四章 普通に過ごす


四章 普通に過ごす

   


 先日計画したサッカー大会の決行だ。バイパスを、マイキーと東へ、せっせと自転車で行っている。益城まで一時間は掛かる。今は、浜線のクリスタルモールというショッピングモールを過ぎた辺り。ここは堀ノぐっちゃんとエッサの校区だが、一緒には行かない。マイペースだからだ。

 あと少しバイパスを行けば宮城君の出水校区だ。所で、一緒に向かうマイキーと俺は相当なジャンルの趣味が被っている。

 こいつは中二の頃からラルクラルク言って大ファンだ。そして、ギターを買うだの言い始めている。今言い出し始めた。マイキーが、

「安いギターはなんかボルトでネックが止まってるってさ。でその次がセットネックでボディの上までしかネックが無い。して、一番いい奴はボディの最後までネックが来てるらしい。」

「ふぅん。そうなんだ。」

 やっとこさ集合場所の泉君の家に着いた。やっぱ多いっす、人数、十何人。サッカー大会の場所は無料で貸してくれる益城の子供の為の何かの施設だ。

 施設に付くと立派なゴールが両サイドにある。

「ええ、それじゃあ始めます。」

「おっぱじめっぞ。」

始まった。

 俺は試合はいつもプレイより先にトラッシュトークから入る。舌戦。

「いきがるなよ雑種。」

「いいんだね、っちゃって。」

「そういった試合をしてこい。」

マジになっている。もう全員。特に泉君とモッツアレラ氏たいね。坂町君もアスリート気質丸出し。泉君はもう俺に、

「ポストに入りんさい。」

だの、

「ポストポスト。」

叫んでいる。素人の壁を越えろという事らしい。リハーサル無しなのにな。 

 ただ興味と実力の比例関係の問題がある。俺は今マジで勝負しているが、物凄くサッカーが好きという訳ではないのだ。その事が俺の努力と上達にブレーキを掛けている。

「頑張ってるんだけどね。」

ピキーン、

 俺は付けていたGUESS《ゲス》のブレスレットがハーフタイムに外れていることに気が付き、

「ピッピー、はい赤旗中断。ちょっと協力してくれ皆。」

で探したが、見つけたのは俺だった。

「あーあった、どーも。」

「なんだ赤旗って。」

「え、全日本ロードレース選手権ですけど。」

 試合が終わって皆で金龍きんりゅうラーメンに行った。サッカーした所から十分位だ。ここはニンニク使い放題で専用の器具を使って自分で潰す。何かこれで潰した後の残った皮、かカスかは、勿体無いというか寂しい感じかな。

 ランチが済んで泉君の家に行った。十何人居るのでサッカーの感想を言うものもいれば、ゲームの話、マイケルの話、ファッションの話をしたり皆、賑やかだ。この泉君宅は宿泊スポットだ。荒牧君とこの前真夜中にバイオ2をした。荒杉君は恐ろしいものが好き過ぎて、自分をそちら側の人間と思い込んでいる。逆に今度ニッチンと泉君が俺の家に泊まりに来る予定だ。

「じゃまたな。」

マイキーと長い帰路に着く。バイオ2で思い出したが、先日、マイキーは今日みたいにバスケを皆で昼休みに体育館でしていたら終わって五時間目が始まる直前全身ブツブツが出て騒ぎになった。早退し病院に直行だった。

「あいつ何だ。Tウイルスか、Gウイルスか。」

と荒杉君騒ぎまくって、マイキーをTとそれ以来呼ぶ事がある。宮城君とかが。

 マイキーは、

「エビフライがアレルギーか何かだと。成長が止まるまで海老NG食らった。成長止まるの厳密に判断できるか。」

そうなんだ。


 後日、ニッチンと泉君が俺の家に泊まりに来るときが来た。いつもの帰路を長嶺方面のヤツと帰る。遠いだろうが。とりあえず夕食は地元の行きつけの所だ。

ニッチンは興味津々に俺のエレキギターを弾いている。

「始めりゃいいじゃん。ギター」

「いや、よか。」

また、興味津々に弾く、

「始めたら。」

ニッチンはご機嫌そうな笑顔でギターを弾いているが、

「いや、よかよ。」

声色も上機嫌そうに答えてる。なんだこいつ。

「いや、すればいいって。」

また、

「いやよか。」

と言ってギターを弾いている。楽しそう。

 泉君は俺の作ったプラモをお持ち帰りしたいそうだ。普通にそれなりに塗装したプラモだ。泉君は、

「金なら出す。」

俺はこれを四千円で買ったので、

「千五百円は如何。」

「いいよ。くれ。」

と泉君。嗚呼、売れるんだ。

 ニッチンがギターを置いたら、プレステを当然する訳だが彼は闘魂列伝に感動し過ぎている。ニッチンは。泉君は早々に寝た。

「あはは。」

と笑いながら俺と真夜中対戦している。逆水平そのものすら面白そうだ。ニッチンはプロレスをほぼ知らないが、今の新日の事など説明してやった。そしたら、ハマったようだった。

 朝になった。二人は早めに帰るそうだ。ニッチンはまだ闘魂列伝の感想を言っている。

「コウメ―、面白れぇ。」

「そうだろ。」

「ああ、マジ。」

「じゃあな。」

二人は帰っていった。

 俺も相当プロレスは好きで、普段、運動場で訳もなくクラスメイトの田仲たなかなぞにコブラツイストを抜き打ちで掛けたりする。田仲は大らかで、大柄だ。怒りはしないが、

「コウメ君何か痛い。苦手ぇ。」

だと。

 今日、早速もうニッチンは俺にチョークスリーパーホールドをした。もう俺の域に達したか。で、逆水平。何かインスタントカメラでスリーパーホールドのシーンは撮った。現場は教室のベランダだ。俺に逆水平をしているときのニッチンの笑顔ったらない。周りの友人は引き気味か、気のせいじゃない。特に坂町君とかが距離を取ってるような気がする。

