしょうが。
「リンリーン。」
自転車を漕ぐ。
「チャリーン、チャリーン。」
小銭を入れ、ピッ。
「ガシャーン。」
ブツが落ちてきた。さっ帰るか。
この辺はハーフ田んぼハーフ建物の田舎なのか都会なのか半々の土地。平均的だろう。まあ落ち着いていて良い。
進路などは全く分からない。何も見えない。なので困るのである。考えていないのではない。考えても何も分からないだけ。そう思いながら自転車で家に戻る。
「リンリーン。」
街灯と月と星の明かりがでしゃばっている。この辺の
家に到着後、また適当ギターを弾く。進路決めきれないんですけど。まぁそんな事はどうでもいいじゃんギターを弾こうよ。コーラを飲もうよ。爽やかになる
何日か過ぎ、古城君の不登校をジョニー先生の計略で解決する日が来た。ジョニー大都督の授業を受けるメンバー全員出陣せよ。では参る。準備はいいか。
「はっ。」
放課後になった。市電に乗ってなんか新町かなんかの側に向かう。スーパースターは人の名前と、地名と方角を覚えない。スーパースターの俺にとっては其れ等はどうでもいいというのだ。
俺達は古城君戻るなら良かったねー。位のテンションだ。俺は、
「しかし、坂町さん。此度の作戦の鍵は何だと思う。」
と坂町君に聞いた。
「俺にはとっておきの鍵となるモノが見えている。古城君学校復帰成功の鍵は、これしかない。」
と坂町君は言う。
「ほう、実は俺もこれが鍵になるという策があってね。」
「ふうん。コウメよ。じゃあお互い手に書いて見せ合うか。それを。」
俺は、
「そうしましょう。」
と言った。二人して手に書く。
「せぇの。(ユニゾン)」
火の文字を二人共書いて、
「やはり。」
「そうなっちゃいますよねー。」
「です、です。」
二人共笑う。火計で古城君の不登校を阻止だ。
「てゆーか、貴方コウメ。孔明なら、明日から古城君を学校に復帰させてみろや。エセ孔明が。」
と坂町君が俺に言う。
「そう来ましたか。やはり。勿論出来ますよ。ただ俺は、全てがどうでもいいので、この世の全てがどうでもいい。だから、古城君の復帰に関心が薄いのだ。なので、モチベーションが伴わないのだ。だから苦痛なのだよ、そんな事に頭を使うのは。」
俺は、
「小さい小鳥には、その、はるか上空を舞うおおとりのメンタルを察することは能わぬ。カロリーなんで。無駄なカロリー消費でしかない。そんな小事で、坂町くんは俺にピーチクパーチク言いやがって。」
「今俺達は舌戦をして戯れているが。コウメ。やっぱお前はハードパンチャーだよ。」
「であるか。」
「お前の発言は重い。重いパンチを食らったような心に来る感じが。」
「であるか。是非に及ばす。」
そして俺は、
「頭が良いだけで、人を傷付ける時がある。」
と言った。
「なんか言ってること、解る。ははは。」
「解ってもらって嬉しいよ。」
俺は続けて
「まあ、実際来るんじゃないのか、明日から。なんさま恩を着せるとかしたら。五人も迎えに来てやってるのだよ。こうして。」
と言った。
そうこうしてテクテク皆で歩いて彼の家に到着した。良さげなマンションだった。ここは市街地だ。
「ピンポーン。」
ジョニー先生がチャイムを押し、お出迎えだ。普通に元気そうで何よりだ、古城君は。
「元気。」
俺が聞いた、普通気を使うとこなのは解っている。あえて気不味くしていく。
「あ、ああ。」
はい、やはりそうリアクションがくる。やや失礼感を感じさせる事に成功、
「はい、元気です。だろうがそこは。」
俺は言った。
「あ、ああ。」
