九章 バンド活動

 今日は夜間に武田君の家に遊びに行った。多分週に一回は行く。

 とりあえず武田の演奏スタイルを説明する、武田君というベーシストのスタイルはピチカートである。ピックを使わないゆびきだ。そして、レッチリやミスタービッグのベーシストを大変尊敬している。

 体は細い。猫背だ。そして鬼のようにストラップが短く上の方でベースを構える。位置的に世界一かもしれない。

 レッチリが好きが故に武田君は、

「上半身裸でベースをステージで弾きたい。嗚呼弾きたいなぁ。」

 と、言い出した。俺は、

「その前に肉体改造しましょうよ。我が君。そして良い体になってそうしましょう。」

と言っておいた。武田君の細いから。太くなってから。

 後日武田邸に行くと彼の部屋にダンベルがあった。ただしそのダンベルが小さ過ぎだ。何キロかは分からんが。もっと大きなのが良いのにな。

「あ、武田君ダンベル買ったんだ。」

「あ、そうそう。」

まじで上半身脱いでベース弾きたいんだな。へー。

「でもこのダンベルちっちゃいね。」

「あ、ほんと?」

ま、いいや。

 あとは適当に話してこの日は帰った。俺はちょくちょく武田邸を訪れる。彼の家は古くて狭い。よくあるパターンの作りの家だ。

 武田君はどうやらマジでプロになりたいらしい。進学校のマークツー高校だが。だがしかしレッチリのような人生を歩みたい。嗚呼そうか。それでも俺と仲が良いんだー。今わかったー。

 そして世間は狭いもので、俺の高校の友達の笹木くんと知り合いの知り合いだったりする。そこに熊本で一番有名で人気のあるスーラーのメンバーも含まれる。

 あとはゲーマー過ぎるのだ、武田君は。ドラクエ6をやり込みまくる。連日五、六時間していたりする。

 そして半端じゃなく毒舌である。ので、俺とスーラーのギタリストの容姿をからかうのが、日常ルーティンだ。ガンズとかピストルズとか攻撃的な発言をするバンドは多いが、言うことの激しさは引けを取らない。演奏は置いておいて、それはそれ、これはこれ。

 武田君のはハンド仲間と普段は仲良く学校では話すけど、ボロカス言うのだ、ある意味武田君は自分のロールモデルを守っていて、プロだな。

 俺はさっきガンズだのと言ったが、その辺はちょっとビートルズに近いメンタルなのかも知れん。俺はそして鬼のように今ビートルズにハマっている。ただボーカルが特定できない、曲によってビートルズはボーカルが入れ替わる。聴いていて誰の声なのか解らないのだ。

 ちょっと言及は避けるが武田君は余り邦楽を好きくない所があるので、あまり俺は、武田君の嫌いなミュージシャンの話を、彼の前でしない。武田君はボロカス言うから。苛烈である。特定の日本の一部のミュージシャンである。

 そして武田君はアルバイトをしている。焼き肉屋アラジンという彼の地元近くの店だ。そこで彼はお金を貯め、この間、島村楽器でジャズベースを買った。フェンダーUSAだ。十万代で買った。スティングレイと迷ったそうだ。

「武田君、今度は普通にライブしようか。レッチリとかを。」

「そうねー。メンバーはどうしようか。」

「笹木君とか、ギターは。」

「笹木君を介して野田山君にドラム頼もうか。やってくれるかね。」

「レッチリは好きらしい。野田山君。笹木君の話だと。」

「ふうん。」

 野田山君は界隈でナンバーワンのドラマーなのだ、スーラーという名前のバンドのメンバーで人気もとてもあるから、どうなることやら。誘ったところで。笹木君はその野田山君中学時代のバンドメンバーで相当親交があるのだ。笹木君も相当キーボードが上手いし、理論も完璧。その中学時代のバンドのボーカルが武田君の同じ高校の友達だったりする。

 世間は狭い。狭すぎる。まあ、

「とりあえず笹木君に聞いてみよう、まず。」

と俺は言った。この日は後適当に過ごして帰った。

 自転車で帰りながら、俺が野田山君とバンドするのかー。大丈夫だろうか、ミュージシャンとして信用されるだろうか、と思った。できるだけまあやるだけだから。それしかないしな。

 後日、ジョニー先生の英語の授業の時、俺は先生に、

「レッチリ、俺も好きです。ミートゥ。」

と言った。ジョニー先生は俺が高校三年生になってからの英語のネイティブの先生だ。ジョニー先生は、

「レッチリは、マザーズミルクまで。」

と言った。俺は、え、マジ?と思い、

「ブラッドシュガーもダメですか?」

と英語で聞いたが、

「ダメ。」

とジョニー先生は言った。

 何となくジョニー先生が何を想っているのかは分からなくも無い。ジョニー先生は、

「アンソニーはネイティブアメリカン。」

と言った。え、そうなんですか。

 ジョニー先生の授業も終わり、適当にその日の学校生活を終えた。


 

 





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