七章 魔女狩的被害者 孔明
この高校には宗教といふ単元の授業がなむありける。三年生になっても、宗教の授業がある。この高校はミッション系なので特殊なのだ。
それはそうと俺は部活を今からサボります、主よ。なぜなら俺の心には悪魔が住んでいます。ま、テニスコートに顔だけ出そう。
「おやおや。」
坂町くんやっとるかねー。更に、
「精が出ますねっ。」
とキャプテンの坂町君に言う。
そういえば、一個下の後輩には真面目にやる奴等が複数名いる。複数名。そのことを俺は
そんなことでどうするのですか。真面目か!駄目でしょうが。今日も真面目にテニスしている。
「真面目にテニスしてんじゃねぇよ。」
その後輩に、
「君達もやっとるかー。」
木陰のベンチにわざと浅ーく座り、こいつ等を
「嗚呼今日もなんだか暑いなー。ふう。」
軟式共は隣のコートで、あり得ないことにコート周りを全員でランニングだとでもいうのか。今日もなめたマネしやがって。テニスなめんなよ。
「
軟式にイラついていると、マイキーが来た。もう片手にジャンプを携帯している。
「喉が渇くぜ。」
「スパー行くか。」
「水う。水ぅー。」
スパーはすぐそばのコンビニの事だ。今は坂町君が居るのでライトにサボっている、これでも。
「リンリーン(自転車の効果音)。」
自転車で買って来た。バクダンだ。バクダンは百円の五百ミリリットルのよくあるパックジュースを凍らせたものだ。割り箸とストローを買うとき渡される。
(急にここから少しの間だけ台本調に)
ガリガリ、割り箸でしよらす、孔明。
孔明「みんな美味しいよ。(叫び声で)美味しいからみんなぁー。」
真面目にしている坂町君たちにおめく(叫ぶ)。
皆やや反応。
孔明「みんなこっちおいでよ。(低い声で)こっち側に来い。コイコノヤロー。」
皆振り向くが、スルーする。
孔明「悪魔の誘惑だよーみんなぁー。美味しいよー。(某中華総料理長風に)オイスィーヨ。エビプリプリ。」
孔明 悪魔の顔を一瞬のぞかせ「ちっ駄目か。」
そろそろ真面目にしないと顧問が来そうだと思う孔明。
孔明 叫ぶ「クソがーっつ。」
真面目のふりをするか。時間切れだ。練習をしよう、真面目のふりをする練習をだよ、と孔明は思う。
(元にもどります。)
フザケていると、
「ねえ、ここの薔薇俺が植えたのに踏んずけたでしょ。」
知らねぇんだよ。と思った。
俺のテニスの邪魔になるなと思った。こんな事されると、俺のテニスの練習の邪魔になってしまうだろうが。え。
多分そうだが、ほぼほぼ、認識していない存在の事か、チャペルの脇のだ。え、あったけ位のやつ。硬式のコートはチャペルに隣接する。
「いえ。」
知りませんけど。
俺は悪魔だから演技力が半端ない。というか、そもそも知らねぇと皆なっております今。もう植えんなよ、今度から。気をつけろよ。
「それじぁあ先生さようなら。」
黒沢先生は去っていき、
「何か来たな。」
俺は、
「植てんじゃねぇよ。」
もう一度、
「植えてんじゃねぇよ。」
そして、
「聖書風に言うとー、
そのシーンはヨハネじぁあないけど。
更に仰いました。
「主は更に仰いましたー。俺のテニスの邪魔をしやがって。俺が今テニスをしてるでしょうがー、黒沢ぁー。あれれれれー(このあれれーは、全日本ロードレース選手権の実況でよく聞くやつ)。俺はテニスをしてるだろうか、いやしていない。」
(間がある。)
反語を使ったのに皆スルー。
「ずいぶんファンキーな主。主、なんかファンキーじゃね?」
気を取り直して軟式の文句を言う。今地べたであいつ
「あり得ませんね。」
ジャンプを読んでいるマイキーに、
「軟式がカッコ悪い。」
マイキーが、
「俺が今ジャンプを読んでるでしょうが。軟式がカッコ悪いってか、それ頭痛が痛いみたいなもんだ。」
カッコ悪いが格好悪いみたいなことか。ふーん。
俺、
「お忙しいところ失礼しました。ところで、おたく部活は。」
「するか、ああなるぞ。」
と言いマイキーは軟式テニスを指差す、
「あんなにカッコ悪くなるんか俺。ちょまてよ。おいちょまてよー。」
危ないところだった。
「あいつ等もうバイオのゾンビ並みに手遅れじゃあないですかぁー。噛まれたらああなるんか。嫌だ。」
続けて俺が言うとマイキーは、
「いいかっ。テニスはしない。わざわざ聞くんじぁあない。俺がまだジャンプを読んでる途中でしょうが。いいか、僕はテニスをしない。僕はぁユンケルぅ。わかったか。」
とマイキーは言った。なるほどなるほど。
「私はバンテリンを選びました。」
俺はふと後輩に、
「へい、優秀な後輩君、君達には蜀漢に未来が掛かっている。」
「はあ何すかそれ。」
と素直な後輩達は振り向く。
「君たちには今から
俺は続け、
「あの
中華の皇帝が誰なのかをあそこの奸賊等に教えて来なさい。中華の皇帝は天の意志によって決まるのだ。
朕の
朕の中原でー、こらー。馬鹿か。朕の中華でグルグルされてん。ムカつくだろ。ここは日本だけどな。」