これは連環の計だ。そして尚且つ、発言内容は火計気味にボヤ程度。仲良くなっていく。やはりちょっと笑顔だ、古城君。まあこのままモノホンの友達同士になります、俺は古城君と。
「どうだ。明日から来るぞ。」
と坂町君に耳打ちした。はは、と笑う坂町君。さあパーティーはこれからだ。
まあこのまま今後、永遠に俺は古城君と打ち解けたイントネーションで会話をすることにはなったけど。
暫く話をした。他愛もないような内容だ。古城君はにこやかで元気そうない雰囲気である。ジョニー先生が、
「インディアンポーカーやろう。」
と言った。なんだそれ。
「おでこにトランプを。」
続けて、
「自分は見ない数字を。相手に見えるようにして。」
で、
「数で勝負。」
あとは事細かにジョーカーの扱いとかを先生が説明し、開戦。帰国子女で女子の安谷さんも楽しそうに、
「さっさとおっぱじめっぞ、ワクワクすっぞ。」
と言う。安谷さんは年齢が一つ上だ。なぜなら1年間留学していたから。オーストラリアに。マークと交換留学だった。もう一人の女子の田内さんも笑顔でいらっしゃってなによりである。
「スタートぉ。」
嗚呼まあまあ面白い。プライベートでは多分やらんけど。日本には定着せんなこれは。でも悪くない。それでも、ギリ蹴鞠の方が面白い。風流差が足りないね。あと、トキメキも足りないね。今ひとつトキメキ成分が欠如しているよこれ。
とりあえず今、プレイオフのゲームセブンまで終わり、ファイナルが始まる。俺と坂町さん。モトGPさながらバチバチにメンチを切り合う。
カードをめくり乗せる、自分のは見えないので分からないけど、坂町君は勝ち確定のカードじぁあねぇか。
俺は、ポーカーフェイスで即座に、
「レイズ。」
ちょっと、坂町君驚きの表情が浮かぶが、坂町君は、
「レイズ。」
皆多少そわそわしている。すかさず間髪入れず、
「レイズ。」
すると坂町君の表情に対抗心が読み取れた。坂町君も、
「レイズ。」
その声に感情が乗るが、全くバレていない。俺はまたすかさず無表情で直ぐ、
「レイズ。」
坂町君も、
「レイズ。」
俺も
「レイズ。」
坂町君も、
「レイズ。」
俺も、
「レイズ。」
坂町君も、
「レイズ。」
段々坂町君の声が士気を失い出してきている。俺はまた無表情に、すかさず、
「レイズ。」
坂町君は、
「フォールド。」
あはは。
坂町君は自分のカードを見て驚くし、俺は、
「今日は自分の手の内を見せ過ぎた。」
と言った。
坂町君は、
「天はこの世に坂町を生んでおいて、なにゆえ同時に孔明も生んだのだ。ガビーン、コウメね。」
と、ショックなご様子、俺は一ミリも嬉しくないが、テニス部のキャプテンだった坂町君のアスリー
トとしての心理的な面や戦術について思いを巡らせた。
テニスという競技は馬鹿は踊らされていつまでも本人はそれに気付かない、というパターンはバリバリある。ましてプロになると心を壊すかもよ。エグいからプロは。
いい例が内の軟式だ。馬鹿は丸出しで、一生懸命なのだ。俺の言いたいこと伝わるかな。エグさも。
まあ勝ち負けなどどうでもいい。スポーツマンは爽やかでないとな。勝っても負けても。
「あー、」
「あはは。」
「ここここ。」
皆決勝で笑った。俺と坂町君の一騎打ちで、面白そうに話す。俺のカードは中の下だった。ふふふ。安谷さんも、
「コウメ君は何か攻撃力高い。」
と言う。
「で、あるか。」
俺は相槌を打つ。あ、負け犬の坂町くんに言葉をかけてあげないと。いかん、いかん。俺は坂町君の肩に手をやり、ポン、
「坊やだからさ。」
と言った。
「こここここ。」
