第21話新人Vtuber

「こんにちは~!PPH所属の純心ユリカだよー♪」

「今日は~スペシャルゲスト!きてくれるんだよ~!!」


PC画面に映された二次元の女の子...Vtuberが元気よく挨拶をする。

とあるコンカフェに所属している彼女...いや厳密には男の娘なのだが、

熱狂的なリスナーがその可愛さに魅了され今夜も集っていた。

男?いや、むしろそれが良いのだ!というのが主なファン層なのだ。


かくいう俺...斎藤賢一さいとうけんいちもその一人。

毎晩このチャンネルの配信が開始すれば張り付いている。


「それがねー...じゃじゃーん!!


横から可愛いモデリングの女の子が現れる。いや男の娘だ。

茶髪のウェーブがかかったツインテールにメイド服...メイドキャラか?


「あ、あの...はじめまして。純心アリスです...」


くそ!声も可愛い!!これで女じゃないのは何のご褒美なんだ?!


「きゃー!アリスちゃんげきかわー!!」

「ちなみにねぇ~アリスちゃんは、ユリカとちがってぇ~...みんなききたい?」


俺は必死にコメントを打ち込む。

【おねがいします】

他の連中も【なになに!?】【おしえてユリカ様!!】と我慢できない様子だ。

ゲーム実況でもしてくれるのだろうかと期待が爆発しそうだ。


「へへー!じゃあ教えるね!アリスちゃんはー...なんと会えます!!」

「Pretty Pure Heartで実際に会えちゃうんだよ!それも実写でね!!」


...は?実写で会える...??

いったいこの子はなにを言ってるんだ。

確かにコンカフェなのは知っているが会いに行けるVtuberだと...?


【は??】【ふつうにいるってこと?】【詳細希望】【詐欺商売?】

コメント共も口々に疑問を打ち込んでいる。


「あー!みんな信じてないな!?じゃあ仕方ない...これをみろ~!」


純心ユリカが一枚の画像を映し出した。

そこにはアバターと全く同じ格好の子が立っていたのだ。

しかも絶世の美女ならぬ男の娘...。


【え??】【女の子じゃね?】【ガチ????】


「あのー...はい、えーっと、ぼk...ゴホン、私です」


純心アリスのアバターが本人だと言っている。

ちょっとまて、僕って言おうとしてなかったか...。

なんかどっかで声きいたことあるような気がする。


【てなわけでねー!PPHでは新規お客様歓迎キャンペーンするよー!」

「なんとーチェキが一枚無料です!!やばくないですか~!」


【うおおお!!】【いくしかない】【推し決定】

強烈なコメントの嵐に俺も負けじと打ち込んでいく。

【絶対いきます】...と。


とはいうものの正直、コンカフェには入ったことがない。

隣町にあることは知っているのだが中々勇気が出なかったのだ...。

だがこの声とスタイルと可愛さ...俺の心はもう彼女(彼)しか見えていなかった。


「それじゃーアリスちゃんから一言もらっちゃいましょう!!」


「...まだ、新人なのでうまくお話とかできるかわからないのですが...」

「お待ちしております。ご、ごごご主人様...」


配信はそこで終了となった。

しばらく終了の画面を俺は見つめたまま呆然としていた。


...尊すぎか...!?

くそ!!平日は部活で時間がねぇ...土曜日も練習試合...日曜だ!!


俺はそう決めるとスマホのカレンダーに印をつけ、

店に予約をするのだった―――

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