「新日が来るから今度見に行こうか。」

俺は言った、

「行きまあぁーす。」

「で、あるか。」

 そしてこの日は、特に何事も無くいつも通り学校生活を送った。マイキーが部活に行かなければ大体寄り道をするか、街を通って帰る。

 今日もそうだ。岩田屋いわたやのゲーセンで、狙っている景品がマジで取れない。ジャンケンのゲームのヤツ。なんて奴だ。今日で三日目。三日連続だ。

 岩田屋に来たら、毎回上の方の階の階段の横の自販機でカップジュースを飲むのだ。この場所は窓から熊本城が割としっかり見えるが、だからと言って勿論積極的に見たい程の事は無いと思う。

 ここで飲むジュースは、カルピスとメロンソーダのミックスが多い。で、岩田屋の中の本屋を巡回したりする。ここに着く前にパルコに寄ったりダイエーに行ったり適当だ。

 街に行ったら帰りは新町を通りそこにあるプラモ屋にほぼ毎回寄る。今日も寄っている。

今、物色しながら、

「HG《エッチジー》いくか。」

俺が言うと、マイキーは、

「いいんじゃないか。」だと。

 暫くして、よく分からないスプレーを見つけて店主に、

「このスプレーどう使うんですか。」

店主が、

「切り取ったパーツをヤスリでこすった後、塗装のスプレーを吹く前にこれでヤスリの後がなだらかにして、塗装面にヤスリの後が出ないようにする。

 あと、色プラの地の色の差を無くす。差が出るだろう。重ねても。まあそういう用途で使う。」

「へー。」

「便利―。」

俺とマイキーは関心した。

 マイキーは何かモデルガンとか武器系を、しげしげ見て、ガラスの中のナイフのような武器か何かを指して店主に、

「これ気になるんですけど。」

俺は一向に無関心だ。何でこれに興味が持てるのだろうか。まあガスガンとかは面白そうだ。今度サバイバルゲームしようとかなりそう。荒牧君が黙ってないぞ。ノリノリ。もう分かっちゃったんですけど。店主、

「おー、これはイケない、駄目。」

ロープレだったら何とかして手に入れないと前に進めないような台詞。

「これは売れない、許可を取って買える。大人が。」

マイキーは諦めた。

 なんだこれ。コンバットナイフか。これいるか。俺はスケールの小さいバイクのプラモを買った。車名は認識しないまま購入した。アメリカンと普通のネイキッドの中間みたいなバイク。

「じゃ失礼させて頂きます。」

「さよならー。」

店を出る。白川に大体沿って帰る。

「エアブラシどうすっか。」

俺は言った。

「何かいいのあった。」

マイキーは俺に尋ねた。

「いや。ただ、もうこれ以上はもうエアブラシが要る領域だろうなー、あーどうしよう。」

そう、今エアブラシ買おうか検討している。俺は続ける、

「なんであんなに高いんだ。」

もう毎回のぼやきだ。因みにマイキーに家はそんじょそこらの金持ちじゃない。マイキーは伊達じゃない。エアブラシ一つくらい宇宙のチリのサイズの石ころだ。マイキーは助言をするでもないが、

「お疲れ。だろうなー。」

だ。今地名は分からないが何か団地のとこ曲がっている。この帰宅ルートも探り探りマイキーと見つけた。

 マイキーが、思い出したかのやうに、もう笑いながら、

「昨日ニャヲタが、ニャヲタが、」

続ける。ニャヲタは校区は同じだが、中学受験してから俺たちの今の学校の付属中学に行っていた。今同じ高校だ。

「昨日、公園で何かタメ位の奴等とトラブってた少年をニャヲタが見かけてもう、ううっ。」

続けて説明しようとするマイキーに、

「面白すぎて感情あふれるか。」

俺は言った。マイキーは説明を続ける。

「速攻で駆け寄って『何や前ら何しよるとや、やめろよ。』あはは、それで、でぇ、少年に『おいっ、大丈夫やお前っ。』まご格好良かった。あはは。」

俺には完璧に伝わった。

「あいつは元々仁の星の元に生まれたをとこだ。おー何ということだ、何と、その少年との出会いがヤツの中に眠っていた仁星を目覚めさせたか。え、仁でななく義の星か、狭か。うーんどうでしょうかー、えーやはりー。」

「あいつは中学からして俺等とは違うな。同じ中学に一緒には居れないキャラしてる。キャラしとう(←福岡弁)。」

「ツッコミ不在のまま育ってるな。ガラパゴス野郎。」

「あいつは絶対そのまま仁を貫け、頼む、ははは。」

「それでいい、それでいいぞニャヲタ。そのままのお前が一番良い。そのままでいいいぞ。お願いします。」

「俺等は、あいつに対して友情があったら止めてたよな、なぁ俺達は。あいつがああなってしまう前に。こうやって笑ったりせず。あいつがこんな風に手遅れになる前にな。俺がそうなりそうだったら止めろよ、お前。ってなるかボケ。」