田内さんが爆笑している。全員笑ったが。特に俺の勝利には誰もなんとも思わないようだ。俺もそうだ。どうでもいい。それより古城君学校来いよ。
「古城君は、今どんな音楽聴いてる?オアシス?」
俺は聞いた。古城君は、
「まあ。そうだね。あとスマパン。」
「嗚呼。なるほど。」
なんとなく古城君の嗜好が解った。
それにしても今更だか玄関で出迎えたお母さん、にこやかだったなー。
「ここの家なら、古城君電車通学じゃ?」
「うん。」
嗚呼、やっぱり。
安谷さんは音楽も好きなので、
「スマパン好きなんだ。前はオアシスと言って。じゃニルバーナも好き?」
と古城君に聞いた。
「あ、好き。」
俺は、
「んじゃ、メタリカは。」
「嫌いではない。」
ま、だいぶジャンルが飛んだ。ちなみに俺は坂町君に借りたスレイヤーのアルバムを大変気に入ってMDに録音して相当繰り返し聴いている。
確か田内さんは、マライアとかのそっちの音楽が好きだった。
また、もう少し話をした。それから皆、
「じゃあ。」
「じゃあ。」
とか言って古城君の家を後にした。普通に元気そうだった。健康的な不登校ってあるんだな。ダルいだけじゃん、それ。学校が。
夕暮れだ。電車でまた高校まで戻る。そこで解散だ。ちなみに電車とは路面電車の事だ。高校の側まで行ける。駅が近い。
てくてく古城君の家から駅まで歩き、ガタゴト電車に乗り、てくてくまた高校に戻ると、解散。自転車で帰る。
「じゃあまた明日。」
今日はどこにも寄る用が無い。まっすぐ帰ろう。あっ、いかん、スーパースリンキー買わなんかった。
帰り道の白山通りにある楽器店に寄る。
「スーパースリンキー、シルブプレ。」
店にあるピンクのパッケージのエレキギターの弦。最近名前を覚えた。2年以上ピンク色だけでこの商品の名称は知らんかった。スーパースターは名前を覚えない。
この店は、俺の地元の友人で高校も同じなマイキーも利用する。彼はファッションギタリストだ。ベーシストなのかも知れん。ボーカルだけは違う。カラオケがNGだから。事務所NG。別に芸能人でもない。事務所とただ言っただけ。
マイキーはこの間、確かこの店でラルクモデルのベースをお買い上げになった。キルトメイプルのヤツ。なにやら名前を付けている、彼は。そのベースに。まだ本決まりしていない。「キルティ」か、「キルテイックアーツ」だか。聞くところによると、店主にこんなに
「キルトメイプルがしっかりしたグラスルーツは珍しい。」
と言われたそうな。でポイントカードのスタンプは上限は一冊まるまる迄だったそうだ。で、しっかりラルクの公式商品の証のちっちゃいシールも貼ってあった。
この店はちなみに中学の同級生のピロヒもよく来る。西の外れの公立高校に通う彼はそこでバンドを組んだ。初心者同士で。やっぱラルクのコピー、するそうな。
この店が一番家から近いのでここに地元の友人達は通う事になるのだ。あと、スタジオ代が安い。そういうお店だ。あと、夫婦経営である。で、あるか。
俺がシルブプレと言うと、
「四百九十円ね。はい。ありがとう。」
と言われ店を出た。
翌朝、
「おはよう。」
既に教室にいる富畑君に言う。彼は真面目に受験勉強している側の人間だ。
「おす、コウメ。」
富畑君が返す。
「富畑君に借りた赤盤、青盤、cdのケース割れてしまったから、弁償して返す。はい、ありがとう。」
「あ、ええのに。」
俺は、CDを渡した。オアシス野郎の太田黒君はまだ学校に来ていない。
あ、古城君はやっぱり来たか。
「おはよう。」
「おはよう。」