「はい、それはムカつきます。」
うん、そうだろうが。更に、俺は続ける、
「であるか。朕はいい後輩を持った。軟式の練習がカッコ悪いから止めてきてくれ。あの
後輩は、
「無理っす。」
「じゃ軟式ルールで倒してきて。後輩さん、あいつ等を倒してきなさい、十分だけ時間をあげるから。いいですね。目標を駆逐する。」
俺は自分のキャラ作りが二転三転している。それに伴い、一人称も二転三転。皆もちゃんとキャラ作りはしたほうがいい。
「僕に逆らうとどうなるかあいつ等に教えて来なさい。中華の皇帝がこの僕なのだということを、あいつ等に教えてあげなさい。いいですね。わざわざこの僕が出るまでもない。」
「御意。」
ちなみにがっつり後輩の方が俺よりテニス上手い。
「では、参れ。中華の皇帝は天の意思によって決まるってとこを
「
「
「御意。」
つかつか歩いて後輩が決闘をしている。軟式よりサボって軟式に軟式で勝つのが、代々続くこの部の伝統だ。掟かな。
ジャンプを木陰の一個あるベンチに座って読んでいるマイキー。そして奥のコートで後輩が軟式をやっつけている。俺はそれを指差して、
「マイキーさん、ほら綺麗な花火ですよ。」
マイキーは、
「いや、今俺ジャンプ読んでるんでよろしく。俺が今、ジャンプを読んでるでしょうが!」
俺もちょっと体を動かそうか。シュッシュッ。
今日の部活が終わった。
「あ―いい汗かいた。」
「今日、初めて自分で自分を
部活に行ったら大体は遅いので真っすぐ帰る。まぁ地元が同じマイキーと帰る訳だが、ま、世安のホームセンターサンコーに行こうかとなった。二人とも熱帯魚に興味があるのだ。マイキーはもう飼っている。
ここにはプレハブのたこ焼き屋がある。俺達はそこの店主を「おっちゃん」と呼ぶ。今日はネギマヨ塩たこ焼きは食わない。店内のベンチに座りカップジュース片手に水槽を眺める、大きい肉食の古代魚が余裕のサイズで泳いでいる。二メートル四方か、店内入ってすぐの所にドーンと設置されている。
水槽の真ん中に柵状の仕切りが遭って半分に肉食の大きい魚、もう片方に餌用の金魚が泳いでいるが、柵の隙間は金魚は通れる広さだ。
たまに金魚が仕切りを越える。すると、肉食のその魚が、金魚を食べようとする。金魚に近付く、
「おっ。」
「お、あ、惜しい。」
金魚が柵から戻った。
「もう少しなんだけどな。」
「今のは惜しい。」
金魚が食われたら俺達は、気持ちよく帰るのだが。まだだ。
「この前AVで借りた逆シャア。まさかの最後だったな。」
割り勘でマイキーの家でAV近見店でレンタルして観た。
「今度出るぞ
「は、何が。」
「赤い方が。」
「マジ。」
俺は高揚し、ゾワついた。
「明日予約しに行く。マイキー、おれはやるよ(買うよ)。」
もう俺は欲しい欲しい欲しいとなっている。何という事だ。
魚を見ながら良い事を聞いた、と思った。サンコーの水槽の件だが俺はバス釣りをするからこういうのに興味がある。今日も
嗚呼プラモ屋に予約しに行かなんねぇー。サンコーから家に帰ってもその日はその事が頭にずっと残っていた。
一日経過ぁ。で、今から学校の三限目の授業だが、宗教だ。宗教は女性の先生だ。先生が、
「前回の言った通り、今日は中世の魔女狩りを説明します。」
嗚呼、ジャンヌダルクとかか。俺は思った。アビゲイルとかね。そっちね。先生は、
「そもそも魔女とはどういう存在だったかわかりますか。」
続ける、
「キリスト教社会に害を与える存在がそう定義されていました。」
あ、俺の事だ。先生は続ける、
「キリスト教が圧倒的に多数派になっていきヨーロッパで権力を握って社会を動かしていた中世で、キリスト教を批判するなど、まず無理でした。言い方を変えれば強制的に信者として人々は振る舞う時代がありました。」
あり得ない時代だ、無理無理無理。先生は続ける、
「そのような背景の元では、魔女は悪魔と契約した者で、表向きは信者のふりをしてキリスト教に服従しているかのように何食わぬ顔で生活して、」
今、ポーカーフェイスで授業を聞いている俺の様に、まるで俺のやうに、そしてそしてぇ、
「人の弱い心に漬け込む隙を伺い、まさにその瞬間キリスト教を裏切らせる。キリスト教社会の転覆を計る者でした。」
俺の事だ。がっつりこれは
「まぁジャンヌダルクとか。皆知ってますよね、」
その後、おなじみの解説が続き、
「どこぞの誰かのことを公(おおやけ)に魔女とか決めつけたりと、
先生は続けて、」
「中世のキリスト教は滅茶苦茶な時代でした。」
ちゃんちゃん。終わり。
と思ったのか。俺がキリスト教社会を終わらせてやるわ。理不尽に我が
「おのれおのれおのれぇー。」
オラぜってーゆるさねぇ。
悪魔はお前たちの心にいる、俺とは気の合わない類の悪魔が。先生に俺が異端者だとバレてないよね。
バレてるかも。怖っ。
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