マイキーは俺が何が言いたいか分かったらしい。

「え、止める。ニャヲタの奇行をか。」

「おい俺がもしそんなことしてたらどう思う。見かけたらどう思うかね。」

流石に笑いながらになる程おかしい。

「リアルだと凍る、以上にビビる。アルターエゴ過ぎて、笑えない。」

「そうだろ。わかるよ。俺がもしそうなったら、その時はマイキー、お前が俺を殺してくれ。」

「わかった。逆に俺も頼むわ。じゃあ逆に死にたくないとね、あんたたちは。そうなっても死にたくないのかよ、あんたたちはっ。」

「オーケーオーケー。どーどー。落ち着け。あんたたちて誰んこつな。まー解るよー。さっきの店のガラス棚のナイフでいくわ。」

「頼むな。」

「おう。」

「正当な理由なんで購入の許可出るぞ。円卓の騎士全員の使用許可も余裕で下りる。」

「エクスカリバーか。」

「エクスカリバー案件だぞ、ニャヲタは。大事おおごとばい。やらかさす。」

「俺、あいつに共演NG出すわぁ。」

「そうそう、共演NGなんですよね。俺は事務所NGになってる。」

「キャラかぶりだわ、デブ枠みたいに。一人でいいねん。」

「ははは、そーゆーことね。こんなんじゃ孔明の良さが出ないわね。じゃ共演NGで。」

「一緒に出たら俺の良さが引き立たんわ。」

「そらそうだろ。お前の、ぷっ、魅力がかすむとでもいうのか。」

「させんよ。」

「ボケ殺し。っちゅうのかこういうの。」

「違う。いや違わん。」

「俺はかませ犬じゃない。」

「なんだそれ。」

「感動した。彼の善行には敬意を払え。」

「俺も。」

「ベビーフェイスもたいがいにしとけ。」

「無理。暗黒面はイケないが、すげえヤツだな。知ってたけど。ぶっちゃけ嘘くせー。俺もキャラ作りちゃんとしよう。」

「であるか。そこまでキャラ立つわけないやん。身の程を知れ。マジで芸能人殺ごろしだ。」

「お前、同じ中学NG出したかあいつに。あーそうか、それで出ていったんだー。」

永遠に続く笑い。

「お前もか。マイキーお前もか。」

「ニャヲタはそんなに俺たちを喜ばせたいのか。」

「俺達を喜ばすやうなムーブ決めやがって。ジョーダンの、ザ、ショットかこの野郎。スーパープレイ。連発か。」

感謝、

「連発だと。」

「連発だとでもいうのか。」

「連発かよ、この野郎。」

マジで絵に浮かぶわ。リアルにやばい人だと思い始めた。

「非営利目的介入。」

「あいつのキャリアのベストムーブストップテンに入るわ。」

「戦隊系だ。どちらかと言えば戦隊系じゃないか、方向性は。ライダーじゃない。」

「あいつは素人の正義だから特有のダサさが出る。戦隊臭い。」

「ちょっと例えればこの料理魚臭いというふうに。」

「そうそう、そういうことでしょうが。もう解っちゃったんですけど。アマチュアは戦隊きどりがダサい。プロの戦隊は当然ダサくない。」

「あいつは正義より、カッコいいが先行してんだ。」

「それ一番良くない。」

「それで、面白かったのか。」

なるほど。

「核心をあまり突きすぎるのは如何いかがなものかとも思うが。」

「ライダー版見たいな俺。」

「脚本風に、すかさずバイクから降りるニャヲタ。みたいな。」

「あはは、あはは。台詞は。」

「『やめるんだ。なんて奴だ。変身。』」

でねでね、続く、

「倒したら少年の前にかがんで、『もう大丈夫だからね坊や、気を付けるんだよ。』だ。」

「そっち何かマジでカッコいいな。」

「本当にカッコよくてどうする。」

「マイキー凄いの見たな。ははは。」

地元に着いてここでもう別れる。マイキーの方がまだ先だ。

 家に帰り着いて自分の部屋に入った。

「!!?」

なんと、中学の同級生が俺のベッドで寝ていた、遊びに来たのだな。こいつはヤミーだ。背は低め、運動神経は良好な奴。

「遊びに来たか。」

俺はビビった。暇人なのだ。勉強は平均よりしない人だ。こいつは小学生時代ずっと同じクラスだった。今まで何回お互いの家に泊まりに行った事か。

「乗馬部はどう。」

俺は聞いたが、

「荒れ馬が一匹。」

ヤミーが答える。こいつは乗馬部に高校から所属、

「帰ったらいきなり寝てるのでビビったぞ。」

「そこにベッドがあるからたい。」

「暇そうだ、暇は最高。」

「また、ピロヒと、堀丸ほりまるとどっか行きたいな。カラオケか、ラックス。」

ピロヒと堀丸も中学の同級生だ。ヤミーが、

「そうね。」

ヤミーは続けて、

「こないだバスに乗ったらむちゃくちゃカッコつけた男が、ジャケットとか着て、椅子が空いてるのになんかずっと立ったまま、こう。」

ヤミーは俺に伝えるべく、再現してくる。とりあえずジェームスディーンの四倍は決めているのだろうな。目がすげぇ、つり革持つ姿勢半端ないって。

「俺が下りるまでずっとだった。」

とのことだ。アイコンタクトで笑いを共有してくる。相当面白そうにしている。ヤミーの餌食ぞ。こんな奴は。肉食獣。

「ずっとばい。」

さらにヤミーは主張したい。

「何かの前兆か。」

「不吉だな。」

「世が乱れてるな。」

「そうそう、劉備なら立ち上がる所だった。だって逆賊ぎゃくぞく許さん絶対。」

「逆賊なんだ。」

「逆賊だよーお。もう逆賊。」

「逆賊がっ!(怒鳴ってるというか高ぶる朕)」

「冒険に出て魔王倒したらこういう奴いなくなるんでしょ。」

「ここからいなくなれーっ。」

ヤミーは相当ゲーム好きだ。ヤミーは公立の農業高校に行っている。その高校は近所だ。俺は、

「じゃまたカラオケかな。」

「そうね。堀丸とピロヒは、空いとるかな。」

「分からん。」

中学の頃はよく皆で夜外食してそのまま、湯ラックスという銭湯に行っていた。湯ラックスはニ、三種類風呂がありサウナもある、水風呂もある。ゲームコーナーにはクレーンゲームもある。

 自転車で街方面に、ここから二、三十分だ。大体その後はヤミーの家に泊まる。ヤミーの家は布団のストックが多いからだ。ヤミーの兄は就職で一人暮らしなので、その布団とか。前々からヤミーの家には大人数の親戚が泊りがけで来ていたり。