なに、どうという事はない。適当に古城君に挨拶する。富畑君が俺に、
「古城君久しぶりね。」
と言う。
「昨日プレッシャーをかけに行ってきた。あいつは、遅参の段御免なれ、の挨拶を忘れとるぞ。天下人の富畑君に。」
「まあ、此度は許そうか。」
富畑君は心が広いなぁ。
「であるか。」
「俺より富畑君の成績が良く、彼は普段からしっかり勉強しているのは、ガンプラを作って、ギターを弾いて。バイクのプラモを作っている俺とそうで無い余暇時間の差だ。」
「確かに俺は、ガンプラを作って、ギター弾かなくてはならないコウメより暇があるから、勉強にその暇を充てているだけだとでもいうのか。」
「言い当てて妙。」
俺は続けて、
「あと、カラオケに行ってゲーセンも行かないといけない俺は。ブラックバスも釣らないと行けない。嗚呼いけない、もんこんな時間だ、バス釣りに行かなん。」
と言い腕時計を見るジェスチャーをする。このジョークはジョンレノンのパクリだ。
「藤美ちゃんブチキレるな。」
あ、
「じゃあやめておこう。」
藤美ちゃんは担任の先生だ。
友達の中で、富畑君並みに勉強している不心得者はあと一人いる。ニッチンだ。
二人は日頃からあまり遊びに誘っても付き合わない。勉強している。この二人以外は、参加するようなイベントが多々ある。
こんな二人のやうなな生き方をしていては、到底酒と薔薇の日々を送ることはない。近頃の若いもんはなっとらん。もっと風流心を養ってもののあはれを理解できた方が良いと俺は思うけどね。けっ。
むしろこの特進クラスに於いては我々の方が異端者だとでも言うのか。
最近は昼休みになると笹木君が飯を食いに来る。笹木君は一年の頃、同じクラスであった。彼は、国公立コースという特進クラスに2年からトレードした。たまに来るので、富畑君とも仲良くなった。今日も来るか。
まだ朝だけどな。すると、てくてく、管三郎君がやって来た。こいつは、マイキーとクラスが同じだ。こいつが良く来るのは自分のクラスに友達がいないからだ、とマイキーが言っていた。
そうなのだ。休み時間はとっくに引退したテニス部の部室に行くが、ほぼいつもこいつも来る。そしてその部室にはラジカセがあり、常にB'zの日々だ。これは坂町君の趣味だ。
俺の中学校の同級生の
「よう。」
「よう。」
管三郎君と挨拶を交わす。
「自分の、教室に帰れよ。」
俺は言う。ウケるのはわかっている。コツは来た瞬間に間髪を入れないで言う事。置きにいっている。これはセンスだ。
「あはは。」
富畑君はウケた。管三郎君は冗談なのは分かるらしい。
結局管三郎君は居座り続けて、皆友達が出勤して来た。
「こいつもう帰せよ。」
俺はまだ言っている。
「はあ?」
ニッチンは笑いながら聞いてくる。
「そう言えば管三郎君、推薦受かったろ。おめでとう。なんだっけ、東京の、キリシタンの武蔵境の辺りの私立大学。」
「クリスチャンた。」
笑いながら管三郎君は、訂正を俺に求める。
「え、キリシタン?」
ニッチンが管三郎君にまたふざけだす。
「クリスチャン。」
「は?」
「なんて?」
「パードゥン?」
「まあいいよ。」
俺は切り上げた。このくだりを。
「管三郎君。お前どんだけや。」
「お前に好かれても主は嬉しくなかばってん荒川。迷惑ぞ、主は。」
「そうた。」
管三郎君はマジのクリスチャンなのでこの手の弾圧には屈しないのだ。
「多分クラプトンの方がすげぇ。」
「あははは。」
「管三郎君、クラプトン信じたらいい。こんなのやめて。」
悪魔の囁き。
「お前、この中で一番俗物ぞ。」