 ピロヒと濠丸は、同じ西の外れの公立の進学校に行った。ピロヒは中学から高校までバドミントン部だ。ピロヒは中学のときはキャプテンだった。濠丸は俺と同じで小中バスケ部で、高校は陸上部だ。なんか中学の時のコーチが嫌いだったと今になって強めに主張している。そのせいでバスケまで嫌いになったとも言っている。俺は、コーチに怒られた覚えすらないが。歴代コーチを嫌ったこともない。コーチは同級生の父親で家は近所だ。ひょうグッチョのお父さんだ。

 俺はコーチを全く嫌いではないが、中学の時からバスケが嫌いだった。好きなのはバッシュオンリー。が、それを堀丸や同じバスケ部だった龍六君にカミングアウトする勇気はない。

 更に、夏はバッシュが蒸れるので、よくバスケ出来るな、やってらんないとコーチの息子の氷グッチョに言ったことがあるが、そいつは、ピンときていなかった。

ヤミーが、

「コウメ、そういえば、テニス部入ったとだろ。どがん。」

俺は答える、

「自由にやってる。まだラケット買ってない。」

「遅いな。」

俺は、

「それで新人戦みたいな大会があって、この前。」

「出たと、。」

出たよ。フフッフ。策を用いてな。俺は、 

「出たよ。ラケットは、スポーツショップの無料レンタルのシステムがあるけん、借りて。『あの、これ気になるんでレンタルで試したいんですけどー。』って気になるわけないだろ。」

「マジや。」

「まじまじ。で、返す時『どうでしたか。』と聞かれて、『あ、良かったです。チャオ。』無事終了。」

俺は続ける、

「本番は対戦相手しか居なかったので、ちょっとしたら、『あと、もう適当にスコア書いてもらえないですか。負けでいいので。』相手ビックリしてた、けど交渉は成立した。真面目か。無駄は嫌い、なぜか分かるか、なぜなら無駄だからね無駄は。無駄無駄無駄。時間の無駄。」

俺は、

「アーサー王知ってる。」

ヤミーは、

「いや知らん。」

「円卓の騎士は。」

「知らん。」

「エクスカリバーは知っとるど。」

「うん。」

とヤミーは答えた。俺は、

「エクスカリバーはね。円卓の騎士のアーサー王の武器だけど借りものなんだよ。」

しーん。

「湖の精霊に借りて、もう返しましたよ。湖の精霊に。終わったから。」

 ヤミーが家に寝に来てから月日が経った。ニッチンがと今学校でプロレスの話をしている。「ニッチン、中学の友達どんな奴等。」

所で俺は聞いた。

「ゲームばかりの連中よ。俺の家で。」

「双子と。」

「そうそう。」

ニッチンは双子の兄か弟がいる。

「それが、今、闘魂列伝、皆ハマってる。」

ニッチンは言った。俺は、

「俺の家にこの前来てからたい。」

マジか。

「そうそう。そして皆プロレスそのものにもハマってしまった。」

え、マジ。

「で、あるか。是非も無し。」

ニッチンは、

「そういう訳で、今度のプロレス俺の兄弟たちも来るけん。」

「であるか。」

今度新日が来るからもうチケット買ってある。俺とニッチンの分。

 その日の放課後、暇なのでマイキーに、

西高にしこうに行ってみよう。」

と言った。

「え、あの西高に。田舎加減を確かめにか、気になる。」

「ワクワクすっぞ。」

西高は堀丸やピロヒのいる高校だが、中学の同級生がわんさかいるので行けば誰かと会うかもね。

 やっぱ、行くとマジで田舎過ぎる西高。校門に待機するとやっぱ同級生が出てきた。

「おーコウメ。なんで。」

「いや田舎過ぎると聞いたので来てみた。何もないな。」

こいつは百原ももはらという中学時代バスケ部で一緒だったやつだ。

「あ、すげぇよ、この前ここの田んぼ牛の死体があった。」

「え。」

面白い位田舎過ぎる。後は同級生の近況を聞いた。一緒に来ているマイキーが、

金峰山きんぽうざん裏山状態か。近い。」

と言った。百原が

「あーそうだよ。学校の行事で登る。」

「さるすべりをか。」

俺が聞いた。

「えーそうです。」

マイキーが聞くに堪えなそうに、

「ダッルッつ。」

「金峰山を行事で登るとか。響きから田舎臭い。」

「勘弁して。」

あり得ない。

「お前の家のケーキ屋いつか行くわ。」

俺が言った。百原の家はこの間ケーキ屋を開店した。両親は二人とも香梅こうばいにいたそうだ。香梅は地元の大きい和菓子屋だ。小学時代に工場に見学旅行に行った事もある。

「百原、お前、相変わらずキノコ食えないのか。」

別れ際聞いた、

「そうたい。だってキノコ、菌だろ。」

こいつ、飲食業のセンス無いわ。

「じゃあな。」

「じゃあ。」

百原と別れ、西高も文句を言い放題になり、マイキーが、

「すべてがダサいな。」

「何もかもが。」

「西高付近で見る西高生、ダサさ三割増しだわ。」

いやもうそれは共通の認識だ。この街の。俺達だけがそう思っている訳ではないのだ。アイデンティティ。

「あり得ない。」

ピロヒは俺とマイキーの高校を一般入試で合格しておきながら、この偏差値が十位低い田舎の西の公立に進学した。

「まじ無理。」

マイキーが、

「コウメ。」

俺が、

「は。」

「学校選んだ理由は。」

「キリスト教たいね。」

「は。」

「高校にいるキリシタン全員を弾圧しようと思って。」

マイキーは無言だ。

「それはさておき、今日、弓山ゆみやまの家に行こうか、久しぶりに。」

マイキーは、

「嗚呼、ええよ。あいつ元気かな。」

 弓山は中学から俺達の地元の校区に引っ越して来た。白藤の神社のそばのデカいマンションの高い階に。二棟ある。弓山は公園が遠い方の棟だ。ここはまだ建って三年位か、タイミング的に俺が中学に上がる時だ。それもあってか中学からの外様がここには結構いる、このマンションには。そして、横の公園がでかい。

 エレベーターを降りて、弓山の家のチャイム、ではなく、ドアの横の窓を叩く、

「弓山ぁ。いるかー。」

弓山の子供部屋の窓なのだ。

窓が開いて弓山が顔だす。

「遊びに来たか。」

「そうだ。」

弓山が玄関を開ける。部屋に直行する。

「弓山、最近どう。髪切った?」

俺が言った。マイキーは弓山に

宇土高うとこうはどうだ。だるいか。」

「怠いよ。」

「何が怠い。」

俺が聞いた。

「宇土が。」 

弓山が言った。こいつは第一志望の電波でんぱに落ちて宇土に行った。電車通学だ。こいつと俺とマイキ―の共通の趣味が、アニメだ。電波君なのだ。

 後は適当に話をして帰った。

「じゃあな。」

「じゃあな。」

「さいなら、さいならっ、さいなら。」 

 土曜、学校が終わったら、今日ついに笹木君が来てギターを教えてくれる。普段の土曜は大体俺と、掘ノぐっちゃんと、荒杉君とか、泉君とか、マイキーとか、宮城君とかと遊ぶ。堀ノぐっちゃんの団地か、アパートか分からんが、ゲーム大会だ。ランチは目と鼻の先にスーパーがあるので煮込みラーメンを買ってきて堀ノぐっちゃんのアパートで作って食うだのする。ご機嫌なルーティーンだ。

 ただ今日は笹木君が俺の家に来る。土曜の学校が終わって一緒に俺の家に向かう。昼はメンラーだ。途中で寄った。

メンラーを食べ終え家に着いてギターを弾いてもらう。笹木君は、俺のギターを見て、

ほこりが乗ってる。」

と言った。ヘッドの埃ね。二三日弾いてなかったけど。

「笹木君弾いてみて。」

ジャーンと弾いたり、ソロを弾いたり。嗚呼こんな感じか。おお。へー。

「へー、笹木君まじでありがとう。」

俺が言うと笹木君、

「健闘を祈る。」

笹木君はピアノの方が得意だそうだ。そのせいかディープパープルが好きだ。今度笹木邸にお邪魔して色々聞かせてもらったりする。中三の時のライブの映像があるそうだ。笹木君のライブ映像、学校の文化祭の時の。その時はギターを弾いたそうだ。

「ドラムがマジで上手い人で、野田山のだやま君って言って。」

「ふーん野田山くぅん。」

「同年代だと有名だ。」

「へー。」

「バンドも有名で。」

「名前は。」

「知らん。」

「ふうん。」

凄いなぁと俺は思った。

「あ、思い出した。バンド名はスーラー。ヴィジュアル系っぽい音楽。」

「なるほど。」

「そういえば笹木君のギター何だっけ。」

「僕はフェンダー。」

「嗚呼、フェンダージャパン。そうだった。確かストラト。」

教則本で知識がある。

「そうフェンダー。」

「嗚呼。」

「世界一のメーカーよ。ディープパープルのギタリストもフェンダーのストラトキャスターよ。」

「それは知ってる。」

「俺のはフェンダージャパンのストラト。」

「色は赤だったっけ。」

「そう赤。」

「へー。」 

 そうかそうか。で、ふとケッナと街に行ってカタログばかり貰ってマジで全く何も知らなかった頃を思い出した。笹木君はありがたい存在だなぁ。あの頃は何の知らないから店のギター一フレットに人差指を当てたり、謎ムーブをしていた。いや待てよ、はたから見たら今思うとうまい奴が指板の幅とネックの形状を総合的に判断する為の上級者っぽいムーブをしてるように見えていたろうな。

 四時位に笹木君は帰って行った。笹木君の家は秋津あきつ辺りだ。

「今日はどうもありがとうー。」

「じゃバイバイ。」」

 遊んで過ごすうちに、だんだん夏が近くなった。今日登校したら

「授業は午前中で切り上げて全校生徒で甲子園予選準決勝を応援に行く。」

そうだ。俺の、ファミリーという名のクラスの友人十数名一人残らず当然野球に興味ない。 

「あーそうですか。」

っちゅう感じですね。野球観戦の方が授業より自由度が高いので嬉しいことだ。

 藤崎台球場まで自転車移動だ。という事は街経由だ。昼は皆で街で食うか。今頃野球部に感謝した、授業が潰れたから。

「飯はどこにする。」

「ハンバーガーか。」

俺は言うた。笹木君は、

「そうね。」

菅三郎君も賛同。皆もうんうん言った。俊ちゃんに笹木君、ニッチン、モッツアレラ氏、泉君、荒杉君だ。

「荒杉君は俺の自転車のシートに座って俺が立ちこぎか。」

荒杉君は、

「今日は先生も全員移動で人数多いから先生に見られるんじゃ。電車で行く。」

俺は、

「じゃ皆ゆっくりこいで荒杉君早歩きで来るたい。俺と交代こうたい交代ごうたいで。」

それで街に行った。

 店でハンバーガーセットを頼む。七人でワイワイしている。

「あの女の接客の店員若い。菅三郎君お前好みだろ。」

笹木君たちは何か話てる。なんか決めつけている。ニッチンが、

「お前告白するたい。好みだろうか。え。」

管三郎君はそうかもしれん。まだ続くが、俺は注文が終わって席に向かった。

 皆も来た。

「菅三郎君はスマイルを注文したぞ。」

「マジ。」

「マジマジ。」

俺は流石に驚いた。管三郎君は特に普通そうにしている。

「ああ、頼んだ。」

菅三郎君が笑って言った。

「売り切れです。って言われた。」

マジか。皆面白かったらしい。スマイル頼めとか言ってるのは、聞こえていた。

 菅三郎君はすげぇやつだな。

「俺もまさかマジで言うとは思わんかったけんね、びっくりしたよ。」

とモッツアレラ氏は言った。俊ちゃんも笑っている。

 ところで、こういう時俺は大体一番食べる量が多い。

「俺がもし女性店員でスマイル頼まれたらぶっ殺すけどね。」

と俺は言った。全員笑っている。更に、

「管三郎君お前ぶっ殺すぞ。」

と言った。管三郎君もニッチンも笑っている。

 食い終わって球場に向かった。着いた着いた。

「プレイボール。」

始まったが、試合は見ているというか、目に入っているという感じ。焦点はアスリートに合っていない。興味が無いというか。ただ勝てば明日は授業が丸々休みだなぁ。決勝明日だっけ。