俺は核心をついた。
管三郎君は嫌そうな顔はしていない、弾圧しまくりなのにな。
「それは間違いない。この俗物が。」
いつもこの調子である。管三郎君はよほど信仰心が厚いのか、また休み時間には顔を出すのだ、俺達の教室に。
次の休み時間、またキリスト教徒が勧誘に来た。
「よう、布教に来たか。」
俺は管三郎君に言った。
「いえ。」
俺は、
「今、太田黒君とMステの、話をしよった。」
太田黒君は洋楽フリークだ、相当攻撃的なヤツ。
「管三郎君、ゆずが来て、他をメタルで固めると、どうなるのかな。ほら、ヘビーメタルた。」
俺はジェスチャーする。
「気になるか?」
俺は管三郎君に聞いた。
「なるよ。」
「これは、難問ですよ。」
太田黒君は言った。
富畑君を呼んだ。なぜなら答えが分からないから。俺は、
「ねぇ、Mステにゆずが出る日に、他が全員バリバリのメタルだったらどうなるか。分からん。教えてよ。」
「四面メタル。四面楚歌じゃなく。」
「そうよ。」
「やばい。」
「あ、やばいのか。分かった。ありがとう富畑君。お前管三郎君。お前がクリスチャン丸出して俺達と一緒にいるのと同じばい。」
「お前管三郎君自分の音楽性貫き過ぎじゃね?おいこら、タコこら。」
「であるか。」
「君、勇気あるね。」
「あ、笹木君が来た。Mステのさっきのシュミレーションをしてみようか?」
「そうね。」
笹木君に打ち合わせして、始まる。
俺が女子アナ役で一組ずつ紹介する。
「メタリカです。」
客役の仕込みの拍手を皆する。
「パチパチパチパチ。」
俺は、
「スレイヤーです。」
「パチパチパチパチ。」
「パンテラです。」
「パチパチパチパチ。」
「そして、」
俺が悩んでいると、
「イングヴェイは。」
と、太田黒君が言う。
「イングヴェイマルムスティーンさん。」
と俺は言い、
「パチパチパチパチ。」
「ガンズ」
「パチパチパチパチ。」
「アイアンメイデン。」
「パチパチパチパチ。」
そして、
「ゆず。」
「パチパチパチパチ。」
あ、
「あ、やっぱり拍手の雰囲気変わるな。」
「フォークボールみたい。ストーンて。」
「あ、そうね。そんな感じ。」
「これは出演料いくらかね。」
「何億かな。」
というか、俺はふと思った。
「というか、気合が入りすぎて来んぞ、絶対。アイアンメイデンとか、ガンズ。」
「嗚呼、そうかも知れん。」
あの椅子に大人しく座っている絵が浮かばない。
シュミレーションは終わった。やはり、アイアンメイデンに髪切った?とかはよう言わんばい。という事だった。
「所で管三郎君。お前が、Mステで俺の前に座っとったら、パコーンて頭叩くと思う俺は。それか、頭の上に足を乗せる。」
「は、ふざけんなよ。」
「反省しております。もうこれは衝動。衝動やねん。人格否定ぞ、管三郎君、それ以上は。」
「あはは。」
富畑君が笑う。
「俺位ビッグになると、背中で座って、浅く座って。」
俺は続ける、
「新人なのに、」
俺は更に続ける、
「いや、タモさんね。」
「あははは。」
「大御所か!ド新人が!」
俺は大俳優なので、伝えたいニュアンスを正確に伝える演技をしてやった。あはは。
「かまさすばい。」
俺は、
「これはバスケで言うところのペネトレイト。」
「は、知らん。」
「何それ。」
「まあ、知らんでいいよ。それより管三郎君はそんな度胸あるかね。」
「あるわけ無いわ。あるか、馬鹿。」
管三郎君は答える。
「腰抜けが。」
俺は言った。向こうから荒杉君がやって来た。
「今、マイケルの話をしていた?」
荒杉君は聞いてきた。富畑君は、