 今試合を見てるが俺の目の焦点が選手に合っていない。興味がないから。ボールがポーンと飛んだ。周りが

「ホームラン。」

と言ってる。ふうん。今カーンて音がしてボールが飛んで行ったな。お疲れぇ。横で見ているニッチンとかも無感動だ。

「あ、飛んだ。」

そんなの興味なし。別動隊で来たマイキーも無関心。俺の仲間一人残らず無関心だ。

「勝手にしてぇ。」

 試合が終わって、

「勝った。」

勝敗に心が一切動きはしない。帰る。やっぱ明日授業休みらしい。そこたいね。

 次の日も同じ、今決勝を見ているが、そら授業よりは野球観戦の方がいい。

「試合終了。」

勝った。甲子園行くのか。迷わず行けよ、行けばわかるさ。試合の感想は無い。

暇だったので試合後の取材でもしよう。そこの君っ、

「えーそれではヒーローインタビュー。マイキー、今日の試合を振り返って如何でしたか。」

「えーコメントは差し控えさせていただきます。そーゆーのはちゃんと事務所を通して下さい。仲のいいお友達の一人です。」

コメントしとる。発言がずれていってる。

「芸能人のコメントで良くあるヤツ出たぁ。からの、真剣にお付き合いさせて頂いております。よくあるパターン。俺まねしよう。」

熱愛発覚、この流れは、野球のプレーで言うとニ四六みたいなもんだ。え、ニ四六だっけ。三三五?

 皆球場を後にする。こんなに応援席が応援していないのに、よく勝てるな。士気は高いか、なぜなら、授業嫌だから。

 しばらくして、夏休みになった。気持ちばかりの宿題がでた。希望者は課外がある。俺は一学期も課外を受けていた。モッツアレラ氏もニッチンも泉君も荒杉君も受けていた。

 今日も課外が終わって昼から皆でボウリングに行く。坂町君は部活の方に出た。そっちも午前中で終わりで、ボウリングに来る。スポーツ全般好きらしい。

 水前寺のスターレーンだ。水前寺公園すぐそばだな此処。自販機前で今集まっている。で紅茶を買う。

「そろそろ行こう。」

「ああ。」

現場に向かう。ここのボウリングはスコアが手書きだ。その分ワンプレイ二百円だ。

 モッツアレラ氏が手を滑らせてボウルを通路で落とした。そのボウルがそのままプレイする方のスペースと通路を仕切っているガラスに当たった。

バリーン

「オーマイガッ。」

「主はお嘆きです。」

モッツアレラ氏は駆け付けた店員に謝っている。

「すみません。」

割る事が凄い。

「あーえー。大丈夫です。今後気を付けて。」

モッツアレラ氏は許してもらった。あんまりモッツアレラ氏はうろたえなかった。大物だ。モッツアレラ氏の家はお金持ちで、お父さんが掃除会社そうじがいしゃの社長だ。そんな感じをやっぱり受ける。嗚呼すげぇ。違うわ。

 ボウリングのゲーム自体も楽しかった。

「じゃあね。」

終わって解散した。何かモッツアレラ氏は金持ち特有の風格があるわ。マイキーも似た感じがある。

 歳月が流れ冬が来た。冬と言ったら鍋な訳であってぇ、俺たちは鍋パーティーを敢行した。場所はモッツアレラ氏の豪邸だ。材料は皆で割り勘だ。

 ところがモッツアレラ氏はお金持ちの家なので親が材料を用意していた。蟹があった。メンバーはサトショ、荒杉君、堀ノぐっちゃん、マイキー、俺、モッツアレラ氏だ。

 サトショは校則違反のホンダのジャズで来た。良いなぁ。

「後で乗せてくれ。」

「無免か。」

「そうですよ。二十メートルだけだよ。」

「ちょっとだけよぉ。」

「それはOKって意味か、ありがとう。」

「あんたも好きねぇ。」

 口頭でミッションの説明を受け乗った。

ブーン

操作難しいな、

「こいつ動くぞお。」

サトショにはこの台詞は不発だったか。じゃあ

「行きまあーす。」

と言った。半クラから繋いでいく。ブーン二足にして、

ガクンガクン。難しいかな。

「サトショ、ありがとう。」

「あんたも好きね。」

楽しかった。

 二階のモッツアレラ氏の部屋にて皆で早速鍋開始だ。荒杉君が、

「マイケルのビデオがあるから皆で見よう。」

荒杉君は持参したビデオをデッキに入れた。出た出た。再生。

「ね、カッコいいでしょ。」

鍋を食べながら、一同一時間程観た。これはいつものことだ。

 荒杉君はカラオケも必ずマイケルだ。因みにカラオケは月二回は皆で行く。ニッチンとかマイキーは行かない。

 食べ終わると任天堂のハードで何かスパイの四人プレイのゲームだ。よく知らない、俺はこの中ではかませ犬状態。皆はというと熱中している。黄金銃か。

「 ま、今日も楽しかった。」

 そしてそして、修学旅行がそろそろだ。俺達は十万円の旅費で中華人民共和国に行く。他の高校は京都とかだ。中国に行き先が決まった理由は学校の院長がプライベートで行って楽しかったから。俺達もそれについて議論しまくった、というか文句言いまくった。まーいーや。 

 南京とか上海らしい。寒いらしい。コートなら制服以外でも着用していいそうな。というわけで、

「マイキー、買いに行く。」

俺が言うと、マイキーも

「あー買うならポールスミスっしょ。鶴屋行っとく?」

 流石、マイキーポールスミスと申すか、金持ち。「学校行事なら経費で落ちる、じゃなくて、親が支払う義務かあるのだ。コート代。」

 先日、高校の純正パーツのローファーを俺達はパージして、社外のリーガルのローファーを街に買いに行ったばかりた。格好いいと思って。二万でしたよ。

 鶴屋ならまた街やん。街とは中心繁華街でありアーケードが立派なエリアである。デパートの鶴屋も、ここにある。学校から割と近い。

「今日、下見行くか。」

「サウンズグーッ。」

 放課後直行。自転車で向かいながら、

「俺はアバハウスにすっか。」

と俺は言った。

「では参ろう、放課後。」

 放課後になり早速、鶴屋のメンズの階に向かう。両者とも選び終わり、取り置きを頼んだ。後日支払いと受け取りか。

 今日も適当に寄り道しながら帰って行く、マイキーと俺は地元が同じだ。大体は新町しんまちというエリアを通って、そこから白川しらかわ沿いに地元迄帰る。

 白川は阿蘇から流れて、この繁華街エリアから熊本駅付近を流れて、俺の校区まで続くデカい川沿いに帰っている。

 適当に帰るルートを開拓しながら、最短を探るし、好奇心もあり、行った事ない道を行ったりする。この前見つけた本屋に今日は寄って帰った。

 大体本屋に寄ると、ホビージャパン、電撃ホビーは必ず立ち読みする。あとはバンドやろうぜとか、バンドの本。ファッション誌も必ず読む。

 地元に帰り着き、

「じゃあ。」

「じぁあ。」

と別れる。

 修学旅行当日になった。朝っぱらからバスで福岡空港迄だ。事前に、飯がマズいという話らしいのでほとんどの奴はカップラーメンを準備している。俺もだ。後犬を食うことになるらしい、と聞いている。料理として中国で出されるとのことだ。まことしやかに、ほぼほぼそのつもりで皆いる。

 修学旅行の費用は十万円だった。ホテルはツインで相部屋の相方は出席番号順というふうに担任の稲ちゃんが決めた。

 ほぼほぼ皆受身で連れ出されて修学旅行に行ってる感じで割とクールだ。ノリノリな奴はいない。そんなダサい奴は公立のとりわけ西の方の高校に行ってる。

 まーとりあえず勉強しないで済むな。というくらいで、見たいもんはない。そんな話で盛り上がることはない。

 今、飛行機でガーッと中国に離陸している。ニッチンが飛行機が初めてだということで、

「雲海と俺、と云うテーマで写真を撮れ。」

と俺に言った。パシャッ。

「いい写真が撮れたと思う。」

 暫くして、機内食が出た。普通。

「普通、か微妙。」

俺はニッチンに言った。

「そうね。」

このサラミ見たいな肉、なんとも言えんな。

 到着した。預けた荷物を受け取り中国を嗚呼これからあちこち行くのか。

 ま、いいか。現地の中国人の印象は特に無し。だが結構挙動が違う。ムーブが、日本人と違う。動きのリズムが日本人と違う。

 こっちでの買い物は値切って買わないといけない、とのことだ。まだその時は来ていないが。

 適当に移動してるバスで、とりあえずバスのメーカーはメルセデス・ベンツだーと思った。

「おいこれベンツじゃねぇや。」

「え、何で。」

バスガイドさん、

「ベンツはこういう安いデカいのも作っている。日本ではそのイメージはないでしょうが。」

「ふーん。」

そこに大きな感動はない。俺達は中国だ何を見てもこの程度のリアクションだろう。

 今から、どこに向かうとかは、余り関心が無いので聞き流す。

「まじで、違うな。日本とノリが違う。」

確かに動きが違う。イロイロと違う。

 昼になった。飯だ、ファーストコンタクト。

「悪くは無い。麻婆豆腐は。それとチャーハン。」

他にもいっぱい料理出たが、結構違う。

 夜になり、ディナーだ。

「やっぱチャーハンは美味しい。チャーハンは。」

その後、ホテルで、カップラーメン食べるが日清のがホテルの売店に売っていたので、買った。そして食ったが味が違い過ぎる、薄いというか、まぁー今後気を付けよう。 

 ホテルの二人組の相部屋が五十音順なので、必然的に二人共友達の所にたまる。坂町君と笹木君の所に。俺と管三郎君と、笹木君とニッチンと俊ちゃんでウノをしている。

 刺激が足りないなと、俺は思ったので、

「一番ビリは、パワーボム俺がする。」

俺は言った。

「素晴らしいじゃあないか。」

ニッチンは言った。俺は、

「写真に撮ろう、お願い、俊ちゃん。」

「御意。」

 結果はえーやはりー、管三郎君が負けた。

「ほら管三郎、お前ばい。」

「準備、準備。」

「上は脱いだ方がレスラーの雰囲気でるか、じゃあ脱いで。」

俺は言いながら上半身裸になった。じゃあベッドに上がって、管三郎君の頭を股に挟み、パワーボムの体制、の前に、カメラ目線で、俊ちゃんパシャリ。

持ち上げ、俺は本能的にライガーボムをチョイス。

「パシャ!」

皆笑っている。俺は撮影が終わったので上を着る。

 そんなとき坂町君は読書している。ノリが違うらしい。第二ラウンド開始、ウノのだ。結果はやはり管三郎が負けた。俺はさっきライガーボムだったなーと思い普通のにした。

 キメた後手を離してしまい、えーこの度はー、管三郎君のはベッドのクッションでバウンドした、で、床に転げ、る前、 何とテーブルの門に頭をぶつけ痛がっている。とても痛そうだ、皆