「していない。」
と答える。マイケルと言ったらジャクソンでしょうが。
「あ、そう、ふうん。皆でマイケルの話をしようよ。」
「荒杉君よ。まだサバゲに行きたいのか。」
俺を最近しきりに徴兵しようとしてきているのだ。
「そうそう、行こうよ。」
俺は多趣味なので、出費とかがネックでサバゲはまだ行かないでおこうと考える。まだよさが分からん。荒杉君は、
「楽しいって。」
と言うが、俺はラブアンドピースなのだ。銃を使った争いはねぇ。荒杉君は続けて、
が、
「行こうよ。」
「うーん。」
あとは俺はサバゲ場とかのノリも分からないから。そういえば荒君の家に行ったある日、紐を使った
トラップを敷地に作っていたっけ。マジで。
俺は、任天堂のハードの黄金銃とか出てくるゲームもあまり燃えなかった。
「ちょっとまだ待ってくれ。サバゲは。」
「チェ。」
と荒杉君は言う。
それからしばらく盛り上がり、始業になり解散した。嗚呼、讃美歌を歌い、聖書拝読か。今日は誰の福音書の何節かね。繰り返しギャグは好きくない。俺は悪魔だぞ。
なんだかんだ放課後が来て、マイキーと帰りが一緒になった。
「熱帯魚屋寄る?」
「そうね。ナベちゃんに?」
「ああ。」
ナベちゃんという地元の同級生に、店長の顔が似ているので。その店をナベちゃん呼んでいる。熱帯魚で言うとレッドテールキャットみたいな顔。この店はバイパス沿いの先端の
ここにいらっしゃる十センチ位のレッドテールキャットが俺は気になる。値段も高くない。
マイキーは受験も終わって心置きなく国産グッピーを飼っている。あとはベタ。
俺はまだ決めていない。ベタを飼ってもいいかもしれない。マイキーが店長のナベちゃんと話している。
「この土のは?」
底砂の事か。ナベちゃんが、
「無理。難しいので、砂利だねぇ。」
「ふーん。」
嗚呼難しいのか。
色々魚がいるので店にいるだけでも飽きない。やっぱ一番気になるのはレッドテールキャットだな。
二十分位で店を出た。今度はAVで立ち読みしに行く。バイパスと3号線の三叉路辺りは店が多い。ここの熱帯魚屋とかAVとか。
AVに着いて情報収集を開始。多趣味だと大変だ。バンドにプラモ、熱帯魚、ファッション誌に。テニスは本に触ったことも無い。触る訳ないだろうが。皆テニスシューズ履いてテニスなんかしてキモい。キッモ。嗚呼、大マジにテニス雑誌に熱中している俺を見たらマイキーはどうするだろうか。やってみようか。やろう。へへへ。
あ、気付いた。
「俺が今テニスを読んでいるでしょうが。」
と俺が言う。
「狂ったのか。」
「そうそう。ヨネックス最高です。」
「は。」
「私はヨネックスを選びました。」
「選んでろ。」
「私はバンテリン。」
俺は続ける、
「あ、今何が起こった?悪魔が乗り移ったごたる。悪魔が俺の体ばさしたー。」
マイキーは、
「それ以上にありえない光景だったよ。お前、ヨネックス最高ですとか言ってたぞ。」
「あ、やっぱり悪魔が俺の意識を乗っ取ったんだ。ヨネックスに俺が言及するわけ無いさ。」
「ふふ。」
「この本屋は悪魔祓いした方が良い。」
「それよりこれを見ろ。」
「あ、格好良い。」
プラモのプロモデラーの写真だ。
「おー。」
マジですげぇ。これは今度自分が作るときに参考にしよう。
暫く物色して店を出て今度はスパーという俺の家の最寄りのコンビニでアイスを買った。で小学校付近の駄菓子屋でマイキーと別れ帰宅した。
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