「管三郎、お前が悪いとばい。」

「そうそう。お前が悪い。」

「お前何しよるとや。」

「お前が悪い。」

俺は無言だ。レスラーとしては正解のアクシデントだろ。管三郎君を強くした無ぁ俺は。強い男になれよ。

 その日はあと暫くして解散した。管三郎君は頭の回復にやや時間が掛かり、復活までに二分程掛かった。

 なんだかんだ、中国の上海から南の方を行ったり来たりしてもう旅行は終わった、いろんなとこに行ったが、まずはでかい長江、高い上海タワー、汽車移動で感じた広い国土が印象に残っている。

 長江はデカくて、濁っていた。というか実際に見てみると良い。軽いノリで見に行くと良い。

 上海タワーは高過ぎて展望エリアから下を見ると雲が掛かっていた。そして床は網なので中々だ。

 売店にはソニーより高い、ソニーのパクリの機器があった。それが公式の正規の売店のレジの所のガラスケースに入っていた。これは中国の民の足を引っ張っていると思った。

 汽車は永遠に田園から、山、村そして、また田んぼ、田んぼ、山、みたいに何時間も風景がそんな感じだった。

 あとは、トイレが有料だった。痰壺たんつぼがあった。道路を走る自転車が多過ぎ。人民は太極拳を公園でやりまくっていた。像デカい、関羽っぽい像。庭園すげー。雑技団すげー。

 永遠食事が朝昼晩、中華だったが、中国人以上に中国人だったろう。曹丕が曹操以上に曹操だと評されたように。

 中国人も、ときたまパスタもハンバーガーとか食うと思うが、俺達は毎食毎食中華料理だった。朝昼晩、朝昼晩。そして川魚の良さは誰もわからなかった。チャーハンと麻婆豆腐は友達。

 中国は普通だった。帰って来てまずやることは遊ぶ事。早速、次の日にカラオケに皆で行く。

 サウンドパークに行く、俺の家からは高校の方角に30分位自転車で着く。阿蘇の西原から来る荒杉君は定期を使って最寄りに降りて来る。俺が自転車で拾って二人乗りする。

 白山通りと言う通りに今日行くカラオケ屋はある。ここにはよく行く。荒杉君は電車通りと言う通りと白山通りの交差点で待ち合わせた。電車通りは言葉の通り路面電車が走っている。

 時間通りに店の前に全員集合した。俺、荒杉君、泉君、エッサ、堀ノぐっちゃんの5人だ。あんまり人数が多いといっぱい歌えない。

「おー皆そろったか。じゃあいつも通りフリータイムで。」

皆で2回の受付にエスカレーターで上がる。

 受付で、

「セガカラ。」

「セガカラか。」

相談し、

「あります。」

あるらしい。まぁ俺はセガカラに良い印象がある。

 部屋に入り、

「点数は。」

「どうする。」

「つけようか。」

点数つけちゃう感じ。まあ、だいたい毎回付けるかなぁ。新参者がたまに拒否権を発動させる場合を除いては。ゲストが点数エヌジーのとき。「オレ点数エヌジーなんですよ。」みたいに。

 因みにマイキーと、ニッチンはカラオケは絶対来ない。マイキーは自称音痴だ。というか、自分が楽しければ良いと俺は思うのに、こじらせている、別に歌が下手でも顔をしかめたりしないのにな。ニッチンは何か抵抗があるらしい。

 荒杉君のマイケルを、今日も聴く。他は大体トレンドだ。当然、ヴィジュアル系ミュージシャンの曲は原曲のキーは無理だ。ルナシーは割と高くない。

 あと、俺と堀ノぐっちゃんは尾崎豊も歌う。今日もだろう。ふと堀ノぐっちゃんが、

「女の前て尾崎を歌うと引かれる。」

と言った。

「何で。」

俺はクエスチョンマーク。

「さあ。」

まあいいや。

「マイケルは引かれるか。」

荒杉君は

「俺はマイケルがわからん馬鹿女とは共演エヌジー。事務所エヌジー。」

俺は、

「荒杉君、めちゃかっこいい。」

と彼の生き方に賛同した。

 エッサはだいたい中性的な男性ミュージシャンをチョイスしたりして、泉君は、なんか何でも有りな感じだ。強いて言えばロックよりポップ。

 俺はもうギターも弾いている事だし、ヴィジュアル系のを入れる。今は第二次バンドブームだそうだ。このブームではプロのアーティストは雲の上の存在ではなく、雲の上では済まない。もっと上の成層圏とかだ。多分。そう思うのは俺だけ、だろうか。

 皆時計回りに順にリモコンで曲を入れる。エックスのバラードは長いから気を使う。八分とかある。

 点数は大体俺は九十点前後が多い。余り誰も競ったりする感じは無い。まあ、低いのは泉君だろうけど、それでも下手じゃない。皆どうでもいいのだろう。

 飽きずに時間迄歌うと解散した。

「じぁあ。」

「じぁあ。」

「荒杉君はどうする。」

「俺が乗せる。」

と泉君が言った。バスで来た荒杉君を電車通り迄二人乗りだ。

「じぁあ。」

解散した。 

 この後、地元に着いて写真屋に修学旅行のインスタントカメラを現像しにいった。家から自転車で3分の個人店だ。店の名前はK-1ケーワンだ。格闘技が好きなのだろうか。   

 写真の出来を気にする。俺が管三郎君に掛けたライガーボムの仕上がりをだよ。よく撮れているだろうか。

 何日かしてケーワンに取りに行った。うん、どれどれ。

 嗚呼、上手くいったな。撮影者は俊ちゃんだが優秀すぎる。

 まるでプロレス雑誌の写真だ。劣るところが全く無いというか、なんというか。俊ちゃんすげぇよ。 

 日を改めて学校で皆に見せた。笹木君は、

「管三郎叩きつけられてるのに笑顔じゃね。なんでや。」

嗚呼、そうかも知れん。

「なんで、俊ちゃんはこんなに上手に撮れたと。」

「ほんとね。」

「いや、マジで。」

俊ちゃんはカメラの才能があるのだろうか、と俺は思っている。


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